生き抜くためのドストエフスキー入門 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101331829

作品紹介・あらすじ

なぜドストエフスキーの作品は百五十年の時を越えて読まれ続けるのか? ソ連崩壊と冷戦終結、中国の台頭、そしてコロナ禍。時代が激しく変わり続ける今なお、ロシア文学最大の作家による長編には現代人が生き延びるための知恵が込められているからにほかならない。人は国家に抗えるのか、どうすれば自己実現できるのか。最高の水先案内人による超入門、ドストエフスキーを読む前に読む本。

感想・レビュー・書評

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  • アジア発の疫病を予言? ドストエフスキーが没後140年でも「いま読むべき理由」とは:佐藤優 | 記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト
    https://www.fsight.jp/articles/-/48376

    佐藤優 『生き抜くためのドストエフスキー入門―「五大長編」集中講義―』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/133182/

  • 佐藤優さんが今年6月新潮社で行った講座を、活字化したもの。
    返却日等の関係で「今日がんばって読みました」自分。
    佐藤優さんのクリスマスプレゼントとみた。

    でも、それまんざら出鱈目でもなく、
    キリスト教関係の内容が多い。
    佐藤さんいろいろ工夫して
    〈ムイシュキンは星飛雄馬である〉とか
    〈『白痴』を読んだ編集者が「なんだか三谷幸喜の芝居を見ているようだった」と言っていた〉
    など、親しめるように工夫しているようですが
    佐藤優さんの神学関係の本はめっちゃ難しいです。
    いっそう読みたくなくなります。

    〈私も60歳を超えたので分かりますが、人生の持ち時間が見えてくると、とりあえずやりたいテーマをまとめて書いてしまいたい気持ちになるんです〉

    「それがこの本でしょ!」とつっこむ私。
    しかも佐藤優さん、最近前立腺がんを公表しました。
    でも前立腺がんは本人が知らないまま亡くなることもある位なので、たいしたことないかもと思う。

    あわてないで、ゆっくり解説してください、佐藤さん。
    いきなりドストエフスキー長編5つはキツイです。

    ☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆

    ここからわたし個人の記録。

    この10年ほど、毎年この時期暗い気持になっていました。
    改善したいと努力を重ねてきましたが、実らず。
    ついに昨年、焦土作戦を選択。
    時間かかる覚悟で。

    そしたら、なんと、今年大逆転で解決しました。
    (私の焦土作戦は関係ありません)
    なぜか。
    「コロナのおかげ」

    コロナで良いことが多くて、本当にごめんなさい。
    その分、他の形で幸せを届けたい。

  • この数年ドストエフスキーを読み、Eテレの亀山先生の100分de名著を視聴している。おさらいのつもりで購読。

    「罪と罰」小学生のころ、読んだきり。
    主人王はシベリア送りの後も反省や後悔はしていないとの指摘。へ~。読まないといかんなあ。

    「白痴」高校時代に読み、40年後に読み直す。
    ムイシュキンを無垢で純粋なだけの人間とする見方に佐藤さんは疑問を投げ掛ける。攻撃的で、自分の偏狭な価値観に固執し、周囲を破壊していく存在と。
    ロゴージンの暗い情熱とナスターシャの破滅志向がこの恐ろしい物語の原因だと思っていたが、佐藤さんはムイシュキンが触媒になっているという。
    ロシアのキリスト教の話は面白った。しっかり理解できたかというと怪しいけれど。この罪深い物語のような世界だから、救済は逆説で、無力で、神は沈黙せざるを得なく、そこに神の愛のリアリティが示されるというのは、正直納得していない。

    「悪霊」数年前に読む。スタヴローギンをもっと描いてほしかったと思った。
    ステハンは滑稽な道化役と思ったが、人民の中に入っていけというナロードニキを表しているんだろう。対して、ニヒリストたちは農民の教化は無理だから、社会の上層部を抹殺して、自分たちが入れ替わればよいとすると佐藤さんは示す。築くべき社会の展望もなく、破壊のみを目的とする。
    しかし、スタヴローギンは彼らと交わろうとするわけでもない。神と同じく悪霊もこの世に満ち満ちている。悪霊を信じることで、神の愛のリアリティを感じるというのは、正直、難しくて判らない。

    「未成年」読んでない、というか、この小説知らなかった。
    ドストエフスキーが資本主義を理解していなかったというのは納得。カラマーゾフでも長男ミーチャが金を借りようと騒動を起こしまくるけど、働くという思考は皆無だ。ホリエモンも未成年だという指摘は成程ねえと思う。

    「カラマーゾフの兄弟」数年前に読んだ。時間がたつと、一番重要なのは次男のイワンのことなんだなと思う。長男ミーチャのことが面白くて、主題が分からなくなるけれど。
    佐藤さんは大審問官について詳細に分析。イワンと悪魔との対話もやって欲しかったな。
    長老ゾシマはキリスト教として異端という指摘は意外だった。死後の遺体腐食もそこに原因があるという。

