- Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101288208
感想・レビュー・書評
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通訳書記として居合わせたドミニコ会修道士が書いた手稿を追う主人公。
ローマカトリック教会の弾圧に遭いながらも信仰を捨てなかったカタリ派を書いた手稿は泣ける -
基督教における正統と異端、特にカタリ派に関する類書を何冊か読んでいた為、興味深く読了することができた。但しミステリとしては展開も結末もお粗末。シリーズ物かと錯覚する程、人物の書きこみが不足している。何の為に出て来たかわからない人物も多い。それがよりリアルだと言われれば、それまでだが。百頁余にも及ぶ作中大作「マルテの手稿」に感情移入できるかが本書を楽しむ上での分水嶺。現在の視点で過去を糾弾するのはアンフェア―なやり方であるが、現ローマ教皇庁が中世の異端審問をどのように総括したのかについて少し調べたくなった。
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話ができすぎていて、スリルに欠ける部分がある。
ただ、カタリ派というあまり馴染みのないキリスト教の一派に対する中世キリスト教の異端審問を題材にして、権威、権力と個人の信仰、内面という問題をうまく扱っていて、なかなか勉強させられる。
あまり馴染みのないテーマをわかりやすく、興味をひきだすように描きだす技術はすごい。
カタリ派が日本人の宗教観に近いのか、カタリ派を日本人の宗教観に合わせて解釈しているのかよくわからないが、カタリ派の独特な考え方がなかなか興味深い。
前回読んだ、『深い河』の大津の考え方を思い出したりもした。
ただ、カタリ派に対する評価と、ローマ教会に対する批判的態度がいずれも一面的な気がしないでもない。 -
★2.5だが友人の顔を立てておまけ。
日本の小説に非常にありがちなエンターテインメントへのこだわり不足の典型例。
こういった点がハリウッドをはじめとした(良くも悪くも)娯楽大国アメリカとの決定的、そして埋めがたい差という気がしてならない。
作家はカタリ派の想いの代弁に力点を置いていたのかもしれなし、またそこに日本の特徴があると見るべきかもしれないが、それは中途半端な特徴に過ぎないことを皆自覚すべきかと思う。
返す返す、題材・途中までの展開は面白いのに本当に惜しい。 -
レビュー
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上巻から徐々に謎に迫り、そしていよいよすべての手稿が発見される。ここに出てくることっぽいことは、おそらく本当にあったのだろう。たくさんの人々がキリスト教の王道から違う(解釈が違う)というだけで、残虐に葬り去られてきた。普段は考えないが、信仰とはなんだろうかと考える。どう考えても、自分はこの小説に出てきた異端の考えの方が共感できる。そうなると、火あぶりかー、いやでも王道派のふりをするかな、しにたくないし。そう考えるとやっぱり、信仰を貫いて火刑に処される気持ちもわからず、どっちもやだなーと、思ってしまう自分は日本人っぽいといえばそうかと。物語的にはまーまー、ちょっと中だるみはあった。