音楽は自由にする (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101291222

作品紹介・あらすじ

「あまり気が進まないけれど」と前置きしつつ、日本が誇る世界的音楽家は語り始めた。伝説的な編集者である父の記憶。ピアノとの出合い。幼稚園での初めての作曲。高校での学生運動。YMOの狂騒。『ラストエンペラー』での苦闘と栄光。同時多発テロの衝撃。そして辿りついた新しい音楽――。華やかさと裏腹の激動の半生と、いつも響いていた音楽への想いを自らの言葉で克明に語った初の自伝。

感想・レビュー・書評

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  • 幼稚園で毎週のようにピアノを弾かされた経験と音楽好きの叔父の影響が最初の音楽体験。
    グランドピアノのある資産家でピアノの英才教育を受けたというイメージでしたがそうではなく小学校に入ってからアップライトでピアノを習っていたというのは意外でした。

    中学を卒業して、新宿高校、東京芸大と進まれたころの話は私よりは年代は上ですが、私も芸術学科(美術です)にいたので似たような話もたくさんあり、読んでらした本、聴かれた音楽などもとても共感し、面白く読みました。
    私も美術学科ですが、坂本さんも音楽科の学生より美術学科の学生と話が合い、美術学科に入り浸っていたというのはよくわかります。私も高校の時ピアノの先生に、音大受験を勧められたので音楽科の雰囲気も想像できます。音楽科はエリートって感じで、美術科はとにかく汚い感じですね(笑)。


    YMO時代の話はちょうど私が中学、高校の頃なので懐かしくて涙が出そうでした。

    衣装は幸宏さんが担当だったこと、坂本さんはいつもジーパンにゴム草履だったなんて今まで知りませんでした。

    YMOの曲は私は全部レコードで買っていたので、今はプレーヤーを処分してしまったので聴けないのですが「千のナイフ」は教授のソロアルバムだったのですね。大人になってから知り合った猛烈な教授ファンの友人がLINEの待ち受けを「千のナイフ」にしている訳がわかりました。

    毎週聴いていたFMラジオ番組サウンドストリート(サンスト)のことも書かれていて、懐かしすぎて本当に泣きそうになりました。火曜日のパーソナリティでした。(月曜は佐野元春さん、水曜は中島みゆきさん、木金は渋谷陽一さんで全曜日聴いていたのですが)
    あの番組には一度だけ坂本さんが作った曲のデモテープのタイトル募集に応募の葉書を書いたことがあります。もちろん落選しましたが、タイトルは草野心平の詩のタイトルからとられた「両眼微笑」に決まったのはよく覚えています。

    とても、懐かしい青春時代の思い出を思い出す本でした。
    脚注はすべて懐かしい名前でいっぱいでした。


    でも、この本、坂本さんがご健在のうちに拝読したかったです。もういらっしゃらないなんて、と思うと読んでいて心に穴があきそうでした。


    坂本さんに捧げる短歌を作りました。
    (読売歌壇に応募しましたが没でした)

    ○憧れた坂本龍一星になるおやすみなさい「戦メリ」とともに

    ○憧れた坂本龍一星になる忘れられないメロディー遺して

  • 3月28日に旅立たれた教授。
    闘病されていることは存じていたのでニュースを聞いてもショックはなかったが、やはりとても寂しく感じた。
    「世界のサカモト」
    間違いなく、時代を造った偉人だ。

    圧倒的に革新的な音楽を造りつづけた天才が、歩んできた人生をたんたんと語った自伝。
    クールに見えて、けっこう暴れん坊だったんだな、と笑、興味深く思いながら読んだ。

    音楽は自由にする。
    あなたを、魂を、そして世界を。

    好きな曲はたくさんあるけど、最近最もはまっている曲は↓
    ♪Rain(I want a divorce)/坂本龍一(1988)

  • 坂本龍一さんの自伝。というかインタビュー形式の対談でご自身が語られた内容が本になったもの。記憶のある幼少時のことから語られている。坂本さんが自然に語っておられる様に感じてしまいます。しみじみ。

