流転の海 第4部 天の夜曲 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (591ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307534

作品紹介・あらすじ

昭和31年、熊吾は大阪の中華料理店を食中毒事件の濡れ衣で畳むことになり、事業の再起を期して妻房江、息子伸仁を引き連れ富山へ移り住む。が、煮え切らない共同経営者の態度に、妻子を残して再び大阪へ戻った。踊り子西条あけみと再会した夜、彼に生気が蘇る。そして新しい仕事も順調にみえたが…。苦闘する一家のドラマを高度経済成長期に入った日本を背景に描く、ライフワーク第四部。

感想・レビュー・書評

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  • 自尊心より大切なものを見つける。
    自分で実際に見聞きしたものだけを信じる。
    心根の腐るような言動はしない。
    何が起きても、大したことはない。
    主人公から我が子へ送る言葉が、心に響く。
    些事にとらわれず、我が道をひたすらに突き進む主人公の生き方が、かっこいい。
    妻が喘息にかかっている情報を得ても、すぐに連絡をせずに、目の前の雑事をさらっと片付ける姿がなんだか心に残った。

  • 自尊心より大事なものを持たねばならない。

    富山へ移った松坂一家。
    様々な苦難が降り注ぐ。
    その中で、地味溢れる言葉に溢れている。

    徐々に苦しくなる熊吾と家族。追い詰められて来ているが、その中でどう生きていくのか。。

    熊吾のパワーが落ちて来ている感じもある。
    そして、人間の悪意や行動も、善悪ではなく、一つの自然現象なのかも知れない、という印象が浮かぶ。

    後書きで、今後の描かれる内容にも期待が高まる。どの様なことが生じるのか。早く次が読みたくなった。

  • 富山編。松坂熊吾さんやらかして、と言うか、相変わらず人の見る目が無さすぎてあえなく全財産盗まれるの巻。
    でも、スケベ55歳は元気にスケベしてます。中年の星がんばれ!
    って、この第4部は第1部から20年目の作品なんですねー、ゴイゴイスー。今どっぷり松坂熊吾さんにハマっている50歳の私です。あゝ50台は素晴らしい。
    ワテもやったるでー!

  • 精力的に事業を興しては成功させていた熊吾にも暗雲立ち込めてきて読み進める事が中々つらくなってきた。
    宮本輝氏の作品で描写される「生と死」「明と暗」「幸と不幸」「貧と富」等々、この第4部は暗の部分が強くのし掛かってきたような感じがした。第5部は生の象徴でもある伸仁の活躍に期待している。

    メモ 古今亭志ん生「二階ぞめき」
    提婆達多

  • 冒頭よりまさかの富山への転居。

    「運」が下降線をたどっていく感じを、歯を食いしばって好転させようともがく日々。相変わらずのテンポは心地よいが、スカッ、とできない内容ですね。

    「自分の生命力を信じることが強い運というものの流れに乗るのだ」

    離ればなれになる伸仁は大丈夫かな?親の立場としては耐えられないなぁ。

  • 熊吾は、人に偉そうに身の振り方を指図したり文句言ったりするのに、自分のやっている事はめちゃくちゃ。自分の娘ぐらいのストリッパーに親切にしていると思ったら、体目当てでねんごろになるとは閉口した。妻と子供を何のゆかりもない、富山の田舎に放っておいて、やる事がひどすぎる。
    4部まで読み進めたが、話しに少し疲れて来たから続きは間を空けよう。

  • 2018年7月21日、読み始め。
    2018年8月1日、読了。

  •  提婆達多の逸話が秀逸。

  • 第4部のあとがきを読んで、第1部からこの4部迄執筆に20年を要した事が分った。
    今既刊になっているシリーズを読んでいて良かったと思う。
    多分4巻までに20年は自分にとっては耐えられないかも知れない、これは自分が置かれていた環境、人生観の辺か迄含めて考えると、同じイメージを持ち続けれる事が出来なかったんじゃないかと思う。

  • シリーズ第四部。激烈と熱い情を両立しながら年齢を重ねてきた主人公熊吾。本作は彼の弱さや脆さが随所に現れる。不幸な生い立ちを持ちながら、熊吾に引き寄せられ、懸命に道を歩いてきた妻房江も更年期という壁に心と身体の体調を崩す。アルコールに依存する哀しさが繊細に綴られる。制御できない衝動や誘惑に支配され、情にほだされ判断を誤る経緯は他人事ではない。

    戦後復興の過程で、困難や貧困がまだまだ多い時代。熊吾の家族が、周りの人々と持ちつもたれつ、迷惑をかけてかけられて、世話をして、世話になって他人との近い距離で日常を営む様子には懐かしさを覚える。契約や法律が充分ではないので恩も裏切りも同居するのが、単に懐古主義に陥らず、現実的で面白い。

