累犯障害者 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101338729

感想・レビュー・書評

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  • 社会のルールを犯す。それは犯罪として加害者は罪を償う。しかし加害者はなぜ犯罪を犯すのか。それは社会に冷遇された末路ならば、この社会は加害側ではないのか。この書籍に登場する犯罪者は何らかの障害を持つ弱者である。その弱者に救いの手を差しのべない社会は健全なのか、福祉の不備を看過する社会を声をあげて変えようとする運動に賛同する。他者を助けない人々は助けを求める側になっても周囲は振り向いてくれないだろう。都合のいいことばかり考えるようになっては都合が悪くなるのは全て周りのせいだと責める愚者となる。本当は自身が都合の悪い要因だと気付かずに。

  • 普通に生きていればまず関わらない刑務所に、個人的にとても興味がある。
    再犯しまくったり、高齢だったり、障害があったりする、犯罪者の多面性を見ることのできる一冊。
    そこにしか行けない人々が間違いなく存在することを学ぶことが大切。

  • 筆者が服役中に目の当たりとした、刑務所内の障碍者たち。福祉の網から零れ落ちている彼らは、出所後も身元引受人がなく、生活苦から軽微な犯罪を犯し、また舞い戻ってくる。触法障碍者たちはメディアや福祉関係者から無いもののように扱われてきた。本書は、実際の障碍者に関する事件を例にとり、筆者が取りまとめたルポタージュであり、触法障碍者の処遇について問題点を明らかにし、改善策を提起している。

    _____________
    2020年の現状が、この本書の内容から少しでも改善されているとよいのだが。非常に悲惨な現実を詳らかにする、衝撃的な本だと思う。

    人類の障碍者が一定の割合で出生してくるとするならば、そのような人々の存在を前提とした制度にしていくことは当然だ。ただ、福祉が、福祉がと言うだけでは無理がある。福祉も手一杯だろう。根本的な話を出すと、人手不足、財源不足というところに行きつくのかもしれない。では、いまをよりよい社会にするためには、どの部分から変えていけばいいのか。それを見据えてこれからの問題も考えられなければならない。つまり、政治を抜本的に変えろ、という話になると思う。では、そのために我々は何をするべきか。

    浅草・女子短大生刺殺事件の犯人の妹が本当にかわいそうで涙ぐんでしまった。他にも不憫な話が数多くある。これからのかわいそうな話を読み、涙を流すことはこれらの人々を一つのエンターテイメントとして、娯楽として私は消費してしまっているような気持ちが半分、また、本当にこれらの人々に同情し、世界のかわいそうな人々を本当に救済したいという気持ちが半分あるように感じる。前者の気持ちはさておき、後者の気持ちについて見極めていきたい。

    デフコミュニティの話が気になった。不思議な話である。ろうあ者と聴者とでは、精神的な世界もまるで違うかのような書きぶりだ。本当にそうなのだろうか。気になるが、単純に怖いという印象。

  • 本書中において、障害者を刑事司法の「入り口」に向かわせない方策が必要とある。その中で、教育は大きな役割を担っている。特に、軽度知的障害者が福祉の網にかからず、すり抜けてしまう現状について、特別支援学校高等部は公的な支援と繋がれる最後のチャンス。高等部を卒業して、頼れる人がおらず、ヤクザに入ったり、売春を繰り返す。その結果、人生の8割を刑務所で過ごし、「刑務所に戻りたい」と言って人生を終える受刑者もいる。まずは教員から、「特別支援学校=守られた空間」という認識を変えていかなければならないたろう。
     障害者の犯罪や性など、”品行方正”な福祉や教育分野はタブー視しがちな分野について、学生の間に学んでいく必要性を痛感!

  • 東2法経図・6F指定:326.3A/Y31r/Shoji

  • 約10年前の本ですが、内容は今も鋭く社会へと疑問を投げかける内容となっています。
    普段中々知ることのない堀の中での現実を書いた著書は、読んでよかったと思えます。

    最初は知的障害のある方から、後半は主に聴覚障害のある方を中心に扱っていく内容となっています。
    被害者にも人生はあり、また加害者にも人生があって、結果として起こる悲劇は避けなければならないことです。
    非常に読みやすい文章で、著者の別の本も読みたくなりました。

  • とにかく哀しくなる
    最初のうちは怒りだったものも
    あまりにもやるせなくて哀しみにしか行き場がなくなる

    それは行政の福祉の目が行き届かず、それが故に罪を犯さざるを得なくなる、という障害者の実態にもあるのだけれど

    それよりも彼らも人間であり、どんな人間も持ちうるその陰の部分が、彼らの場合は直接「罪」につながる、ということだ

    たとえば性的快感を求めて身体を売る知的障害者の女たちとか…
    それはどんな福祉の手も解決し得ない問題だろう

    また周囲の哀しい人間たち
    レッサーパンダ男の妹…
    彼女の人生は、ほんとうに最後の最後までまるで陰の部分だけを負わされていたようなものだ

    行政の不備
    人間の傲慢さと偏見
    社会の未熟さ

    そういったマイナスのものが全てからみあったあまりにも哀しい事件たちだ

  • 日本には福祉の手が届かず刑務所で生きる事が最良の選択となっている人々がいる。政治生命が閉ざされた著者が社会の暗部を浮き彫りにさせついには国をも動かした。中学生の義務教育で取り上げては?

  • デフコミュニティの中で暮らす聾唖の方々の犯罪についてが、とても勉強になった。
    入口支援、出口支援の必要性を改めて感じた。

  • 大勢の人に読んでもらいたい!

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著者プロフィール

1962年生まれ、元衆議院議員。2000年に秘書給与詐取事件で逮捕、実刑判決を受け栃木県黒羽刑務所に服役。刑務所内での体験をもとに『獄窓記』(ポプラ社)、『累犯障害者』(新潮社)を著し、障害を持つ入所者の問題を社会に提起。NPO法人ライフサポートネットワーク理事長として現在も出所者の就労支援、講演などによる啓発に取り組む。2012年に『覚醒』(上下、光文社)で作家デビュー。近刊に『エンディングノート』(光文社)。

「2018年 『刑務所しか居場所がない人たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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