知っているようで知らない消費税: 「超」税金学講座 (新潮文庫 の 11-6)

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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101256269

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  • 消費税の仕組みとは?その構造的な欠陥とは?構造改革が叫ばれながら、改革らしい改革が行われず、税制改革を主導すべき基本理念さえ明確でない日本の現実。現状では企業のIT化にも対応できない。経済を活性化させる、あるべき税制改革構想を説く。

  • 105円購入2012-04-19

  •  今国会で消費増税の行方が注目されています。
     先頃、評論活動を引退された三宅久之さんは「国家財政が危機的状況の中、政治家は国民に対して耳の痛いことでも必要なことははっきり言わなければならない。野田首相は自分の人気に不利になっても増税すると言っている。この一点で私は彼を支持する」というようなことを盛んにテレビで仰っていました。
     一見すると三宅氏の発言は、国家全体の未来を見据えた立派な発言で、正論が持つ格好良さのようなものも感じられます。

     が、三宅氏は現行の消費税制度が欠陥だらけのシステムであることを踏まえてこのようなことを仰っているのか、甚だ疑問です。
     我が国における消費税制度の最大の欠陥はインボイス制度を持っていないことで、インボイス制度を導入せずに税率だけを引き上げても、「益税」については更に拡大してしまいます。
     ちなみに、益税についてご存じない方に思いっきり分かりやすく説明しておくと、益税とは消費税納税を免税されている免税業者が、我々消費者から受け取った消費税をそのままポケットに入れている、ということです。我々消費者が増税によって支払う消費税は、赤字財政の軽減にまで「そもそも届かない」場合があるということです。
     あと、消費税に関しては「生活必需品や医療費などは非課税にすべきで、贅沢品にのみ高い税率をかけるべき」というようなことを言う人もいるのですが、それもインボイス制度を導入しなければまず不可能です。

     野田首相が本当に国民に耳の痛いことを言うのであれば、増税以前に益税として中小事業者にポッポナイナイされている「益税」を全て納付させる(+それに伴い事業所得者の売り上げをガラス張り状態にさせる)と言うことになると思います。それでもなお税収が足りないとなったときに初めて増税を言うのが筋ではないでしょうか。

     消費税増税の行方が注目されますが、まず消費税の仕組みや問題点について知っておく必要があります。ご存じなかった方が本書を読めば、税金についての見方・考え方がきっと変わると思います。


     以前ご紹介した三木義一『日本の税金 新版』(http://booklog.jp/users/tomiyadaisuke/archives/1/4004313597)と『給与明細は謎だらけ』(http://booklog.jp/users/tomiyadaisuke/archives/1/4334035043)が、立法論やあるべき税制の提言まで含めたラディカルな本だと思ってましたが、本書はそれ以上でした。

     本書で一番たまげたのが、Chapter4で取り上げられているヘンリー・ジョージが提唱した土地単一税です。
     国家財政を固定資産税一本にするというのは、一見トンデモな考え方のようにも思われますが、そのシステムやメリットを説明されると次第に「それもアリか」と説得されました。
     まず、未実現のキャピタルゲインに課税することができます。次に、外形標準のみによって税額計算ができるので徴税も簡単です。逆に租税回避や脱税は極めて難しくなります。そして固定資産を有しているのは金持ちだけ、とまでは言いませんが、担税力のある人がほとんどなので消費税増税に比しても逆進性が少なくなります。
     すっかり感心しちゃって、6800円もするヘンリー・ジョージの『進歩と貧困』を買っちゃいましたよ…


     最後のChapterでは、著者の提言として支出税構想が語られています。租税法の本では「消費型所得概念は『所得』の概念に整合しない」と切り捨てられているのですが、著者の説明を読んでいる内に今まで疑いもせずそんなもんかと思っていた所得の概念という根底が自分の中で揺らぎ始めました。(ま、私が不勉強なだけで、経済学の世界では消費型所得概念は広い支持を集めているそうです…)

     経済学者である著者のアプローチから、税金についてまた違った側面を知ることが出来ました。非常に勉強になったと同時に、以前よりも税について勉強するのが面白くなってきました。


     最後に一つだけクレームを。
     本書は『「超」納税法』の続編的な位置づけなのですが、『「超」納税法』というタイトルだったので、読むのを後回しにしちゃいました。両書とも税金と税制についての本なんだからもうちょっと分かりやすいタイトルにして欲しかったです。

  • 「超」シリーズで有名な著者による『「超」税金学講座』。
    知っているようで意外と知られていない消費税の仕組みを非常に分かりやすく説き起こし、日本の消費税の問題点、さらに発展させて日本における税制の矛盾点や問題点を指摘しています。私も税務の実務経験あるので益税の発生メカニズムは認識してましたが、そこまで色々な問題を引き起こすとまで発展して考えませんでした。現実的にすぐ実行可能かどうかは別として、一考に価する問題提起が溢れていますので一読の価値ありです。

  • 第一章 益税問題。消費税を上げるとこの問題はさらに深刻。このへんの仕組みの問題の検討も必要だな

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    迫り来る大増税時代を前に、我が国の税制について考えたことがおありだろうか?たとえば消費税の仕組みとは?その構造的な欠陥とは?構造改革が叫ばれながら、改革らしい改革が行われず、税制改革を主導すべき基本理念さえ明確でない日本の現実。現状では企業のIT化にも対応できない。経済を活性化させる、あるべき税制改革構想を、当代切っての論客が説く。


    消費税のことかとおもったら、税金全般のお話でした。。。
    ただ、よく分らないような方にもわかりやすい説明で、税金の勉強になりますよ!!!

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著者プロフィール

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業。64年大蔵省入省。72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2017年9月より早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問。専攻はファイナンス理論、日本経済論。ベストセラー多数。Twitterアカウント:@yukionoguchi10

「2023年 『「超」整理手帳 スケジュール・シート スタンダード2024』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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