    語られたことがほぼ直接文章になっているので、様々な言葉に対して注釈が付いている。私も時々注釈を見て、そういうことなのか、と頷いていました。

    1950年代からの日本の情景もよく見えてきます。私は年下なので完全に同時代を生きたとは言えないけれど、かなりの部分が重なっている。特に一定期間、同じ地域で暮らしていたことがあり、当時の坂本さんの社会の見方、ご感想・ご意見に共感を覚えるところが数多くありました。

    作品の後半でさりげなく語っておられるけど、坂本さん自身が語られた、ご自身の創作活動について一番よく表現しているところが、「ずっと考えていることなんですが、自分ができてしまうことと、本当にやりたいことというのが、どうも一致しない場合が多いんです。できてしまうから作っているのか、本当に作りたいから作っているのか、その境い目が、自分でもよくわからないんですね。」(p273)という部分、だと思います。

    やはり、坂本さんは天才なのだな、ということを思い知りました。

  • 坂本龍一『音楽は自由にする』新潮文庫。

    2023年3月28日に、71歳で亡くなった坂本龍一の自伝。

    「芸術は長く、人生は短し」 とは、坂本龍一が好んだ古代ギリシアの医学者ヒポクラテスの「箴言」の一節である。物事を極めるためには人生が如何に短いのか、短い人生で物事を極めるためには相応の努力が必要なのだろう。

    本作では、坂本龍一が音楽の世界に入る切っ掛けとなった幼少期の体験から様々な音楽家に傾倒していく過程や東京芸術大学の大学院を卒業し、YMO結成から世界的な音楽家として活躍するまでが語られる。

    読んでみると現代の若者と比べ、中学、高校時代の坂本龍一は、遥かに大人の思考を持っていたように感じる。今から40年前、50年前の中学生や高校生はそれが当たり前だったように思う。ゲームもスマホも無い時代には自らの経験や見聞、読書などで知識を得て、深く考えることが普通だった。それ所以、当時の若者たちは大人の思考を身に付けたのだろう。

    YMOがブームになったのは自分が高校生の頃である。お洒落に敏感な同級生たちは一様にモミアゲを剃り落としたテクノカットを真似ていた。当時の自分はWeather Reportを始めとするフュージョンやジャズを好んで聴いていたので、YMOには余り興味は無かった。

    自分にとって坂本龍一の音楽で馴染みがあるのは『戦場のメリークリスマス』『ラストエンペラー』に代表される映画音楽である。

    本体価格1,000円
    ★★★★★

  • 坂本龍一さんが雑誌の連載で2年近くに渡って語った自伝をまとめた一冊。

    坂本龍一さんと言えば「戦場のメリークリスマス」と「ラストエンペラー」くらいしか知りませんでしたが、随分と幅広く活動されていたんだなと驚きました。

    先進的で、過去にこだわらずどんどん新しいことをやってみる。何にも執着しない。

    音楽もクラシック、ロック、ポップスと様々にジャンル分けされてはいても、長い歴史の中で必ず潜在的に他のジャンルの影響を受けているわけだから、音楽家でも、そのジャンルの中だけで活動する人もいれば、複数のジャンルを渡り歩くように活動する人もいるんだな、と思いました。

    備忘として、自分の中で一番印象に残った部分を引用します。↓

    『表現というのは結局、他者が理解できる形、他者と共有できるような形でないと成立しないものです。
    だからどうしても、抽象化というか、共同化というか、そういう過程が必要になる。
    すると、個的な体験、痛みや喜びは抜け落ちていかざるを得ない。そこには絶対的な限界があり、どうにもならない損感がある。
    でも、そういう限界と引き換えに、まったく別の国、別の世界の人が一緒に同じように理解できる何かくの通路ができる。
    言語も、音楽も、文化も、そういうものなんじゃないかと思います。』(本作P.22より引用)

