かもめの日 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 131
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339818

作品紹介・あらすじ

「わたしはかもめ」女性初の宇宙飛行士テレシコワが、高い空の上から地球に放った言葉は、地上の孤独をいまも静かにつなぐ。妻に先立たれた作家、FM局の年若いAD、肥った地球物理学者の青年、消せない怒りを抱える少女。チェーホフの世界に重なって、それぞれの24時間を俯瞰しつつ、この街の姿に織り上げる物語のタペストリー。読売文学賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 読みたいリストに入れてから2年ほど経過。やっと読了。
    冒頭、旧ソ連初の女性宇宙飛行士、テレシコワさんが登場し、SF苦手な私は読むのをあきらめかけたが、そういうお話ではなかった。
    FMラジオの人たち、リスナーほか、それぞれに人生があり、悩んだり、すれ違ったり、過ちを起こしたり。みんな一生懸命生きてる。

  • 都会に生きる色々な人の日常を、少しずつ丁寧に切り取って、そしてそれらは少しずつリンクしていて、そういう一瞬一瞬が積み重なって街は今日も夜を迎える…というようなお話。

    個人的には、こういう、淡々と目の前の事象を丁寧に切り取っていく作品は割と好きで、変にドロドロしていたり熱っぽかったりしないところが好きだ。そんなに派手な人生をピックアップしているわけではなくて、次のシフトが自分の希望通りになるかどうかちょっと気にしつつも、お気に入りの店のサンドウィッチに意識がいっているフリーのラジオアナウンサーの女性とか、昔男たちにひどい目にあわされたのだけれどそれなりにちゃんと前を向いて生きている女の子とか、まぁ、探せば身近にいそうな人のここ最近のワンカット、といった感じ。逆に、そういう、街のどこかですれ違ったことがあるかもしれない他人の日常って、いつもは特に注視していないのである意味新鮮だ。

    もともとは、清水真砂子さんが著作の中でこの本について触れていて、気になって読んでみたというのが本音だけれど、良い意味で意外だったというか、フラリと訪れたある街のデパートの片隅で、たまたま開催されていた小さなポートレート展に入ってみたら結構良くて爽やかな気分とちょっとした充足感と共に帰途につけた、みたいな読後感だった。(もっと深く重い世界を想像していた、でもこっちの真面目なライトさの方が良い。)

  • ふむ

  • 「「わたしはかもめ」女性初の宇宙飛行士テレシコワが、高い空の上から地球に放った言葉は、地上の孤独をいまも静かにつなぐ。妻に先立たれた作家、FM局の年若いAD、肥った地球物理学者の青年、消せない怒りを抱える少女。チェーホフの世界に重なって、それぞれの24時間を俯瞰しつつ、この街の姿に織り上げる物語のタペストリー。読売文学賞受賞。」

    「物語は、宇宙から早朝の東京の街を見下ろすように始まる。ーなんの関係性もなさそうな登場人物が、実は微かな絆で繋がっていることを知るのは俯瞰映像で彼らを見ている読者だけである。物語はどんどん繋がってある方向に集約されてゆくのに、彼らは最後までそれに気付けない。ー立ち止まっていた場所から一歩前へ進む登場人物達だが、彼らの孤独はきっと解消されない。それでいいのだと思う。ー孤独が「前提」なところが好き。」
    (『小泉今日子書評集』の紹介より)

  • あるラジオ局での24時間を抜き出した群像劇です。関わりがある人無い人さまざまな人々の一日を描いています。あくまで同じ時間軸を共有しているだけで関わり無い事象を並列的に描く事によって、重層的なイメージが頭の中に構築されます。へたに関わり持たせ無いだけにすんなり受け入れられます。なかなかの佳作だと思う。

  • バラバラの場所で起こる出来事が絡まりあっていくのを
    鳥が空から俯瞰しているような視点で読み手はそれらを眺めていく。

    断片的な出来事がつながっていくさまはよく練られているのだけど
    ひとつひとつの断片にもう少しボリュームが欲しい。
    でもひとつの断片に心情的に移入しすぎないよう作ってあるのだとは思う。

    読み心地、読後感は「爽感」。

  • うーーん、なかなか物語に入り込めず、最後まで読むのに苦労しました。
    もう一回読んでみようかな…。

  • たぶん相性の問題で、なかなか物語りに入りきれず、途中で保留に変更。

  • すぐに場面があっちこっちへと移り変わるので、
    それを頭に叩き込むのは大変かもしれない・・・・・・

    はっきりいって、最初は内容がつかめない。
    いったい、何の話なのか・・・・・・、謎のまま、徐々にわかるようになる。

    読み終えたいま、思い返せば、
    冒頭の女性宇宙飛行士の話がいちばん美しいかもしれない。

  • 出だしを本屋さんで読んでから買ったのだけど
    最初から最後まで、心地の良い戸惑いを感じていた
    別々の関係ない人たちが、ばらばらにそれぞれに
    日々を過ごして行く様子から
    少しずつ、その人たちの距離が近づいているような
    動いて自然に形が変わっていくような感じで
    交差するのかそのまますれ違うのかあいまいに
    最後まで、淡々と静かに進んでいく
    わたしにとっては不思議な感覚に陥ったお話だった

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著者プロフィール

作家。1961年京都市生まれ。同志社大学文学部卒業。1999年、初の小説『若冲の目』刊行。2008年『かもめの日』で読売文学賞、13年刊『国境[完全版]』で伊藤整文学賞(評論部門)、14年刊『京都』で毎日出版文化賞、18年刊『鶴見俊輔伝』で大佛次郎賞を受賞。主な作品に『もどろき』、『イカロスの森』、『暗殺者たち』、『岩場の上から』、『暗い林を抜けて』、『ウィーン近郊』、『彼女のことを知っている』、『旅する少年』、評論に『きれいな風貌 西村伊作伝』、『鴎外と漱石のあいだで 日本語の文学が生まれる場所』『世界を文学でどう描けるか』、編著書に『〈外地〉の日本語文学選』(全3巻)、『鶴見俊輔コレクション』(全4巻)などがある。

「2023年 『「日本語」の文学が生まれた場所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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