ザ・ロイヤルファミリー (新潮文庫 は 68-3)

著者 :
  • 新潮社
4.10
  • (110)
  • (116)
  • (57)
  • (7)
  • (3)
本棚登録 : 1444
感想 : 92
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101206936

作品紹介・あらすじ

お前に一つだけ伝えておく。絶対に俺を裏切るな――。父を亡くし、空虚な心を持て余した税理士の栗須栄治はビギナーズラックで当てた馬券を縁に、人材派遣会社「ロイヤルヒューマン」のワンマン社長・山王耕造の秘書として働くことに。競馬に熱中し、〈ロイヤル〉の名を冠した馬の勝利を求める山王と共に有馬記念を目指し……。馬主一家の波瀾に満ちた20年間を描く長編。山本周五郎賞受賞作!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 少し厚いのでGW用に取っておいたこの本、3年振りに京都開催となった天皇賞(春)を観に行く電車の中で読み始めた。
    新しくなった競馬場では、午前中のレースからファンファーレの度に拍手が湧き、その雰囲気がとても良かった。

    親子二代に亘る馬主と彼らにゆかりの血統の歩みが、馬主につくレースマネージャー・栗須の目を通して語られる。
    馬主の家族の物語で、JRA賞馬事文化賞というのはともかく山本周五郎賞ということだしちょっと期待していたのだが、それほど面白くなかった。
    特に前半、ロイヤルホープとそのオーナー山王耕造の話は、馬にも人にもどっちつかずの平板な話で、競馬の話なのでサクサクとは読めるが、あまり感興が湧かず。
    後半、耕造と愛人の間に生まれた耕一が登場し、「相続馬限定馬主」という制度のことは初めて知ったが、ロイヤルホープの仔ロイヤルファミリーとともに、人も馬も父子が繋がっていく話になって、ようやく前半の話が活きてきたようには思った。
    ただ、この耕一やライバルである展之らは馬主として振る舞うにはあまりに青く、もとより狂言回しの栗須には彼らを導く度量もなく、人間のほうのドラマはあまりいい気持ちでは読めなかった。
    馬のドラマにおいては、ロイヤルホープと鎬を削ったライバルたちの、その子どもたちが相まみえ、それぞれの引退戦となる有馬記念までに流れる時間の経過や、レースシーンと結末に、血の継承という競馬の面白さが詰まっていたように思った。
    その後のロイヤルファミリーの戦績は蛇足でしょう。

  • 文学書評
    読書レベル 中級
    ボリューム 619頁
    ストーリー ★★★
    読みやすさ ★★★
    ハマリ度  ★★★
    世界観   ★★★★
    知識・教養 ★★★★
    読後の余韻 ★★★★★★!
    一言感想:
    競馬好きな方、感動したい方にオススメの1冊です!競馬好きな方、絶対にハマります!

    私は全く競馬がわからず、競馬への感情は、(大変失礼ながら)馬の競争でお金を賭けて何が面白いのか、、、という程度の気持ちでした。が、Book YouTuber(マサキさん)が、競馬を知らない人でもめちゃ泣ける!感動!とオススメしていたので手に取りました。読後、競馬好きな方の気持ちがものすごく理解できました。実は競馬を通じて競走馬をはじめとする様々な物語(ストーリー)を見ているんだな〜っと。

    読み心地ですが、「です、ます調」の文章という事もあり、私的には最後までなかなか感情が乗りきれませんでした。そして、最後の最後まで苦しい展開が続いたのも、読んでいて正直苦しかった(キツかった)です。

    しかし!読後の余韻に★6をつけました!モヤモヤの感情はたった1ページで全て救われました(笑。こんな終わり方もアリなんだ!っと。その1ページに釘付けとなり、暫く眺めながら感傷に浸ってしまいました(笑。私にとって、この読後感は凄まじく印象的で初めての体験でした。

  • この作品のテーマは継承です。
    親から子へ子から親へと、脈々と紡がれていく
    競走馬に魅せられた親子2代のお話です。

    馬を持つことが、どれだけ大変かと改めて認識できました。選ばれた者だけが、許される別世界です。
    馬を持つことができても、勝てるとは限りませんし、どれだけいい馬でも、運が左右する難しい世界です。その中で、ロイヤルの冠がついたサラブレッドたちの日々を馬だけでは無く、馬主、騎手、生産者、調教師目線で語られる物語がとても、リアリティーがあり面白かったです。

  • 馬、そして人々の継承をテーマとした、馬主一家の波瀾に満ちた20年間を描く長編。

    父を亡くし、空虚な心を持て余した税理士の栗須栄治はビギナーズラックで当てた馬券を縁に、人材派遣会社『ロイヤルヒューマン』の社長・山王耕造の秘書として働くことに。
    競馬に熱中し、『ロイヤル』の名を冠した馬の勝利を求める山王と共に、栗須は有馬記念を目指すことになる。

