- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101261737
作品紹介・あらすじ
城をひとつ、お取りすればよろしいか──。小田原城に現れた男は不敵にも言い放った。ある時は馬商人、ある時は旅の僧に姿をやつし、敵中深く潜入する。人の心を操るという兵法書『孟徳新書』の「入込」の術で、相手を分断。機を見て一気に城を奪取する。曰く「敵を攻めるのではない。敵の心を攻めるのだ」。江戸城攻略をはじめ、北条五代を支えた謎の軍師一族を名手が初めて描き出す傑作。
感想・レビュー・書評
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北条家に仕えた謎多き軍師大藤家をベースに関東一円を統べた北条家の栄枯盛衰を連作短編の流れで描く作品。大藤家は「入込」と呼ばれる術(敵の内部に侵入しやり込め内部から瓦解させる手法)を武器に城をとっていく。その様はいわゆるスパイものの読み口でく読みやすい。この手のストーリーにありがちな誰が化けているか分からない、ということは無いがどのようにして大将を取り込んでいくかで読ませるので面白い。気になった所として相手方がコロッと騙されすぎでは?と感じる場面も。北条家の物語は詳しく知らなかったので中々に楽しかった。
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少し前に読んだ同じ時代の、同じ人物を取り巻く話を別の角度からアプローチした物語だ。
フィクションではあるが別の作者が書いた作品を読むと、面白さの深みが増す感じだ。
この様な読み方も良いと思った。
歴史物をいくつか読んでいくと人間物語であり、伝えられている程に単純な話では無いと思ってくる。
面白い。 -
簡単に説明すると歴史小説×スパイ小説。
まず書き出しの「城をひとつ、お取りすればよろしいか」の言葉だけで、カッコいいたらありゃしない!
城攻めというのは本来落とされないように厳重に作られ、敵の装備や食料などの準備も万端なところを攻めるわけなので、長期戦になりがち。
そのため攻め手にとってもかなりリスクの伴う戦いなのだけど、それをこともなげにこう言い切ってしまう。それだけで先のしびれるものがあるし、先の展開にワクワクしてしまいました。
関東を治めた北条五代。彼らに陰から使えた大藤一族を描く連作短編。時の武将たちの欲や心理のスキを突いた鮮やかな手法と展開の数々! いかに敵を惑わし分断するか、心理戦や頭脳戦に引き込まれます。
それでいて伊東潤さんらしい歴史小説ならではの悲哀も、作品に深みを与えます。どれだけカリスマ性があっても、立派な理念があっても、それが時代の趨勢と合わなければ消えゆくしかない厳しい戦国の時代。
そうした悲哀を描きつつも、一方でその先に広がる新たな人生の広がりも鮮やかに力強く描かれていて、今まで読んできた戦国時代を舞台にした伊東潤さんの作品の中でも少し違った感慨が残る、爽やかな作品でした。 -
20220219
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後北条氏や関東公方が描かれた東国の話は初めてで、興味深く読んだ。東国の城がたくさん出てきたが、いつか訪ねてみたい。
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講談社決戦シリーズで伊東先生を知り、いろいろ読み始めました。「城をひとつ」もそのひとつ。
後北条氏については知らない事が多いので、その動向や、主人公である大藤一族の活躍を新鮮に楽しめました。
特に、関東公方や里見氏や上杉氏の動向などをメインに描かれた小説は、少ないのではないかと。
どの攻城戦も同じような展開がなく、楽しめました。
伊東先生の作品、いろいろ読んでみます。 -
後北条氏五代に仕え、‘入込’の調略を担った大藤氏一族を扱った小説。信基から曾孫の直信まで、連綿と続く陰の仕事人にスポットを当てており大変渋い。
難事難局に駆り出されては鮮やかな手際で事に当たる。まさに名人芸!
やはり当代無双・足利義明との駆け引きに手に汗握る。また、秀信と越後の龍・上杉輝虎の応酬では軍神を完璧に手玉に取る模様に心躍る。…というよりも思った以上に「上杉謙信」について私自身が無知であったことに気付かされた。
次は謙信を扱ったものを読んでみたい。
これは伊東潤氏の作風なのか、この『城をひとつ』の特徴なのか残念ながら語れないのだが、人物の人間味というか呼吸・溜息まで伝わってくるような文章であると感じました。
短編ながら土方雄久の苦労振りや足利晴氏のどうしようも無さが、まるで知り合いの話のようによく伝わります。
個人的に弓を得意とする人が好きなので横井神助が妙に印象に残りました。
1刷
2021.2.2
2021.2.3 追記