- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101152424
感想・レビュー・書評
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明治維新の以前から長岡藩と牧野藩主を守るために何をなすべきか、スイスのような永世中立国的な立場になれないか、また当時としては高価な近代兵器購入などに尽力した河井継之助の生涯。男としてかっこいいと思う。
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下巻にきて、これまで上巻、中巻で圧縮されてきた河井継之助のパワーが一気に爆発した感じだ。これまでの上巻・中巻がどちらかと言えば「静」の感覚だが、下巻にきて一気に「動」へ転じる。小説としても、最後の最後でドカンとクライマックスを迎える感じだ。
河井継之助という名前は、世にあまり知られていない。歴史の教科書には出てこなかったからだろうか?少なくとも自分には記憶がなかった。
また、大河ドラマに取り上げられたこともなく、「なぜ取り上げられないのか?」との疑問の声も多い。
圧縮されたパワーが爆発したとはいえ、この爆発の形は、河井自身が考えていた理想とは全く異なる形での爆発だった。強い意思を貫いてきた彼だが、最後は時代の流れに飲み込まれ、彼にとっては魔の力とも感じたであろう意思に反する力に引きずり込まれての、やむにやまれぬ戦いに巻き込まれてしまった。
小説の紹介文には、「西郷・大久保や勝海舟らのような大衆の英雄の陰にあって、一般にはあまり知られていない幕末の英傑、維新史上最も壮烈な北越戦争に散った最後の武士の生涯をを描く力作長編」とある。
中巻で、福澤諭吉との対話シーンがあるが、当時の時代の大きな流れに逆らうかのような印象を受けた。時代に流されず自身の信念の姿は人としての強さを感じる一方、この巨大な流れに耐えらるのかとの不安を常に感じながら読み進めた。
大政奉還後も、薩長を中心とした官軍と、旧幕府軍との戦いは続き、これを「戊辰戦争」と一言で表現されることが多い。官軍と旧幕府軍との闘いは、鳥羽・伏見の戦いや、上野戦争、函館戦争がクローズアップされることが多いが、もう一つの大きなキーとなる東北戦争に、とりわけ局地戦であった北越戦争に焦点を当てられたのが、この「峠」の下巻だ。
ここまで壮絶な戦いであったというのは、この「峠」を読んで初めて知った。河井はこのときは、藩士、家老というよりも、一人の軍総司令官であった。
河井は幕府系の長岡藩に生まれ、忠誠の心を貫くということと、倒幕・維新という時代の流れとの狭間で、それらを両立させるためには、長岡藩を中立的な存在としてそれに耐えうる力を持たねばならないと考えたのかもしれない。
しかしながら、彼の中立国の理想は、最終的に魔の働きによって捻じ曲げられ、結果として官軍と壮絶な戦いをせざるを得ない宿命の中に投げ込まれた。長岡藩の民衆を守りたいという理想とは全く真逆の結果、民衆をことごとく戦いに巻き込んでしまうという結果を導いてしまった。
彼があるいは、長岡の出身でなく、薩長に生まれていたとしたら、西郷、大久保や勝海舟らと歴史に名前を並べていたかもしれない。
同じ幕末を読むにしても、違う角度から読んでみると、なんとなく時代が立体的に見えてくるように感じるものだな・・・という感想だ。 -
【2022年の読書振り返り】
自分の愉しみとして10作選びます。
■実書籍■誰がために鐘は鳴る(ヘミングウェイ)
■実書籍■ドクトル・ジバゴ(パステルナーク)
この2作が頭一つ抜けて圧巻でした。パチパチ。
■実書籍■ロバート・キャパ写真集
正直、「誰がために鐘は鳴る」「ちょっとピンぼけ ローバト・キャパ自伝」との3点セットの味わいなんですが、やっぱりこの人の写真は魅力が尽きないなと思いました。
これは岩波文庫が素敵な仕事をしていくれていると思いました。
■実書籍■マノン・レスコー(プレヴォ)
■実書籍■郵便配達は二度ベルを鳴らす(ケイン)
今年は海外古典がマイブームだった気がします。光文社古典新訳文庫、素晴らしいですね。
●電子書籍●街道をゆく・オホーツク街道(司馬遼太郎)
今更な司馬遼太郎さんなんですが…。面白いものは面白い。
数十年ぶり再読の「峠」、「播磨灘物語」、それから「人間の集団について」「街道をゆく・陸奥のみち」も併せて、脱帽ものでした。
■実書籍■すみだ川(永井荷風)
やはり数十年ぶりの再読なんですが、今回は復刻シリーズで旧かなを堪能。
打ち震えるくらいの快楽でした。旧かなマニアなので…。
■実書籍■「細雪」とその時代(小林信彦)
小林信彦さんの新作を愉しむというのが歳月を考えると感無量。
そして「細雪ファン」としてはこれまた鳥肌モノ。
関西が懐かしくなりました。
