- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101171425
感想・レビュー・書評
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ホラー短編集1よりも、ナンセンス感が強く作者が自由に書いた話が選ばれている印象。
その中で、『2度死んだ少年の記録』は邪悪さで他に類を見ない名作。
根源的な恐怖を煽るような作品が多く楽しめた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自選ホラー短編集第2弾。前作は直接的バイオレンス&グロテスクな作品が多かったけど、本作ではシチュエーションや文脈などで読み手をじわじわと怖がらせていく作品が中心になっていた。
無間地獄の世界で、時空を行ったり来たりしながら展開する表題作の緻密で挑戦的な構成は圧巻。
一番好きなのは、ある学校で起こった飛び降り自殺の事件を作家がリサーチする「二度死んだ少年の記録」。
水爆実験で生態系がめちゃくちゃになった島を調査する生物学者を描いた「メタモルフォセス群島」も想像力を掻き立てられて楽しかった。 -
1巻のほうが好みだったんだけど、なんというか筒井康隆のクレイジーな部分が遺憾なく発揮されている作品集だと思います。のっけの「魚」とか、あれ何?と感じるけどちょっと後を引く。「二度死んだ少年の記録」が一番怖かったかな。例としては極端だけど、つまりそれぐらい死は恐ろしいものなのだろう。「遠い座敷」は昭和の文豪っぽくていい。
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ドロドロの血やベロベロの皮膚が・・・
といった
見た目に気持ち悪い様子の気持ちの悪さや・・・
(以下<A HREF="http://paperbackaterehwon.blogspot.com/2004/10/2-book-amazon.html">diary@erehwon</A>)
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「魚」既読
「冬のコント」構成の面白さと目に浮かぶ描写が面白い。ベタなサレ男の心理が具現化してしまう強烈な展開と、ボーイの緊張とが交互に表現されてリズムを生んでる。片一方だけだと大したことない無関係のモノ同士が合わさる魅力みたいな
「二度死んだ少年の記録」既読。怖い。
「傾斜」これもまた面白い。わずか2ページで小説になるとは。
「定年食」こういうストーリーだったのか!題名から想起するイメージの斜め上だった。面白い。オチが上手い。
「遍在」凄い。なにこれ!?こんな表現があるの!?小説の可能性を見た。しびれる。映像の断片の羅列ような、夢のような、行っては戻り繰り返し、2つの空間が混じり合い、時間と空間が自由に存在する感覚が凄い。文章で読んで頭の中でイメージになるみたいな。文章だからこその鮮烈さもあるし面白い。
「遠い座敷」文章がいい。読点のない文章できれいにまとめていて凄い。文章の魅力を味わえる。イメージが自然と湧き上がる表現力もさすが。
「メタモルフォセス群島」読んでて「ポルノ惑星のサルモネラ人間」を思い出してそんな感じなのかなー?と思ったら後半の展開で「ホラー選集」であると突きつけられた。不気味だし物哀しいし、生物の生命力やら放射線への復讐やら様々な感情が沸き起こった。
「驚愕の曠野」読んだ。これは電子書籍にできないわ。書籍オンリーの演出だった。面白い。ストーリーや展開云々ではなく、ディテールと構成で不気味な世界を描き出し、恐怖を湧き立たせていてハンパないわ。陰鬱で不安に襲われ、想像すると気が狂いそうになる。面白かった。 -
1975(昭和50)年から1992(平成4)年にかけての作品が収められた「自選ホラー傑作集」の第2巻。この2巻目の方は絶版になっているらしいので古書で購入した。
筒井康隆さんの小生は「わりと好き」かもしれないが、「とても好き」とまではいかない。どうも近年書かれたものはそんなに面白いと感じないのだが、初期の作品の方が楽しいような印象がある。もっともこの作家の初期はいつ頃までなのか全然知らない。
本書中では「魚」「二度死んだ少年の記録」が良かった。「メタモルフォセス群島」なんかも面白い。
読んでいて、グロテスクさやスプラッター、ドタバタが炸裂し始めると、筒井さんの文学は一気に<祝祭的時間>に突入するように見える。この<祝祭>にあっては、人物たちは狂気のように動く。その瞬間から、人物に感情移入するのは難しくなる。まるでそこから登場人物たちは「自動人形」にでもなったように、人間的な感情もなく偏執的に動作する機械的な存在と化す。
ベルクソンが「笑い」の生じる条件として「人間が急に自動人形のように見えたとき」を挙げているが、筒井文学の<祝祭的時間>における人間像の変移がまさにこれに該当するような気がする(もっとも私は子供の頃からベルクソンのこの笑いの定義が気に入らなかった。が、「笑い」の一部は該当するのかもしれない)。
身体毀損におけるグロテスクの表現というのも、そういえば、<人間的なるもの>が有機性を急激に欠いて、ぶざまな<単に物質的な(無機的な)もの>へと変移しかかるその瞬間に生じる<祝祭的時間>の定位であるのかもしれない。一般論として。円環=調和=閉鎖から、欠損=醜悪=解放へ。
そんなことをふと思いつきながら読んでみると、筒井さんのこの作品集はなかなかに興味深いものがあった。
筒井さんがときどきやる前衛文学もどきの「言葉のイタズラ的遊び」については、あまり興味を持てないのではあるが。 -
恐怖を引き離す行為は、未知を言語化することで達成される。しかしその言語化されたもの自体が違和感を持ち歪んでいくと、私たちは言いようのない恐怖を覚えてしまうのかもしれない。
後書きの怖いと感じるプロセスについてが興味深かった。 -
ma2さんリコメンド
うーむ、ツツイストへの道は遠いな・・・ -
解説いいね!
「恐怖」には二種類ある。成長過程で出会う未知のものに対する恐怖と成長過程で既知にしてきたはずのものを剥がされていく恐怖。
筒井康隆のホラーはまさに後者で、特に「二度死んだ少年の記録」「魚」あたりは際立ってる。 -
魚 / 初出 文學界 1988年6月号
冬のコント / 初出 新潮 1990年1月号
二度死んだ少年の記録 / 初出 別冊文藝春秋 1992年7月号
傾斜 / 初出 SFアドベンチャー 1981年6月号
定年食 / 初出 小説新潮 1975年4月号
遍在 / 初出 オール讀物 1980年1月号
遠い座敷 / 初出 海 1978年10月号
メタモルフォセス群島 / 初出 小説新潮 1975年2月号
驚愕の曠野 / 初出 文藝 1987年冬季号
解説 (小谷真理)
カバー装幀 松昭教
デザイン 新潮社装幀室
カバー印刷 錦明印刷
印刷 大日本印刷
製本 憲專堂製本