明治天皇という人 (新潮文庫 ま 35-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (692ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101287331

作品紹介・あらすじ

明治天皇の声がきこえない……宮内省編修の『明治天皇紀』など公式文書をもとに書かれた従来の伝記に不満を抱いた著者は、侍従の回想や元勲たちの証言、大正時代の雑誌付録など膨大な資料を渉猟し、わずかに残された肉声からその実像に迫った。西郷・乃木に親昵し、日露戦争を嫌悪する――明治天皇の人間性を探り、明治という時代の重みと近代日本の成立ちを捉え直した渾身の評伝。

感想・レビュー・書評

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  • 明治という時代史は多く書かれるが、明治天皇個人については語られることが少なく、遠い存在の人のように思われがち。しかし、瞬間湯沸かしのごとく怒り、嫌い、頼り、そして年齢とともに弱気になり、拗ねる人としての存在を浮き彫りにしてくれた大著。西郷・大久保・岩倉を頼り、その後は当初はぎくしゃくしていた伊藤を頼ったが、大隈・陸奥・黒田らを嫌ったとのこと。西郷の病気を思いやり、桂太郎の愛人のことを「美人か?」と聞いたり、諸葛孔明・楠正成が好きで、南朝正閏論の立場を天皇自身が選んだ!西郷の銅像を許可したのもこの人。203高地攻略に苦労する乃木更迭論に対して「乃木を替えると、彼は死ぬぞ」と語ったとは、忠臣・乃木との深い関係も感動的なほど。血と肉を持った人であることが身に染みる。10万首にも及ぶ和歌は日本文化の体現者でもあったことを示している。北一輝が「国民国家を目指してが、天皇制国家に変質している!」と明治時代に警鐘を鳴らしていたとの記述があるのは全くの驚き。
    岡倉天心の「茶の本」の言葉が面白い。「彼らは日本が平和な文芸にふけていたころは野蛮国と見なしていた。しかし日本が満州の戦場に大殺戮行動をおこしてからは文明国と呼んでいる」

  • なかなか読み通すのが難しいほどの厚さになってる。ただ、これを読んどくとほかの歴史小説もより楽しめるかなと思う。

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著者プロフィール

松本健一(まつもと・けんいち)
1946年群馬県生まれ。東京大学経済学部卒業。
現在、麗澤大学教授。評論・評伝・小説など多方面で活躍中。
2011年3月11日におきた東日本大震災のときの内閣官房参与として、
『復興ビジョン(案)』を菅直人首相(当時)に提出。
著書に『白旗伝説』『北一輝論』(以上、講談社学術文庫)、
『近代アジア精神史の試み』(岩波現代文庫、アジア太平洋賞受賞)、
『開国・維新』(中央公論新社)、『砂の文明・石の文明・泥の文明』(PHP新書)、
『評伝 北一輝』(全五巻、岩波書店、毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞受賞)、
『畏るべき昭和天皇』(新潮文庫)、『天国はいらない ふるさとがほしい』(人間と歴史社)、
『海岸線の歴史』(ミシマ社)など多数ある。

「2012年 『海岸線は語る 東日本大震災のあとで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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