- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101157412
感想・レビュー・書評
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▼剣の師弟 勝負 初孫命名 その日の三冬 時雨蕎麦 助太刀 小判二十両
を収録。 大治郎・三冬夫婦に子供が生まれます。
▼「剣の師弟」は、小兵衛の弟子が悪に落ちていたパターン。このパターンはやはり評判が良いのか、何作かありますね。これも良作。苦く、おいしい。
▼「勝負」は滋味深かった。これも同主題の話はあった気がしますが。対戦相手にとっては、就職がかかった試合があり、大治郎が相手。大治郎は別に就職は必要なく。小兵衛が「負けてやれ」と秒で言い切る。大治郎はもやもや。当日、色々あって結局負ける。ところが相手が「わざと負けたのでは」と疑心暗鬼になり…。これはなかなかコクがありました。
▼「その日の三冬」これがいちばん印象に残りました。いちばん、「メグレ=シムロン味わい」が横溢。かつての三冬と同門の、大変に屈折して醜い男がいて、爪はじきものだったが、三冬はフラットに付き合っていた。その男が幾星霜、表面的には悪に墜ち。そして三冬と再会し…という内容で。世間の残酷さ、不公平さ、切なさ、理不尽さがとても良く伝わります。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
剣客商売 十一
大治郎、三冬夫妻の息子・小太郎が誕生。小兵衛さんも初孫の顔を毎日のように見に行くほど可愛がっている様子が微笑ましいです。
さて、今回は「剣の師弟」「小判二十両」のように“昔の弟子がやらかす系”の話が印象に残りました。
とくに、切なく悲しかったのが「その日の三冬」。
三冬のかつての“弟弟子”にあたる、岩田勘助との思わぬ再会と彼の悲しい境遇がやるせない話です。過去に岩田が三冬へした“行為”は、彼が三冬のことをすごく、すごく好きだったのだろうな・・という想いがひしひしと伝わってきます。だから三冬も不快に思わなかったのでしょうね。
三冬が去った後、彼がどのような最期を迎えたか、大治郎が何気に話す世間話で知るというのが、何とも皮肉ですが上手いなぁと思います。 -
2019年9月10日、読み始め。
●人物メモ
・吉右衛門---書物問屋・和泉屋の当主で、三冬の伯父。
・おひろ---三冬の実母。
・飯田粂太郎---
・笹野新五郎---大治郎がいないときは、笹野が稽古をつけている。
・永山精之助---町奉行所の同心。弥七の直属先。
・弥七---四谷・伝馬町の御用聞き。
・徳次郎---内藤新宿の下町に住む。女房は、おせき。
・文蔵---上野・北大門の御用聞き。弥七と親密。
・又六---深川・島田町の裏長屋に住む、鰻売り。
・杉原秀---又六の妻。根岸流の手裏剣の名手。
・小川宗哲---亀沢町の町医者。小兵衛の碁がたき。小兵衛より10歳位年長。
・文吉(ぶんきち)・おしん---鬼熊酒屋の亭主と女房。前亭主は、熊五郎。文吉・おしんは養子夫婦。
・長次・おもと---浅草駒形堂裏の河岸の料理屋「元長(もとちょう)」をひらいている。
・牛掘九万之助(うしぼりくまのすけ)---浅草・元鳥越町に奥山念流の道場をかまえる。
・金子孫十郎信任(のぶとう)---湯島5丁目に道場をもつ。60歳をこえている。門人は300人以上。
・杉本又太郎---団子坂の無外流・杉本道場の当主で、秋山親子とも顔見知りの剣客であった父親を1年前に亡くしている。 -
相変わらず読み始めると止まりません。
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「池波正太郎」の連作短篇時代小説『剣客商売(十一) 勝負』を読みました。
ここのところ8冊連続で「池波正太郎」作品です。
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相手の仕官がかかった試合に負けてやることを「小兵衛」に促され苦悩する「大治郎」。
初孫「小太郎」を迎えいよいよ冴えるシリーズ第11弾。
その試合「負けてやれ」。
「秋山大治郎」が義父「田沼意次」から一刀流の道場を構える「谷鎌之助」との試合を命じられた経緯を報告すると、「小兵衛」は即座にそういった。
「鎌之助」はその試合に仕官がかかっていたのである。
勝負を前にして苦悩する「大治郎」には、まもなく初めての子が授かろうとしていた……。
初孫「小太郎」の命名をめぐる「小兵衛」の意外な一面など面白さがいよいよ冴えるシリーズ第11弾。