  • 完璧な「音楽機械」だった坂本龍一さん ひとりの人間となり、去った:朝日新聞デジタル(有料記事)
    https://www.asahi.com/articles/ASR43045PR42ULZU008.html

    坂本龍一が71歳で死去「芸術は長く、人生は短し」 - 音楽ナタリー
    https://natalie.mu/music/news/519258

    坂本龍一さん死去 デイヴィッド・シルヴィアンさんも追悼 80年代から数々のコラボレーション | TBS NEWS DIG
    https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/411906

    坂本龍一、亡くなる。 (2023/04/03) 渋谷陽一の「社長はつらいよ」 |音楽情報サイトrockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)
    https://rockinon.com/blog/shibuya/205847

    【追悼】坂本龍一 - TOWER RECORDS ONLINE
    https://tower.jp/article/feature_item/2023/04/02/0707

    坂本龍一 『音楽は自由にする』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/129122/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「坂本龍一のいなかった世界」を想像してみる|音楽っていいなぁ、を毎日に。| Webマガジン「ONTOMO」
      https://ontomo-...
      「坂本龍一のいなかった世界」を想像してみる|音楽っていいなぁ、を毎日に。| Webマガジン「ONTOMO」
      https://ontomo-mag.com/article/column/ryuichi-sakamoto-202304/
      2023/04/13
  • 今年の3月28日に亡くなった著者の自伝。
    一般のひとの2倍も3倍も生きていたと感じさせる濃密な人生。
    秀でている人はやはり、幼少期から違うと改めて思う。
    幼稚園時代から高校そして芸大へ。
    大学時代は、音楽科よりも美術科に足繁く通っていたとか。
    様々なエピソードが綴られ、なまじの小説よりも面白く、次から次へと目が離せない。
    様々な頼まれ仕事をこなしながら、ついにYMOの結成に。
    世界を股にかける彼の仕事ぶりには、圧倒されるばかり。
    率直に語られる彼の生きた証、早逝はあまりにも・・・

  • 今まで食べず嫌いだったのか、思っていたイメージとは多少違った坂本龍一さん。3月8日に逝去され、追悼と追いかけて自叙伝のこの本を手にする。
    特にデビューするまでの学生時代はまさに、私と同時代でダブルことも多く、興味深く読む。まずは、やはり多くの良い指導者に出会ったこと、その青春時代、学生運動真っただ中でデモにも参加しながらもジャズや文学に浸る。

    晩年坂本氏が政治に疑問を持ち戦争反対を叫んだのは、歳を召したからではなく、赤子の魂と若き青春にもどっただけです。生きる人の温もりや、自然と文明への畏敬の念を持ち続けた氏は、本当に大切なものは何かを常に問い続けておられます。

    私も60年続いている、落語とクラシック、若い時に心を動かされたもの、たとえ何であっても若い時に感動するものは大切しなければなりませんな・・。

  • 音楽は自由にする
    著 坂本龍一〜2023

    最近、いや親の影響もあって小さい頃からか。
    戦場のクリスマスを聴くのが日課になっている。
    いつ何度聞いても感情にゆるやかな起伏を与えてくれるこの曲がとても好きだ。
    そんな曲の作者である坂本龍一さんが亡くなってから間もない。

    今日本屋を回っている時ふとこの本が目に入った。
    本屋は自分が脳の片隅で需要を叫んでいるポイントを掬い上げてくれる。これだからやめられん。
    自分の日常の一部である曲を作曲した人が自分の歴史をどう見ているのか。読むのが楽しみ。

    1.音楽は自由にする
    ここでは坂本龍一さんの幼稚園児時代について語られた。
    元からピアノがうまかったわけでもなく、そして特別好きでもなく。将来の夢について聞かれた時は周りが適当な答えを出す中[ない]と自分を表現していたらしい。
    周りと溶け込む術として感情を歪ませて出力する普通の園児と違い(社交性や空気を読むってゆーのはこうやって育まれて行くんだろうな)自分の気持ちをそのまま出力できることは自分を持っていく上で重要なことだと思う。

