本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
- Amazon.co.jp ・本 (726ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101172026
感想・レビュー・書評
-
カラフトに流れ着いた朝鮮半島出身の人びととその家族が、日本の敗戦後にGHQの裁定により故郷に送還されることが決定します。本作は、北海道から長崎の収容所まで移動することになった彼らのすがたをたどりつつ、彼らの一人ひとりにとってこうした運命がどのような意味をもっていたのかということをえがいています。
汽車に乗りあわせた人びとは、いずれもカラフトから韓国に移送されるという共通の運命のもとにありながらも、それぞれの状況におうじて異なる思いをかかえています。朴鳳石は、ユダヤ系ソ連人であるソロモン・マーカス・シャバラの助けで日本に帰ることができたものの、彼の家族に大きな亀裂がもたらされることになります。駿浩、仁浩、珍浩という彼の三人の息子たちや、後妻である金春仙も、それぞれが異なる悩みをいだいており、行動をともにしながらも彼らの心はひとつになることはありません。さらに旅籠屋の劉根在や炭鉱の労務頭であった李載吉、巡回牧師の崔燿燮など、いずれも異なる事情を秘めつつ汽車に乗りあわせることになった人物たちの過去と彼らの心情が語られます。
汽車に乗る登場人物たちは、いずれもおなじ運命に巻き込まれた人びとですが、「民族の運命」とひとくくりにすることのできない多様性が示されています。詳細をみるコメント0件をすべて表示
全2件中 1 - 2件を表示