- Amazon.co.jp ・本 (506ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101288147
作品紹介・あらすじ
パリ警視庁特別医務室に勤務する精神科医のラセーグは、犯罪者や保護された者を診断する毎日。折しもパリでは万国博覧会が開催され、にぎわうが、見物客の女性が行方不明となる事件が相次ぐ。そんな中、ひどく怯える日本人少女を面接し、彼女の生い立ちに興味をもつ。一方でラセーグは、見知らぬ貴婦人にストーカー行為を受け、困っていた。執拗な誘いに負けて、彼女の屋敷を訪ねるが-。
感想・レビュー・書評
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ミステリー仕掛けの恋愛小説というべきでしょうね。
一応ミステリーのジャンルに入るのですが、少女誘拐事件も、ラセーグが受ける貴婦人からのストーカー行為も背景として用いられていると思います。一番の主題はやはりラセーグと音奴の恋愛だと感じます。
音奴が良いですね。万博を機にパリ公演に来た旅芸人一座がだまされて、次の渡航費用として身売りされたのが音奴。小間使いとして売られたものの、その先では・・・。というわけで逃げ出しさまよう所をラセーグに助けられる。更にラセーグの下宿の女主人や他の下宿人たちの保護を受け、一人異国で暮らすことになるのですが、とてもけなげで可憐です。
大きな波は無いのですが、帚木さんらしく、丁寧にヒューマニスティックに描かれた作品でした。
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帚木蓬生の文章からは、いつもセピア色の印象を受ける。鮮やかさや鋭さではなく、優しいふわりとした温かみを帯びて物語が進み、突然話は鋭利な側面を見せ、そしてまたセピア色へ還っていく。おそらく下巻からサスペンス色濃い展開になるのだろう。上巻はいつものようにゆったりと、穏やかに流れて行った。この物語がいつ牙をむき始めるのか、楽しみである。
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セピア色のパリ
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2000.01.01
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まず舞台がいいですね~。1900年のパリ。万国博覧会が開かれ、日本からも大道芸などが展示され日本ブームに沸いているパリ。
主人公はパリ警視庁勤務の精神科医で、保護や逮捕され、精神に問題があるかどうか診断をくだす仕事をしている。
今でこそ精神病も容認されているし、医療もかなり進んできています。1900年当時の精神病の判断や観念がわかり興味深く読めました。
それに精神病と間違われ保護された日本人少女の運命を、観光客の婦人を狙う猟奇殺人と絡め、読み応え満点!
これだけでも面白いのに、主人公をつけ回すストーカーまで登場。私には、このストーカー事件は消化不良ですけどね・・・。
日本の骨董のことなんかにも触れ勉強にもなりました(笑)
帚木作品はボーダー小説に近く、時にはミステリではないこともあるのですが、本作品はちょっと長いものの、ミステリとしても楽しめる作品に仕上がっています。 -
2012.3.4(日)¥250。
2013.7.19(金)。 -
レビュー
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04.2.8
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2008/9/8開始
2008/9/23読了 -
パリ警視庁の特別医務室の診断医、という主人公のステータスがおもしろい。治療はしないが、年間2千人もの患者を診断する。そんな男が、パリの娼館に通ったり、日本趣味で刀の鍔を集めていたり、はたまた貴婦人にストーキングされていたりする。この男が物語の最後、どうなっているのか、嫌が応でも興味をかきたてられる。<br>
友人で警部のエドモン、恩師のガルニエ先生、日本人商人の林、宿屋のおかみのイヴォンヌ、アパルトマンの仲間たち、娼妓のマリアンヌ、それに音奴。彼らが彩るパリが、とても豊かなものに映った。