謎の毒親 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (419ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101321257

作品紹介・あらすじ

命の危険はなかった。けれどいちばん恐ろしい場所は〈我が家〉でした──。母の一周忌があった週末、光世は数十年ぶりに文容堂書店を訪れた。大学時代に通ったその書店には、当時と同じ店番の男性が。帰宅後、光世は店にいつも貼られていた「城北新報」宛に手紙を書く。幼い頃から繰り返された、両親の理解不能な罵倒、無視、接触について──。親という難題を抱える全ての人へ贈る相談小説。

感想・レビュー・書評

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  • 相談小説、とでもいうのかな。子供の頃に起こった不思議な出来事を、書店の刊行する冊子の相談コーナーに質問してみることから始まります。

    毒親というと虐待やネグレクトなどを連想しますが、ここに描かれている親はもっとこう、奇妙で、かなり「変」なのです。特に母親。
    カッターで指を切って血をダラダラと垂れ流している子供に向かって絨毯が汚れると怒ったり、娘のスカートの中を覗いたり、布団で寝ている娘の乳房を弄ったりするんです。ああ、気持ち悪い!

    これが全部実体験だというのですから、本当によくわかりません。親とは、子とはなんなのか。

    ここでは何も解決しませんが、両親が亡くなり、ずっと不可解で解けずにいた出来事の解決の糸口を、相談に対する回答という形で「普通の」人にもらえたことが、せめてもの救いでしょうか。

  • 著者の実体験による相談小説
    ホラーです
    なんという親だ
    おそろしい
    それが感想です
    主人公が子供時代の経験を相談という形で
    語っているのだが、そのいずれもが常軌を逸している
    そしてそれが実際にあったという話であるのだから
    おそろしくまた信じられないくらい
    こわい

  •  こちらの作品に限っては、著者のあとがきを読んでからの方が、物語に入り込みやすいかもしれません。というのもかしこまった書簡形式(著者は相談小説と表現)という独特の文体故に、とても読みづらく感じたため、そのような構成に至った著者の意図とプロセスを理解した方が物語を理解しやすいだろうと思ったからです。さらにこの物語は不可解な出来事の羅列なのですが、なんと全て著者の実体験だそうです。本書では凄惨な暴力などの痛ましい事件などはほとんど書かれず本当に小さな不可解で理不尽な出来事しか起きないのですが、何も知らずに読んでいると正直「しょーもな」という気持ちが先行して内容がいまいち入ってきません。ですが、それらが実際に起こった実体験だと知った上で本書を読めば、確実に物語を理解しやすく、リアルに起こったことなのだという面白さを感じながら読み進められることと思います。
     私はあとがきは最後に読む派なので、なかなかストーリーが入ってこずいつになったら面白くなるんだろうと思ったまま本の1/3に到達。なかなかストーリーが進まない。最初の「名札張り替え事件」も意味不明だしどうでも良すぎて投げ出しそうになりました。(しかも真相は謎のまま)もう読むのやめようかな、私がそう思ってる矢先、主人公が自分の親をひとことで言うならなんだろう?と問い、それに対して回答者・長谷川達哉氏が「毒親」と回答します。この「毒親」という言葉が初めて出てきた時点で物語がついに動き出したと感じました。
     中でも一番理不尽だったと思われる「タクシー事件」もシーズン2(同じことがまた起きる)の時に思わず読んでるこちらが吹き出してしまいました。もーやだーこの親頭おかしい。そのあたりでようやく面白がりながら読んでましたが、現実でも毒親というものは常識や条理からかけ離れた発想をするものなのかもしれないとも思いました。
     最近、毒親関連の本をよく読みますが、毒親には色々なジャンルがあり、これが毒親と一言で言えません。ですが私が毒親を定義するとしたら「親が子を支配する」この一言かなと思います。これが私が感じる毒親の定義です。
     実は私はこれから二人目を出産するのですが、良い親になれるか不安を感じるばかりでした。絶対に毒親になりたくないから、毒親関連の本を読み漁っていました。そんな中で本書を読んで、毒親の仕打ちに対する回答者の言葉を読んで私も主人公同様、勇気づけられたり納得できたりしました。私は子供を支配するのではなく、子供と共に歩んで成長していけたらなと思いました。
     毒親は鬼をうちに入れて、福に豆をぶつける人生。鬼は内、福は外という人生を送ってきたのだと、本書に登場する回答者・児玉幸子が言った言葉が印象に残っています。私は、「鬼は外、福は内」と心がけて楽しい人生を送ります。

  • 本書で最も驚愕し度肝を抜かれたのはあとがきのp418「著者の実体験」というサラッとしたカミングアウトと、p420「本書の『投稿』はすべて事実に基づいています」の但し書き。

    はっきり言って内容的には、言葉は悪いが胸糞悪い。反吐が出る。
    登場する「毒親」は率直に狂っているとしか思えないし、主人公・光世も事あるごとに「私はむかしからのろまでした」(p27)、「頭の回転が遅く、反応が鈍い」(p182)、「私はのろまですし、頭も悪いしカンも鈍い」(p388)…etc.と連呼する訳だが、あまりにしつこく書かれるのでいい加減うんざりする。

    私自身、母子家庭の一人っ子で育ち母親は掃除や料理が苦手でどちらかと言えば貧困だった。
    家の中は蠅が飛び交い食事は母の職場の同僚と聞かされていた知らないおじさんに面倒を見てもらい教材も中々買ってもらえなかった。