●電子書籍●人生が変わる55のジャズ名盤入門(鈴木良雄)
失礼ながら大きな期待なく読んだんですが、鮮烈に愉しみました。
数年ぶりに「猛烈にジャズが聴きたいっ!」と思わせてくれました。
現役のジャズ巨匠、それも日本人の、という視点がこれほど興味深いとは。
名盤入門なんですけど、鈴木良雄さんの半自伝という楽しみですね。
●電子書籍●ジャック・リーチャー・シリーズ(リー・チャイルド)
村上春樹さんが「このシリーズは好き」と言っていただけで読んでみたんですが、
いろいろ突っ込みどころも満載だけどとにかく楽しめてしまいました。
「奪還」「パーソナル」「宿敵」「ミッドナイトライン」「葬られた勲章」の5作。
敢えてひとつなら「パーソナル」がラストまで楽しめて印象的。
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以上で10作になります。
上記で言及していない、次点みたいな心残りを挙げると
・新宿鮫Ⅻ 黒石(大沢在昌)
なんだかんだ、また全作再読してまった挙句の新作は痺れました。
・世界の歴史23・ロシアの革命(上山春平)
このシリーズは好きなんですが、特にこれは夢中になって読みました。
かなりエンタメでのめりこめました。
・ヨギ・ガンジーの妖術(泡坂妻夫)
とぼけた味わいとひねった仕掛け。脱力感溢れるキャラクター世界が秀逸。
あたりでしょうか。「失敗の本質」もこれまで何度も読み切れなかった(読み始めるタイミングが無かった)んですが、面白かったですね。
来年も、愉しみです。 -
下巻一気読み。
戦国時代モノや、幕末あたりの読み物好きだなーー。
最初に買ってもらった本が織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の伝記だからかなー??
河井継之助、惚れるなぁー。
映画の公開が楽しみです。 -
越後長岡藩・家老、河合継之助の一生を描いた作品。
陽明学徒で非門閥の家柄ながら、才覚と能力で出世し藩家老まで上り詰めた開明論者。幕末の世に、佐幕でも薩長でもなく、第三の道を探った河合の構想は、官軍相手の北越戦争で霧散する。
変わった人物だ。と、一言で表せぬほどの異能の侍である。全国を遊行し妓楼で遊ぶ上巻の散文的な日々から、中巻では黒船襲来、慶喜の大政奉還と世情が騒がしくなったころに、継之助の才覚と先見が頭角を現す。そして下巻における北越戦争。この時代の時勢の結末を知っていても、なぜか河合継之助に、越後長岡藩に、奥羽越列藩同盟に、声援を送りたくなる。そう読者に思わせるところが、司馬遼太郎という小説家としての凄さだろう。 -
「長岡に死ににきたぞ」
悲壮感漂う長岡奪還戦をクライマックスに、負ける結末を知りながら、死に花を咲かせる継之助と長岡武士たち。
悲しい中にも爽やかをもって、長かった話は終わった。
現在、長岡に行くとシャッターを閉めた店が多く、寂しい限りだが、今度訪れる時は、昌福寺に行ってみようと思う。 -
河井継之助の生き方を読むと、
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ここまで思想に生きることはできないなと感じた。行動原理が確固としてありぎる。。
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とうとう官軍との戦いに巻き込まれていく。本来は戦いたくなかっただろうに、ボタンのかけ違いから戦わざるを得なくなってしまう。
この小説を読むまでは、幕軍の方が戦力あるのに何故官軍が圧倒したのか理解出来ていなかったが、時代の変革の流れには逆らえないものだと理解出来た。
河井継之助が、もし違う藩に生まれていたらとか、明治維新を生き延びていたらとか考えると、惜しい人を無くしたものだと残念に思う。 -
幕末から明治初期の混乱期、貨幣経済の発達につれて、武士の世が終わり、商人の世になることにいち早く気づきながら、自分は譜代大名家臣として、藩を守り、官軍への服従を拒否した。彼にそうさせたのは、武士としての美学か。
薩長と佐幕派の視点で論じられる時代を、鳥羽伏見の戦い、大政奉還後の混沌とした動きの中で生き残ろうとする各藩の姿も、とても興味深く読めた。 -
上中下まとめての感想と評価。
幕末の長岡藩、河井継之助のお話。
司馬遼太郎さんの小説は恥ずかしながらあまり読んでこなかったが、歴史的な事実と人物像を形作る空想の世界のバランスが絶妙。流石は司馬さん。
個人的にはこの歳(おじさん)になってからよんだからこそ感じられた面白さもあるかなと思う。
自分の経験、知識に基づいて考えた結果の士農工商がなくなる未来の形と、小藩の武士という自分自身の境遇に板挟みされながらも必死に足掻いて生き抜く様がかっこいい。 -
読み進めるにつれて凄みのある人物であることがわかる本