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やめられなくて、どんどん次が読みたくなる『剣客商売(けんかくしょうばい)』シリーズの第11作… 1979年(昭和54年)に刊行された作品です、、、
初孫の「小太郎」が誕生して、「秋山家」に賑わいがでましたね… 初孫の命名に関して「小兵衛」がああでもない、こうでもないと悩む姿が印象的でしたね。
■剣の師弟
■勝負
■初孫命名
■その日の三冬
■時雨蕎麦
■助太刀
■小判二十両
■解説 常盤新平
「小兵衛」が、以前、弟子として可愛がっていたが、殺しをして行方知れずとなっていた「黒田精太郎」と再会… 「小兵衛」は、殺しの技を教えたようなものだと悔やんでおり、江戸に戻ってきた「黒田」と対決し、自ら決着を付けようとする『剣の師弟』、
「大治郎」は、江戸の剣術界でも名を知られる「谷鎌之助」と試合をすることになったが、この勝負には「谷」の仕官がかかっており、「小兵衛」や「三冬」は「大治郎」に「負けてやれ(負けておやりなさいませ)」と言い、「大治郎」は心に迷いを抱えたまま勝負に挑むことに… 試合が終わったあとには「三冬」のお産がおわり、無事に男子が生まれていた『勝負』、
「大治郎」は息子の名を「小太郎」と命名したかったが、父「小兵衛」は、小さいという字が気になり、それはならぬと言う… しかし、「小兵衛」も名を決めかねており、「松崎助右衛門知恵」を拝借しようと出かけた途中で、「小兵衛」は自分の隠宅に押し込もうと相談している連中の話を偶然聞いてしまうという『初孫命名』、
産後久しぶりに出かけた「三冬」が、墓参りをした帰りに、白刃を揮ったままの浪人が若い町女房を攫ったまま逃げているところに出くわす… その浪人は「三冬」が井関道場の四天王とよばれている時に、稽古をつけてやった「岩田勘助」であり、それに気付いた「三冬」が、小さな家に逃げ込んだ「岩田勘助」を諭そうする『その日の三冬』、
相手は京桝屋の後家を後添いをもらうことになったと、「川上角五郎」が「小太郎」に嬉しそうに話す… しかし、それは「川上角五郎」の勘違いで、京桝屋には後家が二人おり、若い当代の義妹ではなく、60歳を越えた先代の妻「お崎」が相手だったという喜劇風の『時雨蕎麦』、
「大治郎」が一年ぶりに扇子や団扇を売っている男を見かけ、乱暴をはたらく侍から男を救う… この男を「大治郎」は再び見ることになるが、男は「林牛之助」という浪人で「中島伊織」という若い侍を連れており、ある理由から「中島伊織」の敵討ちの助太刀をしようとしていたという『助太刀』、
「小兵衛」が「鯉屋」の隠し部屋で覗いたのは「小野田万蔵」とある男との会話だった… その内容というのが、二十両で或る人物を気絶させて欲しいというものだったが、「小野田万蔵」は恩師「辻平右衛門」が生きている時の「小兵衛」の弟弟子で、「小野田万蔵」は出生に秘密があったことから、「小兵衛」は今回の件をどうするか思案する『小判二十両』、
本作品も愉しめましたねー コミカルな『時雨蕎麦』が印象的でしたが、「三冬」らしさの感じられる『その日の三冬』や、「大治郎」の迷いが勝負に影響を及ぼす『勝負』、「小兵衛」が弟子や弟弟子と出会う哀しい運命を描いた『剣の師弟』と『小判二十両』も良かったんですよねぇ、、、
『剣客商売』シリーズの在庫も、残り僅かですが… 次も本シリーズを読みますよ! -
<目次>
略
<内容>
10巻は先に借りられていたので、11巻を先に読む。小兵衛には孫が誕生。そしてホンワカするような話がいくつかあるのがこの巻。 -
表題作「勝負」といい「その日の三冬」といい、この巻では最近出番の控えめな大治郎と三冬の活躍が見られてとても嬉しかった。「その日の三冬」は「狂乱」とよく似た話だが、岩田勘助の苦悩する胸の内や彼に対する三冬の思いが静かな余韻を残す。性根の腐りきった道場の門人たちに三冬が放つ、嘲りを込めたひと言が特に印象深い。相変わらず切ないエピソードが多いのだが、勘違いが二転三転する「時雨蕎麦」の意外さが一服の清涼剤のようだった。
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その試合「負けてやれ」。秋山大治郎が義父・田沼意次から一刀流の道場を構える谷鎌之助との試合を命じられた経緯を報告すると、小兵衛は即座にそういった。鎌之助はその試合に仕官がかかっていたのである。勝負を前にして苦悩する大治郎には、まもなく初めての子が授かろうとしていた……。
初孫・小太郎の命名をめぐる小兵衛の意外な一面など面白さがいよいよ冴えるシリーズ第11弾。