    未読の罪と罰、未成年を読んで、いくつか読み返したほうが良いんだろうな。

  • 新潮講座の活字化ということでとても読みやすい。未読の「白痴」を読まねばと思った。キリスト教(というか宗教全般)に対して無知であるので、大変勉強になった。「カラマーゾフの兄弟」絶対に読み直そう。

  • そもそも、ドストエフスキーを読もうとすると、結構な時間がかかる私みたいな人間にとって、さてこの本は「入門」なのかしら?と思いつつ……。
    個人的に印象に残った部分だけ、ピックアップしておく。

    「もはや現代では、宗教と私的妄想の区別は原理的につかなくなっているのかもしれません。すると、伝統があれば宗教であって、伝統がなければ私的妄想なのか、という話になってしまう」

    『悪霊』の章より。
    ある宗教団体が力を持つことと、政教分離の関係。個人の想いから成る行動までを制限することが出来ない。

    「『未成年』の最後、「未成年たちによって時代が建設されていくからです」という思いが、村上さんの中にもあるのではないでしょうか。それは作家として、すぐれた資質ですよ。成人して達観してしまったら、物事のある種の事柄は見えなくなってしまいますからね」

    『未成年』の章より。
    村上春樹との関係性。未成年だからこその視座。
    何かを達成して終わるではなく、成熟する途上そのものを描くストーリーであること。

  • 知り合いに佐藤優さんの解説書である本書をお勧めされたので読んでみた。正直な感想は、ドエトエフスキーの本はこんなに難しいのかという気持ち。佐藤さんの解説がなければほとんど意味がわからないのではと思ったくらい。それでも、本書のおかげで、ドエトエフスキーのロシア正教への考え方や、今のプーチンの思想にも通じて来るロシアの歴史や哲学を学ぶことができたのはとても面白かった。いつか、罪と罰などの作品に挑戦したい。

  • 身も蓋もないが、究極的にはこの一文に尽きる。

    “補助線がないと古典はなかなかピンと来ないし、無自覚に補助線を使っていることもあるし、そのへんが厄介なところです。結局、こんな補助線もあるんだ、といろいろな読み筋を知っておいたほうがいいんですね。”

    本書も間違いなく日本人のドストエフスキー論としてはトップクラスに質の高い『補助線』だと思うが、とにかくドストエフスキーを味わい切ろうとすればまだまだ色々なアングルからの読み方を知る必要があることを痛烈に感じた。

    それにつけても、当時のロシア社会の論点やドストエフスキーの生涯といった最低限の土台を押さえなさいという注釈も無く、一足飛びに『カラマーゾフ』を薦めるなどというのはナンセンスだと思うし、それを間に受けてただ『カラマーゾフ』だけを読み切り「俺はカラマーゾフを読破した側の人間だ」などと悦に入るのは本当にやめた方が良い。

  • 快作、怪作。素晴らしい本である。

    ドストエフスキーの小説を読んで、モヤっと感じていた部分について、明快に解説してくれる。
    例えば、『罪と罰』に於ける「ラザロの復活」朗読の場面、これをどう解釈すべきか。また、『カラマーゾフの兄弟』の「ゾシマ長老」の腐臭をどう捉えるべきか。

    佐藤氏は、神学に関する深い知識と、ロシア人の思考や心性についての実感に根差した見識をもって、作品を読むツボを解説してくれる。

    すこし紹介する。『カラマーゾフの兄弟』のゾシマ長老のことばを抜粋した部分。その一節

    「罪あるがままの人間を愛するがよい、なぜならそのことはすでに神の愛に近く、地上の愛の極致だからである。」
    これらを含む段落を紹介したあとで、以下佐藤氏のひと言。
    「これはもう、キリスト教では完全にアウトです。」
     なんとも小気味いい。

    その他、ロシア正教とソビエト共産党イデオロギーが共存する、ロシア民衆の心性の多義性というか重層性、複雑さと豊饒さについても言及。刺激的で興味深い。

    他にも、創価学会、習近平、革マルなどを俎上に乗せつつ、「ドストエフスキーの神学論」を熱く語る。
    すこぶる面白い。

    さて、
    先日(2022年冬)私はドストエフスキー作品の全読を終えた。
    だが、幾つかの長編を読んでいる途上では、ドストエフスキー作品への苦手意識が芽生えていた。
    トルストイ作品の方が読み易くて好みかも…、と感じ、ドストエフスキーは読みづらいな、と思っていた。

    そして今、この佐藤氏の解説も契機になって、今は、感じ方捉え方が少し変わっている。
    ドストエフスキーの作品は、確かにときに読みづらかったり、構成や構築度に難ありのものも多い。
    だが一方で、ドストエフスキー文学は、当時の時代の生々しい要素をまるごと作品に抱き込んでいる感じがある。
    そういう「えぐ味」や、非洗練の部分もまた、ドストエフスキーの魅力と味わいである、と思い至った。
    その面白さを意識して読むことが出来るなら、ドストエフスキー文学がより魅力的に思える気がしている。

    いま私の心情は、トルストイ党でなく、ドストエフスキー党である。

  • 2024.01.13 朝活読書サロンで紹介を受ける。

  • 難しかった。特に後半。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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