    3.ビートルズ
    自分はドビュッシー(月の光)と坂本龍一(戦場のクリスマス)が本当に人生でずっと聞いていられると感じるくらい(まあまだ人生20余年しか生きてないんだからこれからのことなんて分からないが)好きなんだが、坂本龍一さんが影響された作家のなかにドビュッシーがいることには驚いた。9th和音にとにかくどハマりしたという話だったが、自分が2つの曲に共通して感じている(ものさみしさ)みたいなものはこの和音から来ているのかもしれない。

    4.自分は結構音楽が好きなんだ
    小学校まで続けていた音楽をきっぱりやめバスケ部に入った坂本龍一さん。
    半年ほど続けてやはり自分には何か足りないと気づき音楽へ。
    (人生で初めて自分から音楽をやりたいと感じたという。)
    ここで初めて、割と自分は音楽が好きなんだと、自分の気持ちに整理がついたらしい。
    こうやって実体験をもって自分の気持ちを確定させていく過程を中学校で修了できていたのは稀でいい経験をしているなと思った。
    かくいう自分はこの年になってなお
    [自分って結局何が好きなんだろう。何に支えられてるんだろう。]
    ってのを探す日々。

    そしてここでもドビュッシーの話が出てきた。
    もはや自分はドビュッシーの生まれ変わりなのではないかと本気で思うほどにはどハマりしたらしい。今後の音楽活動にどうドビュッシーが関わってくるのか楽しみ。

    5.特別な時間のはじまり
    ゆくゆくは多くの人と比べ抜きん出た成績を残す学生。
    そんな学生ってのは自分たちから惹かれあって仲良くなるものなんだろうか。少なくとも坂本龍一さんはそうだったみたいだ。ジャンルは違えど人の上(いや上じゃなくて人から多くの共感を得られる人か)に立つ人ってのはお互いの魅力に気づきあえるらしい。
    だとしたら俺が高校から未だに付き合いがある[アイツら]には是非そういった人間になってもらいたいものだ。自分がそういう人間であることの証明になるからな。

    まあでもとにかく、育った環境の良し悪しってのは外的要因で決まるよりも内的要因がでかいってことだな。いくら環境が良くても、そして悪くても、自分が本当に恋(男友人として)できる人間に会うことが1番のクリティカルポイントってことだ

    6.バラ色の人生
    合唱部一つ上の先輩がかっこよくて合唱部が楽しかった。今思えば一つの恋心でしょうね。
    って文があったんだけど。とても共感。
    憧れと恋心って(まあ超絶個人的な意見だけど)かなり似ているところがあって、その感情の境目ってのは結局のところ相手が男なのか女なのかの違いだけだと思うんだけど。
    だから俺があいつはすげぇ。あいつとの関係は大事にしたい。って思うやつがもし女性だったら俺はもうまっしぐらでアピールしてただろうなって思う。

    坂本龍一さんは高校1年の時すでに芸大に受かるレベルの作曲をしていたらしく、その実力を認められたため遊びが加速してまさに[バラ色の人生]だったらしい。笑
    もちろん今までの投資があってこその猶予期間であることに間違いはないのだが。
    自分は高校までに貯めたその預金をアニメとキングダムハーツに費やしたわけだ。

    7.67、68、69
    学生が主体のストライキか。
    ここ数年。いや自分が生まれてからはこれっぽちも聞かなくなったなそんな話。
    ってか高校生で哲学者とか読んでる環境が今となっては信じられない。
    まあ30年もすれば高校生でスクールアイドルフェスティバルやってるなんて信じられないなんて言われることになるんだろうから一概には言えないが。
    でも違いと言ったらやっぱ坂本龍一さん世代の学生の方が社会に関心があったってことだよな。
    昔の学生が賞賛されることがあっても今の学生が将来賞賛されるようなことは[絶対に]ないだろう。
    ただぬるま湯で生活してる人間、制御された刺激しか受けられない人間はやはり活力に乏しい気がしてならない。

