エロチック街道 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171173

感想・レビュー・書評

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  •  筒井康隆の短編集。この本も古書店で大量に並んでいたのをまとめて購入した内の一冊である。
     この本には、「中隊長」「昔はよかったなあ」「日本地球ことば教える学部」「インタヴェーイ」「寝る方法」「かくれんぼをした夜」「偏在」「早口ことば」「冷水シャワーを浴びる方法」「遠い座敷」「また何かそして別の聴くもの」「一について」「歩くとき」「傾斜」「われらの地図」「時代小説」「ジャズ大名」「エロチック街道」といった18篇の短編小説が収められている。
     この辺りから、筒井康隆の描く小説の傾向が、ドタバタSFから実験小説的なものに大きく変化をした頃のものである。
     と言っても、この短編集が発刊されたのが1981年なので、今から43年も前のことで、いまさらながら筒井康隆の作家歴の長さに驚いてしまう。と同時に未だ色褪せないこれらの小説が驚異でもある。

     さて、この中でも、よく知られているのは、もちろん映画化もされた「ジャズ大名」である。
     アメリカの南北戦争が起こった時が1861年。そして終了したのが1865年である。
     奴隷解放された黒人たちが、日本まで流れてきて、音楽好きな大名とセッションをしているうちに明治維新となり、日本の夜明けを迎えたという話。そして大政奉還が1867年なので、南北戦争と大政奉還がほぼ同じ時代であり、その時間軸を併せて、空間軸をくっつけるとこういうお話が出来上がるということなのだろうか。
     この短編集の中では、唯一の普通に読める小説であると思う。
     「エロチック街道」は、謎の裸の美女に案内されながら、洞窟内の温泉を滑り落ちてくる不思議な感覚の短編である。少し前の筒井康隆の小説であれば、主人公がのどをグビグビ言わせながら、女性を押し倒しそうなものだが、そういう行為には発展しない。読者の想像を上手くずらしている気がする。
     「寝る方法」「冷水シャワーを浴びる方法」「歩くとき」などはストーリーなどもなく、日常の行為を偏執的に描写するだけもの。
     また、「かくれんぼをした夜」「遠い座敷」などは、何だろう、妙にノスタルジックな気分になる不思議な小説である。

     などなど、いろいろなパターンのある変幻自在な短編集である。

  • 何ともアートな作品。シュールでナンセンスなアートというか。電車の中で読みながら所々フフフと笑ってしまった。
    こんな物の見方もあるのね、と感動したり、しょうもな〜と苦笑したり。なかなかな読書体験でした。
    癖が強いけど、好きな部類。
    『中隊長』『寝る方法』『かくれんぼをした夜』『一について』『われらの地図』『時代小説』『ジャズ大名』が特に好き。
    でも、この本の次には普通の小説を読みたくなった。

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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