- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101196312
作品紹介・あらすじ
少年にとって、父は聳える山だった。母は豊かな海だった-。土木工事や飲食店、旅館などで働く五十人余りの人々が大家族のように寄り添って暮らす「高木の家」。その家長の長男として生れた英雄は、かけがえのない人との出会いと別れを通して、幼い心に生きる喜びと悲しみを刻んでゆく。瀬戸内の小さな港町で過ごした著者の懐かしい幼年時代を抒情豊かに描いた自伝的長編「第一部」。
感想・レビュー・書評
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2024.3.17読了
伊集院静さんの作風が大好きで、家族に勧められた作品。
作者の自伝的長編の第一部「海峡」
図書館でたまたま見かけたので借りました。
情景が目に浮かぶ美しく抒情豊かな描写に心揺さぶられます。
背景は戦後間もない貧しい時代、瀬戸内の小さな港町が舞台です。
後半は泣きながら読みました。
第二部「春雷」も楽しみです!
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著者の自伝的小説三部作の序章。そして初めて読んだ彼の長編小説。
目からウロコ。そうか、こんなにも読み応えのある本格派の小説を書く作家だったのだ、彼は。正直、今までマトモに読んだことが無かったことを深く悔いた次第。
なんと云うか、読みながら状況が視覚的、聴覚的に鮮やかに浮かび上がる。ある意味「映画」的な表現力を持つ筆致。なんのストレスも余計な力も要らず、ただ川の流れに身を任せるように、ごく自然に澱みなく読み進められる。
叶わぬ夢ではあるけれど、世が世なら、こんな幼年時代を過ごしてみるのも良かったに違いない。
第二部、第三部を読むのも楽しみだ。 -
自然や季節、風景を想像できるさわやかな作品。
同じ頃、これだけの「別れ」はあったのかな。
英さんの成長が楽しみ。 -
解説を読んで少年小説という分野があることを知った。オイラが好んで読んでいるのはこれだと思った。英雄と真吾とツネオの関係が最高だ。一緒に連んでいる割りにはくだらないことでケンカする、でも気がつくとまた一緒に遊んでいる。怪我するくらいにやり合っても、仲直りしてるって何なんだろう。ビクと十兵衛とのケンカとは違う。子供どうしだからできるケンカかも知れない。
美津との別れは切なかった。女の子を好きになるってこともよくわからないのに、二度と会うことができない別れを経験する英雄が可哀想だった。兄の雄伍、イサム、真吾、ヨング……小学生の時分は仲間との別れは物凄く寂しかったことを思い出した。英雄のまわりには少々乱暴だがそんな子どもの気持ちを察することができる大人が何人もいた。オイラもリンや江州、源造みたいな骨太の大人の男に近づいているといいんだけどな。 -
作者が何かの雑誌の記事にこの小説のことを書いていた。ゴルフに関する書物やエッセイは好きでよく読んでいるが、過去に小説を読んだ時にはあまり印象に残らなかったので読んでいなかった。しかし著者の体験からの3部作と知って手に取った。
しかし本書は小説としても完成度が高く、しっかりと印象に残る作品だ。特に戦後の混乱の時代に、在日の人たちとのつながりや、国を超えた駆け引き(「海峡」は船で日本に向かう場面に使われる)など、少年には難しいことが周りで起こってくる。それを読者の大人の目で理解しながら読み進める。
世の中には理不尽なことがたくさんあって、それを理不尽だけど受け入れることで人間は成長するんだな、と改めて思った。 -
戦後の混乱期を生命力豊かに描いている。
リンさん・美津・真ちゃんとの別れは辛いものがある。私もこの時代の少し後を生きているが、身近な人との予期せぬ別れはそんなに多くなかったな。 -
各章切ない話だが、うまいなぁ。特に美津の話はグッときます。
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面白かった
作者のほぼ自伝のようだ
だとしたら昔とはいえ壮絶な幼少期だ…
なぜ戦争をするのか
人間はみんな大馬鹿だからは名言
主人公の英雄の成長が気になる
続きを読みたい -
伊集院静の自伝的小説幼年篇。高木家の長男である主人公英雄。父斉次郎。母絹子。多くの出会いと別れ。大切な人が自分のそばからいなくなってしまうことに英雄は不安を感じる。逞しく生きていくことを伝える父。第二部第三部が楽しみだ。
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「羊の目」以来の作者の作品。やっぱりはずれない面白さ。