- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101162034
感想・レビュー・書評
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笛の如く鳴り居る胸に汝【な】を抱けば吾が淋しさの極まりにけり
前川 正
三浦綾子の小説「道ありき(青春編)」はじめ、その年譜に深く名を刻まれている作者。北大医学部学生であったが、肺を病み、幼なじみの綾子とは結核療養者の会で再会した。彼女を、歌誌「アララギ」、そして信仰の道へと導いた人物でもある。
たとえば1950年前後の「アララギ」を見ると、土屋文明選で2人の短歌が掲載されている。全国からの投稿がある中で、「旭川」の地名は目を引き、また、療養者の短歌がいかに多かったかがわかる。
短歌についてだけではなく、2人は、学ぶこと、生きること、愛することについてひんぱんに手紙を交わしていた。往復書簡集を読むと、真剣で、かつ節度を保った若い男女の息づかいが伝わってくる。
2人は、宮本顕治と百合子による往復書簡集「十二年の手紙」を愛読していたという。もしかすると、そのように公刊されることも意識した文通であったのかもしれない。
数多くの手紙の中で、短歌に関する前川正の分析が興味深い。短歌作者には二つの型があり、いわく「神経型」と「体臭型」。前者はインテリふうの頭で考えるタイプで、個性がない。自分はこちらに属するが、後者には「一本貫いた生活」があり、後者に属する綾子こそ本物と述べている。のちに作家となる綾子の、創作者としての資質をいち早く見抜いていたようだ。
入退院を繰り返す綾子を励まし、大きな影響を与えつつ、54年に病状の悪化で早世。享年34。
(2013年9月1日掲載)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
三浦綾子の自伝小説。テーマは、やはり愛!