庭 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101205434

作品紹介・あらすじ

私は夫と離婚をする。そのことを両親に報告せねばならない。実家へ向かう路線バスのなかで、老人たちがさかんに言い交わす「うらぎゅう」。聞き覚えのない単語だったが、父も母も祖父もそれをよく知っているようだ――。彼岸花。どじょう。クモ。娘。蟹。ささやかな日常が不条理をまといながら変形するとき、私の輪郭もまた揺らぎ始める。自然と人間の不可思議が混然一体となって現れる15編。

感想・レビュー・書評

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  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    虫のような小さな生き物、匂い、共通して庭も登場する短編15篇。

    何か引っ掛かる。何かゾワっとする。
    日常に起こりそうな不穏。
    生きるということは、いつも不確か。

    不確かだからこそ、惹きつけられる。


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    私は夫と離婚をする。そのことを両親に報告せねばならない――。
    日常の不穏と不条理を浮き彫りにする15編。
    芥川賞受賞後初となる作品集、ついに文庫化!

    実家へ向かう路線バスのなかで、老人たちがさかんに言い交わす「うらぎゅう」。聞き覚えのない単語だったが、父も母も祖父もそれをよく知っているようだ――。 彼岸花。どじょう。クモ。娘。蟹。ささやかな日常が不条理をまといながら変貌するとき、私の輪郭もまた揺 らぎ始める。自然と人間の不可思議が混然一体となって現れる15編。

    目次
    うらぎゅう
    彼岸花
    延長
    動物園の迷子
    うかつ
    叔母を訪ねる
    どじょう
    庭声
    名犬
    広い庭
    予報
    世話

    緑菓子
    家グモ


    ⚫︎感想
    実家の部屋だったり、借りた家の庭だったり、何が潜んでいるかわからないものに対する畏怖。これらの短編たちから、生物としての人間を強く思わせられる。身近な人であっても不確かさを含んでいる。

    ちょっと不穏で不確か、でも描写が克明なので、場面の印象をくっきりと強く感じた。

  • たとえばマタハラと言ってしまえば簡単に済むが、
    (「工場」においては非正規労働の過酷さと済ましてしまう読みもあり得たように)
    生理的な居心地悪さを提出する、その手つきゆえに、ホラーであり幻想小説である読後感が生まれる。
    人が人としてあるだけで、人が人と関わるそれだけで、必然的に歪みが生じる。
    あとは気づくか気づかないかだけで、多くの人は意図的にか無意識には見過ごしている。
    それを作者は見る。
    カメラでぐいーーっとズームしていくように。(デヴィッド・リンチ「ブルー・ベルベット」の冒頭)
    目地も肌理もすべて書き尽くす。
    気持ち悪いくらい接写する。

    ■うらぎゅう★
    ■彼岸花★
    ■延長
    ■動物園の迷子★
    ■うかつ
    ■叔母を訪ねる
    ■どじょう★
    ■庭声―谷崎潤一郎「鶴唳」によせて
    ■名犬★
    ■広い庭★
    ■予報
    ■世話
    ■蟹★
    ■緑菓子
    ■家グモ

  • 短編集なのに、重厚感。
    最初の「うらぎゅう」から、とにかく気になり、ぞわぞわした。匂いや質感、いろいろ感じられる文章。とくに会話文が好き。

  • 図書館で借りました。【うらぎゅう】?なんじゃそれ?!な不思議な15の物語。なんだか、沼。はまる。そんな15の物語。『動物園の迷子』『広い庭』『家グモ』が印象に残った。

  • 著者の本は「穴」、「工場」を既読だが、独特の文体が楽しめた.15の短編集だが、匂いに注目している場面が多いと感じた.記憶していることに匂いが連動していることはよく気が付く現象だと思っているが、著者の感覚の鋭さにも関連しているようだ.蟹やクモに注目しているのも意外性があるが、著者の感性に触れるものがあるのだろう.現実とは少し乖離した世界を漂うような感触が得られる好著だ.

  • 淡々と読み進むほど不気味な日常を垣間見る

  • 初めて読むジャンルの本だった。途中まで読んだ。家で読んでたらこわかったかも。

  • 湿り気の多いネチっとした、不愉快なトーンの話が続く。声と音が区別なく耳になだれ込んでくる。脚の多い虫たちが卵を産む。人の家族はギクシャクしてチクチクと苛立っている。そんな小説をなぜか読み続けてしまう。勧めにくいが、私は好きだ。

  • 2022年、34冊目です。

    小山田浩子さんの短篇集です
    主人公の目の前にある情景を、注意深く正確に描写していく文章は、
    作者の文章の特徴です。どうでもいいような些細な日常を精緻に描いていく中に、
    ふと感じる違和感が、ところどころに埋め込まれています。
    そして、物語の最後に、その違和感の顛末が出てきます。
    それは、少し奇妙な顛末になることが多いのですが、
    それまでの文章が、淡々と事実を描写しているので、
    一層、その顛末の奇妙さが印象付けられる感じを受けます。

    これまで、「工場」、「穴」などの作品も読んでいますが、
    「工場」に代表されるように、主人公の女性が、工場で働いている物語の最後に、
    工場の中にたくさんいる黒い鳥になってしまうような”奇妙さ”が、
    多くの物語に通底するものだと感じています。

    おわり

  • 方言文体なんだな…なんてーか…田舎の怖さってか、奇妙さ…

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著者プロフィール

1983年広島県生まれ。2010年「工場」で新潮新人賞を受賞してデビュー。2013年、同作を収録した単行本『工場』が三島由紀夫賞候補となる。同書で織田作之助賞受賞。2014年「穴」で第150回芥川龍之介賞受賞。他の著書に『庭』『小島』、エッセイ集『パイプの中のかえる』がある。

「2023年 『パイプの中のかえる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小山田浩子の作品

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