    大前提として、競馬を題材としているものの、競馬を知らない方でも楽しめる小説。むしろ、競馬を知らない読者ですら夢中にさせるほどの熱量と没入感は凄まじいの一言に尽きる。
    オーナー・レースマネージャー・ジョッキー・調教師・記者、競馬に携わる登場人物たちの夢や希望を背負い、一心不乱にコースを駆ける競走馬はとても美しく、凛々しく疾駆する姿や愛くるしいしぐさに至るまで、その表現描写は感嘆のため息すら出るほどだった。

    物語は第一部と第二部に分けられているのだが、私は第一部のラストレースで号泣。主人公の栗須と同じく、「がんばれ!」と叫びそうになりながらページをめくり続けた。
    第一部の感動に比例するかのように、第二部は晴れやかな読後感を味わうことができ、競走馬と人の縁の継承、そして確かな未来への希望を感じ取った。
    これから読む人は、ぜひこの小説ならではの各部末にある仕掛けにも注目してほしい。

    馬券、買ってみるかぁ。

  • 解説:今野敏氏!先生、ネタバレしてます(^^;;
    読了後に読んで正解。

    皇族の話ではなく、競馬界の物語は、栗須栄治の丁寧な語り口で綴られる。

    ひょんなことから、豪快な馬主の山王耕造のマネージャーとなるクリス
    。馬を見る目がないので『人』を見て決める山王。
    その『王』の字にちなんで、持ち馬達に『ロイヤル』の名をつけている。

    競馬をよく知らなくても、とても楽しめた。高揚と興奮でレース展開には、文字を追う目が馬と一緒に走ってしまった! 

    競走馬の末路…でも競馬が無くなればサラブレッドも絶滅、も印象的だ。テーマは【継承】

  • 日本競馬の最高峰、「有馬記念」での勝利を夢に抱き
    人生を翔ける者たちの「継承」の物語。
    頑固な馬主の山王社長に仕えるマネージャー目線で
    大河ドラマを観ているように時がどんどん進む。
    ギャンブルの世界、競馬に関わる人間たちのドラマ
    に、競馬に詳しくない私ですら徐々に夢中になり、
    ラストは自然と目頭が熱くなりました。

    時間を空けて(出来れば有馬記念前の時期にでも)
    また読みたいと思える名作でした。

  • 馬主一家の20年間を描く物語。

    競馬のことは何にも知らなかったけれど、大変興味深く読みました。

    競走馬を中心に馬主、牧場主、騎手、様々な人たちが関り合う中で、勝利を目指す物語であり、父と子の物語でありました。

    レースの場面の描写はまるで映像を見ているかのごとく感じられて、読みながらハラハラドキドキでした。

  • 文体もそう感じさせるのか、壮大な物語です。
    主人公は馬主を支えるサポート役。馬主の山王社長がいわゆる豪傑で嫌われ者だがその分自分を信じてついてきてくれる者にはとことん情に厚い。さんざん苦労してきたからこそ、主人公を雇う事に決めた時の「絶対に俺を裏切るな」という言葉が痛いほどの本音なのだと思います。そして主人公は裏切らない。孝行できなかった父親を雇い主の山王に重ね、だからこそ山王が亡くなるまで尽くせたんですよね。
    スケールの大きさを感じさせる物語で、映画とかドラマになったら映えそうですね。
    わたしに関しては、読み終えた直後ですら競馬に1ミリも興味湧かなかったんですが、この本で世の競馬ファンがちょっと増えるのでは?

  • 出会えてよかったと思える作品。

    「伝統、継承」

    血が受け継がれていく競馬の魅力。
    託される想い。
    馬を中心に結ばれていく人間関係。
    継承されていくからこそ、越えなければならない偉大な先人たち。

    競馬を何も知らなくても、温かい気持ちになれる。馬とともに疾走感のある爽やかな本だった


  • 3/24
    いかにも男性が好みそうな本でした。
    競馬を題材にしたものは少ないので、その点では興味をそそられました。
    「下町ロケット」が好きな人なら好きでしょう。

全92件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1977年神奈川県生まれ。2016~2022年に愛媛県松山市で執筆活動に取り組む。現在は東京都在住。2008年に『ひゃくはち』でデビュー。2015年に『イノセント・デイズ』で第68回日本推理作家協会賞、2019年に『ザ・ロイヤルファミリー』で山本周五郎賞とJRA馬事文化賞を受賞。その他の著作に『95』『あの夏の正解』『店長がバカすぎて』『八月の母』などがある。

「2023年 『かなしきデブ猫ちゃん兵庫編  マルのはじまりの鐘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

早見和真の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×