- Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101292106
感想・レビュー・書評
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夫にも子どもにも先立たれた持統サマ。そんな彼女は孤独で不幸だったのではないだろうか。梶浦との会話からそう思ったなつみだったけれども、叔母の圭子と話すうちに、孤独は不幸だと決めつけるのはおかしいと思い始める。大切な人たちが、自分の傍らを通りぬけていってしまった。しかも、すべてが失われたとき、自分の人生だけが残った。そんな彼女の生涯は、決して孤独なものではなく、インディペンデンスなのではないだろうか。彼女は独立したのだ。
その考えかたを持ってすると、やっとわたしの中のぼんやりとした持統像もはっきりとした輪郭が現れてくる。晩年の持統が胸中に抱いたのは、決して自分はひとりぼっちで不幸だとの想いではなかったと思えるのだ。
現代のなつみや杏子、絵美の進む方向は結婚や子どもを産むという生き方からは離れたところに向かっている。この小説が書かれた1980年代では他人、特に男性から見れば女性の幸せを放棄した可哀想な人たちに見えるのだろうか。けれど彼女たちは、それぞれ独立した個族として、自分の人生を歩み始めている。
それから30年ほど経った日本はどうだろうか。何の柵も脱ぎ去って生きていく彼女たちを羨ましく感じてしまったのは、この現実世界がまだ女性にとって自由に生き方が選べるような時代になったとは言い切れないからなのかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
わたし、もっと卒論を頑張ればよかった、とシミジミ思いました…。
これだけ、頑張って入れば、人生かわってたかな?なんて思ってしまいました。 -
永井氏の筆による、歴史小説ではなく歴史解釈をストーリーに織り込みながらすすむ現代小説というスタイルが新鮮。
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引き続き友田なつみさんの物語。
上巻では卒論や就職活動に悩む日々が描かれるも、
下巻では何も知らないお嬢様女子が社会に出て、
悪戦苦闘しながら自立していく姿が描かれる。
就職した会社は今でいうブラック企業に近い。
それでもなつみは逞しく生き抜く。
クセのある人たちや社会の厳しさに翻弄されながらも、
主体的に自分で道を切り拓く強さを身に着けていく。
額田王・持統天皇が生きた万葉の時代、
小説が描かれた30年前、そして現代。
3つの時代の社会通念やモラル、
その移り変わりを上巻では感じた。
下巻で感じるのは、女性の自立についてだ。
権力闘争の渦中を生きた持統天皇。
現代に生きるなつみや同級生たちそれぞれの生き様、
仕事を通じて出会う働く女性たち。
そしてその裏に透けて見える、永井路子の生き方。
背伸びし過ぎず、自分の強みや活かし、
自分のやりたいことを見つけ出し力強く生きていく。
その姿にしなやかな逞しさを感じる。
もちろん恋愛のトピックもあるのだけれど、
重要であるも不可欠なものではないと描かれる。
骨太さと細やかさを併せ持つ物語。 -
なつみの会社が倒産し、自分のやりたい事、遺跡発掘調査のアルバイトをさせてもらい、貧乏だけど充実した生活の中、学生時代に付き合っていた人、旅で知り合った人、結婚を選択できる中、発掘の魅力に取り憑かれ発掘を選択する。
女性の自立を昔と現代とで対比させている。