バビロンに行きて歌え (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101318110

感想・レビュー・書評

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  • 池澤夏樹の作品はデビュー作『夏の朝の成層圏』から『スティルライフ』、『真昼のプリニウス』と名作が続き、私も大ファンだが本作はあまりピンと来なかった。
    外国人と日本文化のクロスオーバー、ミュージックカルチャーと、作者の入れ込みたい要素が先行し自然な物語として読みづらかった。

  • スティルライフ・南の島のティオ以来、久々に池澤夏樹の本を読んだ。初期の小説だと思うけど、言いたいことを文字に流し込み、東京という異国に落とされたターリクの寂寥感、各短編の人物とバランス、さすがだなと思った。解説にあるとおりストリート系なにのに清潔すぎて綺麗にまとまってる感は否めない気もする。冒頭の4篇「夜の犬」「老獣医」「ブルー・プレート」「恋の日々」が、ベイルートで瓦礫と銃と血と緊迫感で生きてきた兵士が、東京という見ず知らずの都会と東京に住む人に警戒心を抱きつつもおずおずと触れていく、野良犬のような心の動きと孤独感が出ていてよかった。バンドのヴォーカルとして地に足が着いてからは、そこそこって感じ。

    それにしても解説がよく分からん。聖書に詳しくなくてバビロンと東京の比喩を理解してないからかもしれないけど。「それは多分、声とビートにだけ「約束の地」を求める旅のはじまりだ。」

  • 廃棄: 2022年4月22日

  • 一作目が新聞記者で二作目が火山学者。三作目はベイルートのゲリラ兵士。
    彼が敵から逃れて日本に不法入国するところからストーリーが始まる。戦争は底流には流れているけれども決して前面のレイヤーに現れることはなく、異国の地に降り立った違和感だったり恐怖感、寂寥感、そして、その土地に馴染んで身を立てていく様が描かれている。
    なんとなく、作者自身も、フィクションの世界で生きていけるという確かな一歩を踏み出したかのような作品だった。前の二作に比べて物語的なギミックの要素は増えていて、彼自身が持っている肥沃な創造の世界に一歩踏み出そうとしているかのような、そんな作品だなと思った。

    ただ、主人公のゲリラ兵士こと「ターリク」を主軸にストーリーは進んでいくのだけれども、章ごとに登場人物が移り変わり、それぞれにこれまで歩んできた人生が描かれて、東京という都市を上から見ているような、不思議な読後感。(実際、ちょっとこの人には興味持てないかも、みたいな章もあったし、ラストも前二作ほどの盛り上がりは感じられなかったかも)

  • 【いちぶん】
    彼はのびやかに歌った。自分に最もふさわしい武器がM-21スナイパー・ライフルではなく歌であることを知った。これならば、雪の中、沙漠、遠い国、営倉、ジャングル、どこへ行っても大丈夫だと思った。
    (p.120)

  • 池澤夏樹の小説が好きだ。

    本作の1篇である「倉庫のコンサート」が高校の現代文の教科書に載っていた。まだ授業はそのパートではないのに、私は授業中にこっそり読んで、一人で灰色の乾いた世界観で音楽に浸っていた。もしかすると他にもそういう同級生がいたかもしれない。きっとその同級生は、私と同じく空間と音楽が好きな人だっただろう。私たちを引き付ける、そういう透明な匂いを発している。この作品は。

    読後も、その世界の気配が漂っている。

  • ターリクをめぐる描写がすてき。しかし、話はいまいち。

  • 高1の時、読書課題で読んだ一冊。なんか色が目に浮かぶっていうのかな。雰囲気が好きだった。

  • ずいぶん前に読んだな。
    おもしろかった。
    内容,ストーリーもだが,章ごとに語り手が替わり,主人公を追いかけて関係者に聞き込みをしている探偵になったような気分。
    俯瞰しているような,それでいて中に入り込んでいるような不思議な感覚になる。

  •  こう来たか。
     その展開は予測できないけど幸せなものであった。

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著者プロフィール

1945年生まれ。作家・詩人。88年『スティル・ライフ』で芥川賞、93年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2010年「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」で毎日出版文化賞、11年朝日賞、ほか多数受賞。他の著書に『カデナ』『砂浜に坐り込んだ船』『キトラ・ボックス』など。

「2020年 『【一括購入特典つき】池澤夏樹=個人編集 日本文学全集【全30巻】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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