常に先のこと・最悪の事態を見据え、その上で人としてあるべき姿を貫く姿に強く感動した。 -
面白い。上巻、中巻で丁寧に描写されていた河井継之助の終わりが怒涛で描かれている。また読み返してみたいと思える一冊でした。
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読み応えのある内容。河井継之助という人物の複雑さがうまく表現されている。
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※購入したのはこれより旧版
2002.9.7読書開始
売却済み -
死に向かうのは辛いし、最後残された人々のことも気になる。3巻あっという間で、流石司馬さんと思った。とても面白かった
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やっと完結って云うのが正直な気持ち。特にこの巻は北越戦争で長岡藩が滅ぶ前段階から継之助の最後までなので、読んでて楽しくないな。最後の小地谷での交渉のタイミングで思ったようにいかず、悲劇となったように描かれているが、それがなくとも結果は同じだったような気はする。時代や人を結局は読み切れなかったんだよなあ。とても優秀な人と思えるのにとても残念ではある。それはともかく、映画では役所さんが完璧に演じてくれるような気はする
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武士とは、なにか。
「いかに美しく生きるか」
河井継之助。かっこいい生き様でした。 -
越後長岡藩一藩士の新国家構想の夢にかけた生き様、やはり高すぎる理想に感じてしまう。
映画上映の前にもう一度読みます。 -
下巻は、京都での大政奉還で、担ぐべき神輿(将軍慶喜)が急きょ消えた後、長岡藩でくしくもファブルブランドの母国スイスに似せた武装中立を貫こうとするも、藩内の誰にも薩長筆頭の皇軍にも奥羽越藩同盟にも理解してもらえず、結果として小地谷談判で決裂し、旧幕側に立つ存在として一瞬だけ局地勝利をえるもわずか数日で山県有朋ひきいる皇軍に長岡で民衆を巻き込む火の海の惨劇をまねき自身は銃創で戦時中に死ぬという結果に至る。司馬遼太郎は開明主義ながら薩長と同じ方向に向かなかったのは不思議だが、それが武家の美なのだろうと河合継之助を描いたそうだが、現代人の私にはなかなか理解しにくかった。
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戊辰戦争の中でも北越戦争ってのはほとんど知識もなく、凄惨な戦いであったこたがよくよく理解できた。これが侍の美意識かと…
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確実、破滅に向かっていることを理解しつつも、自らがやるべきことをやり抜く姿に、美学を感じた。
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3.8
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幕末の越後長岡藩の運命を背負った河井継之助の物語。若い頃に江戸に出て、その後諸国を歩き、三十前後まで書生として生きた。しかし、非門閥系にも関わらず継之助は将来長岡藩の藩政を担うのは自分しかいないと信じていた。諸国を巡った目的は長岡藩を時代に合わせてどうやって改革していくかを探ることにあったという。
幕末、最も激しい戦いであった北越戦争を長岡藩執政として指揮し、壮絶な最後を迎える。西軍(官軍)に最後まで靡かなかった姿勢は新撰組を彷彿とさせるが、新撰組が旧態依然とした武士を目指したのに対し、継之助は新しい武士というか武家社会の崩壊を予想して行動した。政治にも戦にも長けた稀有な才能を持った継之助が小藩である長岡藩に生まれたことは運命であった。それでも幕末という混乱した時代に藩を飛び出して活路を見つけることはできたであろう。身分制度の崩壊を予見していた継之助だったが、最後まで長岡藩士として生きた継之助は最後の武士だったのだろうか。 -
司馬遼太郎の作品の中でも、雰囲気がおもたーい作品。明治新政府側でないため、時代の流れとしては滅びる側にいるから。それだけではなく、主人公の継之助という、命がけで自他共に完全を求める侍の凄味が、そうさせている気もする。人として、どう生きるのか。継之助と司馬遼太郎に、問いを突きつけられているように感じる。
戦時下、稀代の戦略家であり、ほとんどの策は当たっているが、裏をかかれることも。戦略はいつでも当たるわけではない。なぜなら、未知なる相手がいるがゆえに、狙いが外れることがあるから。どんな戦略も、できることは当てる可能性を上げることだけ。ひるがえって、戦いは相手がいない場所を探して行うに限る。