    まあ当時の社会制度が整って無さすぎて、当時の学生が頑張ってくれたから今の学生はそんなストライキまで起こして改善して欲しいようなことないよ〜状態なのはわからないでもないが。

    8.2つの流れの交わるところ
    難しい、、、
    著名な音楽家がどの文化を取り入れて、、その音楽家から影響を受けた自分なわけだからルーツは同じところに帰着するよねみたいなことを書いてた。
    ここは音楽に人生で殆ど触れてこなかった自分からしたら理解しづらいところだったな〜。
    誰がどんな音楽を提供してるのかが分からないから[〜で有名な]って言われてもわからない。

    9.日比谷音のこと、武満さんのこと
    大学1年でこの顔は、、、ちょっと老けてないか?!
    それとも今の学生がガキっぽすぎるだけか。
    自分たちで好きな音楽家のライブに押しかけてビラ配り始めるなんて今考えたら(いや当時考えても)やっぱ普通じゃないなって思う。
    自分のやりたいこと、好きなことに学生の頃から全力で向かっていけるのは良いことだと思った。

    小さい頃からよく親父に勉強も良いけど全力で遊べ。って言われてたな。親父が言いたかったのは全力になれる時間を少しでも有意義に過ごして欲しいっていうことだったのかな〜
    って今ふと思った。

    10.民族音楽、電子音楽、そして結婚
    え、坂本龍一さんって大学3年で結婚して子供もできてんのか。んで離婚。
    計4度の結婚をしてるらしい。知らなかった、、
    どうやら西洋音楽は尻すぼみと読んでたらしく、電子音楽に興味があったみたい。
    バイトでバーで引くことができる人材なんてのはもう人より一個頭出てるよな。
    んでもってここで美輪明宏出てくるとは思わなかったわ笑
    美輪明宏さんの伴奏を代理でやってたことがあるらしい。

    この時代は日給5000円で割高か。
    どんどん経済が発展してるのを感じるわ。
    今は日給1万は絶対欲しいもんね。

    11.舞台に上がり旅に出る
    ひょんな出会いから半年その人と旅に出るとか、大学3年間ほったらかしにするとか、居候とか。
    同じくらいの年なのにここまで違うもんなのかって思った。
    活力があるというか、行動に主体性があるというか。。。
    とにかく周りに合わせて自分の色をつけてやろうって気が全く無いのが羨ましいなって思った。
    周りに合わせて趣味もガラガラ変わって。
    そんな変わって行く中に一つでも芯があれば良いのだけど、(坂本龍一さんには音楽、特に作曲って部分でいくら破天荒していても芯が通っていた)俺にはそれがイマイチまだわからん。
    坂本龍一さんが中学の時に体験した
    [俺って思ったより音楽好きなんだな]
    って感情を俺も早くどこかで味わいたい。まあ目星はもうついてるんだが。

    12.同じ言葉を持つ人たち
    なるほど大瀧詠一さんって方から始まったのか。
    坂本龍一さんは今までドビュッシーとか弦楽四重奏曲なんかの言ってしまえば格式高い音楽?
    を音楽の形として見てきたわけだけど、そういった音楽も素晴らしい一方でポップスにもその片鱗があり、またそのルーツが西洋音楽では無いことも知ったわけだ。
    より多くの大衆を巻き込んでいけるこのポップスという領域に興味が湧いた(坂本龍一が世に出るきっかけになった)瞬間がここだったわけだな。

    13.カウントダウン
    YMO結成直前の話をここではしている。
    不敬ながら自分、YMOを知らないのだ。
    なんかみなさんご存知YMOみたいな感じでこの本書かれてるけど今の若者でYMOって言ってピンとくる人どのくらいいるん?
    そんなんで坂本龍一さん好きとか言ってんなよ!みたいな意見出てきそうだけど好きなのはあくまで[戦場のクリスマス]で作曲家のほうじゃないんだ(もちろんこの本よんでどんどん坂本龍一さんについて知りたくなってる自分がいるのだが。)

