- Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101307817
作品紹介・あらすじ
波の音を聞くと、遠い土地に流れ着いた流木のような気分になる-。海辺のセカンドハウスに集まった地方テレビのプロデューサー夫婦と友人二人。五十代の男女四人は浜辺に落ちた海藻を拾い、庭に実る猿の頭ほどの夏みかんを頬ばり、ワインを飲んで、心地よい時間を過ごす。翌朝、四人の関係は思わぬ「決壊」を迎える(川端康成賞受賞・表題作)。日常にたゆたうエロスを描く三編。
感想・レビュー・書評
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『タタド』では別荘に集まった四人が東京で抑えていた理性を解放する過程が描かれているが不思議と醜く感じない。人間の思考や本能について訥々と語られる著者の文体によるところが大きいのだろう。『波を待って』で出てくる波は寄せて返す文体を表彰しているかのようだ。『45文字』でも言えるように、3遍は男女の複雑な関係について写実的に描かれている。端的に言葉で表すとどうしても空々しく感ぜられる感情が、著者の文体をもってすると長い年月によって刻まれる皺よろしく厳然と表される。その裏側が、文字が浮かんでいる表側から垣間見える過程が快感に感じた。
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初めての作家。 確かに好みだが、今一つ深く入り込めない。 集中してるつもりだが、ポツポツ意識が現実に戻される。 短編集だからか。 ただ、集中力が無いだけか? でも、面白そうな作品に当たりそうな気もするので長編を、読んでみようかとも思う。
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父の本。
最後の解説が秀逸。
水平な関係性、すごくびみょうなバランス。
大人はややこしい。 -
海の近くの物語。人生には波に弄ばれるように、不安と背中合わせの快楽にどうしようもなく溺れてしまう瞬間がある。それに名前をつけようとするのは無駄である。それはまさに名前を失くすことの快楽だから。
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3篇のうちタタドが印象深かったが、最後は意外な結末。タタドとは伊豆半島の多々戸(たたど)浜だそうです。川端賞受賞作。他2遍もなかなかの傑作。
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この揺らぎ、嫌いじゃない
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なまめかしくねっとりした空気感に最後まで馴染めず読み終えてしまいました。
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エロス。
詩的な表現は素敵だけど、
好き嫌いがわかれるとおもう。 -
人と人、男と女の関係が、あるときは極端に近づき、あるときは物理的に離れ、そうしながらも人と人をつなぐ間柄はたしかに魅力的に作用し続けることを淡白に描き出した素晴らしい短篇集。表題作以外も見事に創られている短篇集に出会うことは幸せ。
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静かな文章だけれども、強い存在感のある本だった。
おとなっぽい。
「波を待って」が、なんともいえない。