  • 何かこの巻あたりから読むのがしんどくなってきた。
    イライラして感情移入できないまま終わった。

  • 昭和31年、熊吾は大阪の中華料理店を食中毒事件の濡れ衣で畳むことになり、事業の再起を期して妻房江、息子伸仁を引き連れ富山へ移り住む。が、煮え切らない共同経営者の態度に、妻子を残して再び大阪へ戻った。踊り子西条あけみと再会した夜、彼に生気が蘇る。そして新しい仕事も順調にみえたが…。苦闘する一家のドラマを高度経済成長期に入った日本を背景に描く、ライフワーク第四部。

  • いいね!
    沢山の学びが有った‼️
    価値の高い読書時間を頂きました‼️

  • 2022/6/22読了

  • 我が人生のバイブル(笑)
    「流転の海」第四部

    気の遠くなるような長旅を経て富山へと辿り着いた松坂一家を出迎えたのは、想像を絶する豪雪と先行きの不安を暗示する高瀬夫婦の応対だった。

    程なく、
    高瀬勇次の人間を見誤っていた事に愕然とする熊吾の元に、河内善助の急死の知らせが届く。

    河内の告別式の為に帰阪した熊吾は、千代麿から自動車ブローカー・久保敏松と引き合わされ、観音寺のケンとも再会する。
    そして、観音寺のケンから房江と二人で自分の子を身籠った女・百合を預かって欲しいと頼まれる。

    やがて、高瀬との事業に見切りをつけた熊吾は、高瀬にゴム付きの手袋の事業を薦め、自身は単身大阪への帰還を決意する。

    久保敏松と中古車販売会社を起こす元手作りの為、名刀・関の孫六を手放す決意をするが、その道すがら再会したストリッパー西城あけみの顔に大火傷を合わせ、新たな柵を産んでしまう。

    過去に大怪我を負わせた海老原太一を頼り、関の孫六を買い取って貰い資金を得るが、その日の食べ物にも窮する房江らの窮状を知りながら、森井博美(西条あけみ)との肉欲に溺れる熊吾。

    一方、富山での暮らしに言いようのない行き苦しさを感じる房江は喘息を発症してしまう。

    そして、房江に約束した期日を過ぎても事業の進展が遅々として進まない中、今度はなんと久保敏松によって新事業に参加した業者の預り金を含む全財産を持ち逃げされてしまうのだった。

    万事窮した熊吾は、森井博美の手術に用立てた金を返して貰い、博美との関係に終止符が打たれる。
    やがて、
    富山に戻った熊吾は、伸仁を富山に残し房江を大阪に伴う決意をするのだった。

  • 熊吾が段々追い詰められていく様子が描かれている。思わず応援したくなる。

  • 相変わらずいろいろ。ヘヴィー。でも癖になる。いつ読み始めたんだっけ??時間かかっちゃったなぁ。

  • 大阪での仕事に行き詰まり、心機一転富山で出直そうとする熊吾。
    しかし、実際に富山に行ってみると、共同経営者の優柔不断さが気に入らず、妻子を残したまま一人大阪に戻ってしまう。

    確かに事業を興すにはある程度の思い切りの良さが必要なのだろうが、ここにきて熊吾は運から見放されたかのように、やることなすことが上手くいかない。
    人と金とのタイミングがことごとくずれている。
    占い師の態度といい、なんだかこのまま坂を転げ落ちていくような不安に襲われてしまう。

    ただ、困窮しているとはいえ、寿司屋で寿司を食べ、タクシーを使い、困っている人には金を渡してしまう。
    遂に房江は自分の着物と指輪を質に入れるまでになるのだけど、あまり悲壮感がないのが人徳ということなのか。

    相変わらず伸仁は体が弱いようだけど、生命力というか、人の中で生き抜いていく力は強い。
    そして、同年齢の子よりもいろいろ発達が遅いようだけど、そのことに対して熊吾がまるごと受け入れているところがよい。
    無理に同級生レベルに押し上げようとするのではなく、この子はそういう子なんだ、と。
    ただ、人として道を間違えず、心身が健康であればいい、と。
    だから伸仁は実にのびのびとやんちゃ小僧に育っている。

    どうか家族三人がまた一緒に暮らせるようになりますように。

  • 妻と子を富山に残し、大阪で再起を図る熊吾。
    そんな彼に色々な試練がかかる。
    伸仁と同じように幼い頃に富山で暮らした筆者にとって、富山の風景は心に刻まれているのであろう。
    富山の田園風景の描写は瑞々しい。
    顔面に大火傷を負った、西条あけみの描写が痛々しい。

  • 熊吾の教養 素敵 考えさせられる
    最高の物語

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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