- Amazon.co.jp ・本 (752ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101212722
作品紹介・あらすじ
戦後最大の詐欺集団、横田商事。その崩壊を目撃した隠岐隆は同じく元社員の因幡充に勧誘され、嫌々ながら再び悪事に手を染める。次第に才能を開花させる隠岐。さらには二人の成功を嗅ぎつけ、経済ヤクザの蒲生までもが加わってきた。口舌で大金を奪い取ることに憑かれた男たち。原野商法から海外ファンドにまで沸騰してゆく遊戯の果てに見えるのは光明か地獄か。山田風太郎賞受賞の犯罪巨編。
感想・レビュー・書評
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月村了衛『欺す衆生』新潮文庫。
1980年代に起きた豊田商事事件をベースに描かれる山田風太郎賞受賞の詐欺犯罪小説。
原野商法、和牛商法、株式投資詐欺、海外ファンド詐欺とあの手この手で人を騙し、大切な資産を奪おうとする奴ら。黒い金が集まる所に砂糖に群がる蟻の如く引き寄せられて来る悪い奴ら。裏切りと企み、成功と失敗。詐欺という犯罪を非常にスリリングに描いており、面白い。特に終盤の展開は読み応えがある。
金のためなら仲間の命までも差し出すヤクザよりも怖い、血も涙も無い生まれついての詐欺師たち。
タイトルの『欺す衆生』とは聞き慣れない言葉だ。調べてみたら『欺す』は「あざむく。真実でないことを嘘をついて真実だと思わせる。」ことで、『衆生』とは「一切の生きとし生けるもののこと。基本的には迷いの世界にある生類を指す……」とある。つまりタイトルの意味は「人に嘘をついて欺き、人を騙す奴ら」ということか。
戦後最大の詐欺事件を起こした横田商事で営業を担当していた入社5ヶ月の隠岐隆は会長が目の前で刺殺される瞬間を目撃する。それを切っ掛けに破綻した横田商事。隠岐は横田商事の元社員であることを隠し、何とか文具会社の営業社員となる。
妻の親族に騙されて作った借金もあり、妻と2人の娘との苦しい生活が続く隠岐に横田商事の元社員の因幡充が近付き、自ら立ち上げた詐欺会社に勧誘する。当初は詐欺という犯罪行為に抵抗を感じていた隠岐だったが、次第にその才能を開花させていく。
原野商法が一段落し、次の詐欺に手を染めようとする因幡は横田商事の元幹部の肥崎、鎌井を仲間に引き込む。さらには2人の成功を嗅ぎつけ、経済ヤクザの蒲生までもが近付いて来る。
豊田商事の会長刺殺事件の瞬間はテレビでも映像が流れ、写真週刊誌にも画像か掲載されるなど当時は衝撃的な事件だった。実体経済とはかけ離れたバブルに浮かれ、投資ブームに便乗した詐欺犯罪は時代と共に変化していくが、結局のところ被害者となるのはある程度の蓄えがある普通の高齢者が多いようだ。
本体価格1,050円
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当時、最大の被害総額と言われた豊田商事事件をモチーフにした人を欺くことから逃れられない男達の物語。
様々な困難のたびに覚醒していく主人公のギリギリのところでの駆け引きが面白い。
読んでいて色々思い出す過去の詐欺事件なども上手く盛り込まれスリル満点の一冊です -
この人の文章も物語の展開、ペース、何もかも自分にフィットしてとても楽しく読めた。昭和最大の詐欺事件を基に、うだつの上がらない平社員隠岐が原野、和牛、証券など色んな詐欺に手を染め、闇社会を生き抜いて稀代の詐欺師になる話。規模が大きくなってとてもおもしろかった。
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700ページを超えるが一気読みできる。
主人公は詐欺師でクズだが、読み進めるうちに感情移入していく。
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天才詐欺師の物語。ギリギリに生きていながら、死なない。生き残る。原野商法に始まって、和牛商法、海外ファンド、最後は東芝の原発企業の買収。世の中の読み方が素晴らしくキレている。
面白い。 -
特に経済詐欺と言われている分野は、頭が良くないと成功しない。本書の主人公も頭をフル回転させながら悪事に手を染めていく。いくつく先は光明か地獄か。
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昭和の事件である豊田商事を思わす横田商事の会長銃撃事件から始まる、詐欺ストーリー。実際のネタをミックスしつつ、詐欺に展開する。一方でこういうことはやらない、と自身の決まりもありつつ、しかし周りからも翻弄され変わっていく様子も見られる、一連の詐欺師人生。面白い。
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豊田商事事件のモチーフに端を発しての、組織的詐欺事業に手を染める一人の男の物語。人の欲望の醜さを暴くものかと思いきや。
なんていうか、とにかく自己本位で優柔不断な主人公の隠岐がどうしても好きになれず、にも関わらず周囲から一目置かれているような状況が腑に落ちず、読んでる間中まったく興味が持てずに感情移入もできずにずっとつまらなかった。詐欺の顛末もヤクザとの駆け引きも陳腐だった。
因幡のキャラは面白かったけれど使い捨てでがっかり。ヤクザの蒲生もまったく魅力がなく、聡美にいたってはあまりに漫画チックでドロンジョ様かと思っちゃった。
唯一共感できたのは、家庭内での父親の無力さだけだったな。 -
結構な厚さの小説だが、飽きずに最後まで読める。
エンタメ小説として最高に面白い。