    14.YMOはじまる
    幸宏と細野って人の3人で結成されたらしい。
    どうやら結成当時のこたつ会議ってのがめちゃくちゃに有名らしいのだが。俺は知らない。
    ファーストアルバムは全然売れないし周囲の感想もバットな物が多かったらしいが本人達は
    [自分達は新しいものを世に出している]
    って実感があって次への足掛かりにする気しかなかったという。
    自分達のポテンシャルを信じてやまないその姿勢が大事だなと思った。

    15.YMO世界へ
    何事も片足を突っ込んでいつでも逃げれる体制をとっていた坂本龍一さんがこの時のワールドツアーで自分の曲を使って踊っているカップルを見て確信したらしい
    [これでいいんだ]
    と。
    自分の生きて行く道ってここにあったんだなっていうのをここで確信したんだな。幼少期から自分がなりたいもの、やりたいことに疑問を持ち続けていた人がこうやって自分の経験から答えを導き出すってのが良い。自分もそんな経験をしたい。

    16.反YMO
    自分のやりたいことをやり切ったからこのバンドはおしまい。
    そうやって割り切れるのもまた凄いと思った。
    もう次のステージが頭にはあるんだなって。
    ワールドツアーやって帰国して有名になって。
    そんなところまで来ても尚自分の表現したい色に磨きをかけていこうって精神にまだ余力があるのが凄い。どこを見ているんだろうかこの人は。
    それとも成長する自分が楽しいのか。

    17.旅立ちのとき
    YMOの結成から数年でついに出てくるんだな
    [戦場のメリークリスマス]
    初めての映画音楽だったらしい。しかも坂本龍一さん俳優としてこの映画に出演しているんだとか。まじか。んー、見てみたいんだけど自分が戦メリ聴いたときの自分だけのイメージが崩れちゃう気がして嫌なんだよな。もうちょっと後にみよ。
    なんかビートたけしも出てるらしい笑

    YMOも解散(5年で解散なんだから凄い)して次のステージへ。って感じ。

    18.音楽図鑑
    38歳で週6日も徹夜?女の子と遊び?
    坂本龍一さんって元気な人だったんやな〜笑
    あと矢野さんって方はすいません知らないんだけど、この人と結婚したらしい。
    活動的な男って魅力的に映るよな〜。
    ただ呆けてる感じじゃなくてしっかり仕事にも繋がるような学びを得ているのが凄い。

    19.北京へ
    ラストエンペラーって映画が当時話題になっていたらしいんだけど、どうやらその作品にも坂本龍一さんは出演したらしい。
    この人音楽活動の傍で俳優もこなしていたんだろうか。
    音楽も担当しているらしい。
    聴いて見たけどこれもやはり知らない曲。
    映画も見てみようか。、、

    20.今すぐ音楽を作れ
    イタリアで映画を作る悦びを得たって書いている。
    徹夜続きで無理難題を押し付けられた時の爆発力というか集中力?活力みたいなものが這い上がって行く人には必要不可欠だと感じた。
    またここに来てなお、人脈を賢く使う面も見れた。
    なにか大きい仕事をする時はそれに見合うパーティが必要だ。自分に足りないパラメーターを遺憾なく発揮してくれる人材を頭に何人かストックしていることが既に凄い。
    やはり人脈は大切だと感じた。

    しかしあれだな。自分が生きてきた時代とは別の時代(もはや情報が無さすぎて他の星で起きていたことのように感じてしまうんだが)で起こっていたことを読み進めるのは少しばかり疲れるな。
    いくら自分の興味ある人とはいえ知らない単語や人物が羅列されているのはきついものがある。
    現代人(特に今の20代)が過去について知ろうとするのはかなりの活力が必要になるなと感じた。
    好きじゃ無いとやってられない。

