- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101162164
作品紹介・あらすじ
創立まもない札幌商業学校で教鞭をとり、洋菓子店ニシムラを創業、その人生を教育と伝道に捧げた西村久蔵。彼の勇気と信念にあふれた行動は、触れ合うすべての人の心に、底知れぬ愛の楔を打ちこむ。親に死なれ、久蔵に引き取られて学校に通った者がいた。苦しい日々に、経済的援助を幾度も受けた人がいた。キリストの深い愛に支えられ、人のために尽した稀有の生涯を描く感動長編。
感想・レビュー・書評
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江別在住時代によく「ユカたん」を食べていて、そこからこの本にたどり着いて読み始めた。江別に「キリスト村」があったことも初めて知った。それにしても三浦綾子氏の周りには、こんな「聖人」と呼ばれるような人が多い。なぜだろ?
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名作
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キリスト教信仰に生きた愛の人、
西村久蔵の生涯を描いています。
「この小さき者になしたるは、即ちわれになしたるなり」
という、イエス様の言葉に従って、
どんな人にも惜しみない愛を注いだ西村氏。
その生涯は決して平和なものではなく、
むしろ愛する者の死や経済的困窮、
そして戦争の暗い影を経験しながらも、
隣人のために自らを捧げました。
行いを伴う信仰とは、
こういうものなのだなと思わされました。
また、太平洋戦争中の日本に生きた
クリスチャンとしての苦悩も描かれています。
「天照大神は創造神ではありません」
「戦争は罪です」
といった、きわめて当然の言葉が問題視された時代。
西村氏の息子の洋平は、
自分の家に神棚がないことを教師に厳しく咎められ、
お前の父親は国賊だ、とまで言われて
泣きながら学校から帰ってきました。
その一件があって西村氏は神棚を祀りますが、
戦後、激しい罪責感を覚えました。
私がこの時代に生きていたら・・・
と考えながら読むと、恐ろしくなりました。
三浦綾子さんによって「愛の鬼才」と呼ばれた西村氏。
その愛と信仰には、大いに習うところがありました。 -
キリスト教徒じゃありません。
でも遠藤周作の作品や、同じ作者の『塩狩峠』は大好きです。
そういえば、大学のころ、よく朝のラジオで宗教番組を聞いてました。
ま、完全に夜型過ぎなわけですが。
で、この作品は札幌のキリスト教徒西村久蔵の生涯を描いた作品です。
確かに感動的なくらいに魅力的な人柄。
すべての人たちが彼やその周囲にいる人々のように過ごしたら、
どんなにこの世は素敵なことになるでしょう。
でも、なってない。
キリスト教国がどうして戦争を起こすのか。
そのあたりの矛盾がよくわからんのです。