古手屋喜十 為事覚え (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101199269

作品紹介・あらすじ

お江戸は浅草のはずれ、田原町で小さな古着屋を営む喜十。恋女房のおそめと二人、子がいないことを除けば日々の暮らしには不満はない――はずだったのに、何の因果か、たまりにたまったツケの取り立てのため、北町奉行所隠密廻り同心・上遠野平蔵の探索の手助けをする破目になる。人のぬくもりが心にしみて、思わずホロリと泣けてくる、人情捕物帳の新シリーズ、いよいよスタート!

感想・レビュー・書評

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  • 浅草寺のそばの脇道を入ったところにある「日乃出屋」は、月代もさびしくうろんな見た目の喜十と、若くて美人の女房おそめの営む古手屋。
    喜十を悩ませるのは、隠密廻り同心の上遠野が立ち寄っては、ツケをためているくせに喜十に探索の手伝いをさせること。
    上遠野が手柄を立てなければツケも支払ってもらえないと、渋々上遠野を手伝う羽目になった喜十は…


    〈髪結い伊三次〉シリーズ以来、久々に手にした宇江佐真理さんの作品。

    喜十は見た目もイマイチで、ちょっとひがみっぽく、何事も悪い方へ考えてしまう、時代ものの主人公としては珍しいタイプ。
    屈折してるけど良い男とか、見た目は悪いが気っ風はいいとかではなく、どこまでもその日の暮らしを堅実に生きている当たり前の男という感じ。
    そこが妙味なのかもしれないが、つい伊三次シリーズと比べると登場人物が薄味に感じてしまって、どこかもうひとつ…という感じ。

    文庫の背表紙に、“新シリーズ、いよいよスタート!”とあって、ちょっとしんみり。

  • 古着屋を営んでいる主が主人公というユニークな新シリーズ。
    ちょっととぼけた感がある古着屋喜十と、彼に捕り物の手伝いを依頼する隠密廻り同心上遠野平蔵との、間合いが微妙で、何とも面白く、まだまだ続けてほしかった。
    著者の急逝により、次回作『雪まろげ』以降はなく、残念・・・合掌。

  •  この著者の新しいシリーズになるはずだったけれど、それもかなわなくなった。古手屋の親爺喜十が同心上遠野に御用をいいつけられてぶつくさいいながらも捜査に協力して事件を解決するという連作。ちょっとしたエピソードが実はつながりあっていてという偶然すぎる都合のよい話ばかりだが、もとよりこれは謎解きが主眼ではなく、それにまつわる人間模様が読みどころなのだから問題ない。初作なのでまだ喜十と上遠野とか少し人物関係にぎくしゃくしたところがあるが、それもこなれていってこれはこれで魅力的なシリーズになりそうなだけに著者の急逝は残念。もう一冊次作があるのでとりあえずはそれを読むか。

  • 新シリーズ開幕か。

    古着屋(古手屋)の主人が、隠密廻りの同心のお手伝いをするのだが、いわゆる「小物」としてドッブリはまっているわけでなく、半ばイヤイヤながらやってるというこの距離感が絶妙。このへん、某髪結いさんシリーズとは趣を異にしているようで。

    体調に無理をせず、末永く続けていただきたいものです。

  • 人情時代小説の名手宇江佐真理さんの新シリーズ。隠密廻り同心の上遠野平蔵の手助けをする古着屋喜十の活躍を描く連作集。
    なんといっても、この二人の関係が抜群に微妙で面白い。古着の掠りで喰う者は卑しい顔つきになるという上遠野に対して、その卑しい顔つきの男の所で酒を飲むのはどういうことだという喜十。ツケの溜まりを記帳する喜十の渋面が目に浮かぶ。
    子供がなく寂しい思いをしていた喜十夫婦に捨て子が現れ、益々賑やかになりそうだ。今後が楽しみなシリーズのスタートである。

  • 安心して読み進められるから宇江佐さんの作品は大好き。
    人情話なんだけど、それだけじゃないところが好き。
    今回は古着屋さんのご主人喜十さんが大活躍。
    ぶつぶつ言いながらもどんどん事件を裁いていくところも面白かった。

  • 宇江佐さん時代小説は本当によい。
    喜十の人となりもよく、周りの人たちも心意気があってほっとする。
    まだまだ読んでいたいと思わせる作品。

  •  浅草のはずれ、田原町の小さな古着屋「日之出屋」を営む喜十29歳は、自害しようとしたおそめ19歳を助け恋女房に。同心上遠野平蔵の手助けをしながら見世を切り盛り。結婚して6年、子供なし。宇江佐真理「古手屋喜十為事覚え」、シリーズ№1、2011.9刊行、2013.3文庫、連作6話。楽しく読了。喜十と若い美人のおそめ、時々喧嘩もするけど、寒い夜はおそめが身を寄せてくる。第5話、「小春の一件」が一番お気に入りです!

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    お江戸は浅草のはずれ、田原町で小さな古着屋を営む喜十。恋女房のおそめと二人、子がいないことを除けば日々の暮らしには不満はない―はずだったのに、何の因果か、たまりにたまったツケの取り立てのため、北町奉行所隠密廻り同心・上遠野平蔵の探索の手助けをする破目になる。人のぬくもりが心にしみて、思わずホロリと泣けてくる、人情捕物帳の新シリーズ、いよいよスタート!

    令和元年12月14日~16日

  • 浅草の田原町での小さな古着屋(古手屋と、言っていた)の主人喜十は、恋女房と、2人で、商いをしている。
    子供がいないが、仲睦ましい。
    来た町奉行所のおっ蜜周りの同心上遠野平蔵から探索の手助けをするが、、、喜十は、普通の庶民であり、剣を振り回したり、武道が優れているわけでもないのに、人情味あり、捕り物の探索に、一役かってしまう。
    6話の話、どれも、喜びと、悲しみとの糸をつむぎながら、生きて行くには、、、人の役に立てて一生を過ごせていけるか、、、、と、この時代の習慣、人とのつながり、等、、、、人情味の溢れる小説は、読んでいて、飽きない。
    まだまだ読みたい本である。

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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