    21.突然の贈り物
    ラストエンペラーに採用された曲は提供した44曲中(2週間で44曲作るってどーゆーことなの?笑もう逆に恐ろしいんだけど)半分くらいしか使われていなくて怒りと驚きで心臓が止まりそうになったとのこと。確かに自分の仕事がその程度と見られるのはショックだったに違いない。
    この映画、なんとカンヌ国際映画祭で9冠を総なめするという異例の映画になったらしい。
    実話?を元にしているらしいんだけど、、、え見てみよっかな。

    学生時代から仲が良く仕事もずっと一緒にやってきた方が長期休暇中に亡くなってしまった話もここで言っていた。
    坂本龍一さんはこの本で何度も述べているけど
    [いかに自分がその人のことを知らないか]
    を痛感するらしい。
    まだ自分は身近な人を亡くしたことが無いから共感できる部分は無いんだけど、無くして初めてわかるってのと一緒でこういう経験をして人はまた人との関わり方をより一層大事にしていくのかなと思った

    22.ニューヨークへ
    坂本龍一さんってとことん破天荒というか、活動的というか。それをまたここで感じた。
    一方でやはり母国に骨を埋めたいってところも書いてあった。外国人は狩猟するために獲物と一緒に移住して行くのに対し日本は行っても遠洋漁業で絶対自分の家に帰るもんだと。
    活力と行動力に長けた人でも最後は戻りたいって気持ちがあるのか。

    23ハートビート
    湾岸戦争の時にアメリカにいたらしい。
    黄色いリボン家の前につけるのが慣習、みたい。
    戦争を間接的にでも経験した音楽家が作り出す音色ってどんなんなんやろ。ちょっと聴いてみよ[ハートビート]

    この時期、1992年とか。YMOが周りの推しがあって[再生]したらしいんだけど。
    3人とも意見の食い違いがあってライブも曲もあまり良いものは作れなかったんだそう。
    機が熟していなかったと。

    24世紀の終わり
    ルワンダ紛争をテレビで見て衝撃を受けたことがここに綴られている。
    ここまで読んで一つ思ったのが、坂本龍一さんは音楽を作って行くための感情の起伏みたいなものをどこかで求めているように見えるということ。
    活力的に見えるのも、根本には音楽を作って行く上で自分の中に起伏を作ろうとしていたんじゃ無いかって思う。

    坂本龍一さんにとって戦争や紛争ってのはその役割を果たすのに十分なスパイスだったんだろうな。

    25.世界が変わった日
    アメリカ同時多発テロの年。2001年9月11日[9.11]
    この時ニューヨークにいた坂本龍一さんの気が気でない状態がここでは綴られている。
    アタッシュケース型核爆弾の行方がわからないなんて情報が出たらそりゃ怖いよな。

    今だっていつこんなテロが起きるかわからない。
    優先順位が一気にしてひっくり返るこのポイントを経験した人の文を読むのはなんだかんだでこの本が初めてだ。
    ぬるま湯に浸ってしまっている自分がそういった状況に陥った時どういった行動ができるのか。今のうちから少しでも意識して行動することが大切なのかもしれない。

    26.新しい時代の仕事
    音楽の媒体がCDからダウンロードコンテンツへと移りゆく時代。音楽が消費されることはあってもそこに支払いが行われることがなくなって行く時代。そこに坂本龍一さんも焦りというか何か遺憾を感じていたとここには綴られている。
    manga rawとか違法アップロードサイトは今(2023年現在)も流行しているわけだから、それこそ漫画家はこの問題に今向き合っていることを考えると、やっぱり坂本龍一さんって手が早いなって思った。
    YMOも映画音楽も、結局自分から始めたことなんて殆どなくて後ろ向きな人生なんですよって自分では述べているけど、そうやってリスクや時間を最小限に留めて作品に注力する姿勢も大事だと思った。

