薔薇窓 上巻 (新潮文庫 は 7-14)

著者 :
  • 新潮社
3.60
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本棚登録 : 169
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (506ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101288147

作品紹介・あらすじ

パリ警視庁特別医務室に勤務する精神科医のラセーグは、犯罪者や保護された者を診断する毎日。折しもパリでは万国博覧会が開催され、にぎわうが、見物客の女性が行方不明となる事件が相次ぐ。そんな中、ひどく怯える日本人少女を面接し、彼女の生い立ちに興味をもつ。一方でラセーグは、見知らぬ貴婦人にストーカー行為を受け、困っていた。執拗な誘いに負けて、彼女の屋敷を訪ねるが-。

感想・レビュー・書評

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  • ミステリー仕掛けの恋愛小説というべきでしょうね。
    一応ミステリーのジャンルに入るのですが、少女誘拐事件も、ラセーグが受ける貴婦人からのストーカー行為も背景として用いられていると思います。一番の主題はやはりラセーグと音奴の恋愛だと感じます。
    音奴が良いですね。万博を機にパリ公演に来た旅芸人一座がだまされて、次の渡航費用として身売りされたのが音奴。小間使いとして売られたものの、その先では・・・。というわけで逃げ出しさまよう所をラセーグに助けられる。更にラセーグの下宿の女主人や他の下宿人たちの保護を受け、一人異国で暮らすことになるのですが、とてもけなげで可憐です。
    大きな波は無いのですが、帚木さんらしく、丁寧にヒューマニスティックに描かれた作品でした。

  • 帚木蓬生の文章からは、いつもセピア色の印象を受ける。鮮やかさや鋭さではなく、優しいふわりとした温かみを帯びて物語が進み、突然話は鋭利な側面を見せ、そしてまたセピア色へ還っていく。おそらく下巻からサスペンス色濃い展開になるのだろう。上巻はいつものようにゆったりと、穏やかに流れて行った。この物語がいつ牙をむき始めるのか、楽しみである。

  • セピア色のパリ

  • 2000.01.01

  • まず舞台がいいですね~。1900年のパリ。万国博覧会が開かれ、日本からも大道芸などが展示され日本ブームに沸いているパリ。
    主人公はパリ警視庁勤務の精神科医で、保護や逮捕され、精神に問題があるかどうか診断をくだす仕事をしている。
    今でこそ精神病も容認されているし、医療もかなり進んできています。1900年当時の精神病の判断や観念がわかり興味深く読めました。
    それに精神病と間違われ保護された日本人少女の運命を、観光客の婦人を狙う猟奇殺人と絡め、読み応え満点!
    これだけでも面白いのに、主人公をつけ回すストーカーまで登場。私には、このストーカー事件は消化不良ですけどね・・・。
    日本の骨董のことなんかにも触れ勉強にもなりました(笑)
    帚木作品はボーダー小説に近く、時にはミステリではないこともあるのですが、本作品はちょっと長いものの、ミステリとしても楽しめる作品に仕上がっています。

  • 2012.3.4(日)¥250。
    2013.7.19(金)。

  • レビュー

  • 04.2.8

  • 2008/9/8開始
    2008/9/23読了

  •  パリ警視庁の特別医務室の診断医、という主人公のステータスがおもしろい。治療はしないが、年間2千人もの患者を診断する。そんな男が、パリの娼館に通ったり、日本趣味で刀の鍔を集めていたり、はたまた貴婦人にストーキングされていたりする。この男が物語の最後、どうなっているのか、嫌が応でも興味をかきたてられる。<br>
     友人で警部のエドモン、恩師のガルニエ先生、日本人商人の林、宿屋のおかみのイヴォンヌ、アパルトマンの仲間たち、娼妓のマリアンヌ、それに音奴。彼らが彩るパリが、とても豊かなものに映った。

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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