    何度振り返っても決して平凡ではなかったと思う。

    光世と比較してどうこう言うつもりではないが、「私は平凡な境遇に生まれ、平凡に暮らして」(p9)とまとめる彼女の姿勢には同意しかねる。
    まだストレートに憤ったり、笑い話として披露してもらえたなら理解もできるが、この体験を「平凡」とされるのならばいったい、本作を通じて何を読者に伝えたいのかがさっぱり見えてこない。

    実体験というのは明かさずあくまで’相談小説’という体で有ればこんなに反感も持たなかったと思うのだが。

    相談の謎について明確なオチがつかないのも実話ベースであれば納得。



    1刷
    2021.11.13

  • じっくり、じんわり読める。お手紙方式をとっているからか、余白があって、なおじんわり、とした読後。ひとことで表せない、家族というものについて。複雑な心境を、「謎」という言葉が置き換わって、ミステリーの様相も呈して進む。家族と他人、人間のつながり、感情の持って行き場、昇華のされ方。良かった。

  • 一気読みしたけど、途中で挫折しかけた程の嫌悪感もあった。

    オビには「希望」の強調が見えるけど、そこに辿り着くまで、得体の知れないイエを覗き続けなければならない恐怖がある。
    私小説じゃなきゃ、ここまでの生々しい濃度は出せないだろうとは思ったけど、私小説かぁ。
    事実は小説よりも奇なり、とはこのことか。

    存在が暴力的な父母から受け続けた、精神的虐待。
    最初は、そんな自分の家って変ですか?という体裁で始まるものだから、この人大丈夫か?と思っていたけど、後半になって「毒親」であることを自分が認めても良いのだ、振り切りたい気持ちを肯定してやっても良いのだという、微かな攻撃性が見えて安心もした。

    でも、分かる。
    どこからが「毒」を冠するラインなのかは分からないけど、誰にも言うつもりのない自分のイエのことって、あると思う。
    理不尽な怒りが展開される中で、ただ黙って過ぎ去るのを待つしかない時間や、記憶の中に一つも褒められた経験が残っていないこと、謎のルール。

    自分のイエだけが、こうなんだろうか。
    と思いながら、比べることも出来ず、他人のイエに上がることさえ、気持ち悪く感じてしまう。
    一時期、自分は父親に殺されるかもしれない、と本気で思ったことがあるほどだった。今もそれら全てが消化されたわけではなく、燻っているし、ある種の諦めもある。
    ただ、筆者が言うように確かに「軽減」は出来るのではないかと思う。
    そして、彼らは親であるし、親でしかない。

    「凄惨な暴力を受けたわけではない」ことが、免罪符になるわけではない。
    けれど、反抗も逃避も出来ない子供たちにとって、「今」が死活問題の子もいるだろう……。
    難しいけど、無視をしない大人でありたい。

  • 私も毒親とカテゴライズされる両親の下育ちました。両親の生い立ちなどで彼らの毒親の「素」がわかるのですが(父は恐らく発達障害、母は自身のコンプレックス)、この両親においては全く不明。まさに「謎」。伴侶や我が子に対する愛情を全然感じません。気まぐれに娘をいじめてるとしか思えない。
    特に娘に女としての幸せを拒絶してるのがなんとも…
    本当に不気味で気持ちが悪かったです。


    姫野先生のご両親に比べたら、うちの両親はかなりまともなのかもしれませんが、やはり毒親ってタイプがあれど、どこかしら共通点がある気がします。

    父親が高齢というだけで「お父さん、あなたの事が可愛くてしかたがないでしょう」と言われて頭を捻った話を読んで、「私も私も!」と言いたくなりましたし、「も~ママったら何やってるのよ~」なんて言える親子関係に憧れる気持ちもわかります。


    ただ、めちゃくちゃ読みづらい。読み進めるのが少し、いやかなり苦痛でした…
    主人公の愚鈍さが目に浮かぶほどに…「こりゃ同級生に嫌われるな」なんて酷い事も思いました。
    恐らく作風に合わせての事だとは思いますが、姫野先生の本はしばらく読めそうにありません。


  • わかりすぎて辛い部分もある本でした。

    我が家のフツーを、語ってもわかってもらえない。奇妙過ぎて。親が外で見せているものと内の顔が違いすぎて。
    語ってみても、上手く言葉にならない。変だから。
    そんな、言葉にならないもやもやを、形にしてもらえて少しすっきりできました。

    本のなかで語られた言葉に、刺さりすぎて痛い部分もあったけど、自分とはこういうものだとちゃんと受け止められるようになりたい。

    自分にとってしんどいものなら、親だろうが捨てていい。
    救われていいんだ、私だって。

  • 「毒親」ということばの元は、アメリカのセラピスト、スーザン・フォワードの著書『毒にやる親』です。あとがきより
    相談小説と表紙にもあるように、すごく丁寧なデスマス調でのやりとりが多少読みにくかったけど、内容は濃くとても怖かった。
    これをドラマや映像にしたら、とんでもないサイコパスな両親として話題になるだろう。
    育った環境が違いすぎて、主人公ヒカルちゃんを理解することは出来なかったが、彼女の壮絶な未成年時代を辛く思った。

  • 不可解な話の連続でホラー小説でも読んでいるかのような気味の悪さをたびたび感じたけれど、それらの謎に対する回答者たちの推理が見事で、なるほどこんな見方があるのかと感動すら覚えた。
    特にタクシーの話は意味不明すぎて頭痛がしたけれど、その回答が特に素晴らしくて電車内で思わず「なるほどなあ」とつぶやきが漏れてしまった。
    エピソードも回答もすべてが面白いし、綺麗な文体のなかに垣間見えるシニカルさもまた良くてとても楽しませてもらいました。

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著者プロフィール

作家

「2016年 『純喫茶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

姫野カオルコの作品

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