    27.ありのままの音楽
    歳をとったからこそまた二人と音楽ができるようになった。
    だとしたら年をとって良かったと思う。
    若いなんて全然良いものじゃ無いですよ。か。
    若さを十分すぎるくらい謳歌できれば自分もこんなセリフが本心から言えるようになるのかもしれない。
    どんな大人も若い頃は良かったって言うけど。
    過去ばかり見ているのってカッコ悪い。
    [そりゃ若い方が動けるし良いこともあるけどね、歳とったからできることだってたくさんあるんだ。重要なのは今を全力で楽しみこれから楽しくなっていくようなことにアンテナを貼り続けることだよ。]
    そうやって若い世代に言ってあげれるおじさんになりたい。

    グリーンランドに行った経験もここに記されていた。
    自然と人類の関係性について考えるきっかけになったらしい。
    人類がいかに自然の力から見れば取るに足らないものなのか。
    それが一眼でダイレクトに伝わる旅だったと。
    音楽の方向性もここから一気に見え方が変わったと。
    自分はまだ大自然を相手にしたことがないからわからないが。
    あれか、屋久島で見たあの風景が似たようなことなのかな。
    だとしたら自分にはまだ自然への畏怖みたいなものが足りない気がする。

    28.あとがき
    やはり直感で見上げてしまうような人っていうのは人との繋がりを大切にし感謝を忘れない人のことだなとあとがきからも感じた。
    人と人とのつながりのなんと膨大なエネルギーか。それを宇宙に届かない光のような、そんな果てしなく大きい視野で見ようとする坂本龍一さんの人との繋がりへの考え方が垣間見えた。

    [総評]
    20余年生きてきて人の半生を本で読んだのはこれが初めてだ。
    ちょうど興味のある曲を作曲している人の伝記が本屋に置かれていたからという偶発的で奇跡的にでもある出会いに感謝したい。また本屋はそう言った偶然をいとも簡単に手繰り寄せてくれるからまた不思議だ。
    自分が知っている坂本龍一さんは既に50を超えて落ち着きのある感じをイメージするわけだが。
    この本を読んで、そんなイメージとは正反対の人生を送ってきた人なんだと感じた。

    歳を肯定し、今を大切にし、これから面白くなることに全力でアンテナを張ること。

    この本、いや坂本龍一さんの生きがいからはこの部分を強く感じた。そんな本だった。

    3.8点

  • YMOリアルタイム世代ではないので、知らないことも多かった。影響を受けた音楽や映画について、たくさん触れられていて、その幅広さに感嘆。

    「Ars longa, vita brevis 芸術は長く、人生は短し」

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著者プロフィール

さかもと・りゅういち:1952年東京生まれ。3歳からピアノを、10歳から作曲を学ぶ。東京藝術大学大学院修士課程修了。78年にソロ・アルバム『千のナイフ』でデビュー。同年、細野晴臣、髙橋幸宏とともにYMOを結成し、シンセサイザーを駆使したポップ・ミュージックの世界を切り開いた。83年の散開後は、ソロ・ミュージシャンとして最新オリジナル・アルバムの『async』(2017)まで無数の作品を発表。自ら出演した大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』(83)をはじめ、ベルトルッチ監督の『ラスト・エンペラー』(87)、『シェルタリング・スカイ』(90)、イニャリトゥ監督の『レヴェナント』(2015)など30本以上を手掛けた映画音楽は、アカデミー賞を受賞するなど高く評価されている。地球の環境と反核・平和活動にも深くコミットし、「more trees」や「Stop Rokkasyo」「No Nukes」などのプロジェクトを立ち上げた。「東北ユースオーケストラ」など音楽を通じた東北地方太平洋沖地震被災者支援活動もおこなっている。2006年に「音楽の共有地」を目指す音楽レーベル「commmons」を設立、08年にスコラ・シリーズをスタートさせている。2014年7月、中咽頭癌の罹患を発表したが翌年に復帰。以後は精力的な活動を続けた。2021年1月に直腸癌の罹患を発表し闘病中。自伝『音楽は自由にする』(新潮社、2009)など著書も多い。

「2021年 『vol.18 ピアノへの旅(コモンズ: スコラ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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