観光の哀しみ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101351162

感想・レビュー・書評

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  • 本屋で

    「旅行をしている時、ふとした瞬間にものすごく、哀しい気分に襲われることはないでしょうか。」

    という最初のフレーズを見た途端「ある、わかる」とて購入、即行読んだ。

    酒井さん流の面白ろうて哀しい旅にまつわるエッセイなのだ。
    うーん、そうそう、などという独り言とくすくす笑いが止まらず困った。

    最近「枕の草子」も書いて、平成の清少納言といわれているらしい酒井順子さん。

    いろんな観光地、旅の仕方をやんわり皮肉を込めて描写し、問題を惹起させる。
    でもけして否定のみではない。
    フォローがうまいというか、ほんとうに旅を愛して書いているからだろう。

    私も旅は好き。日常生活と離れて異空間に遊べるその醍醐味は忘れられない。
    でも行くまでは楽しいが、その瞬間にふと寂しさがたちのぼって。

    特に観光バスに乗って行くツアー。
    出発の朝ガイドさんの華やかな第一声を聞いた途端、私は後悔。
    「ああどうして来てしまったんだろうか」と途方にくれるのだ。

    聴きたくないときにも聞かされる説明。歌。
    名所旧跡でいっせいにバスから降ろされ「○○時集合」。
    どーっと運ばれるお土産屋さん。

    聞かないで寝てりゃいいのよ、降りなければいいのよ、とひとはいうがそんな失礼する勇気はないし。
    旅の終いにはくたびれ果てて帰ることになる。
    だから、もう10年は観光バス乗ってないけど。

    まあ、ツアーでない旅もいろいろと大変なことは大変だし、めんどくさいしね。
    そのうち、ツアーばっかりがいいといってるだろうね。

  • わははは!と声を出して笑った箇所もいくつかあったけど、私にとっては内容(筆者の主張)がだいぶ偏屈、だいぶ無理がある、こじつけが過ぎるように感じてしまい、ディズニーの章までは頑張って読み切ったけれど、そこで挫折。

    でも、この著者のように、ものごとを突き詰めて突き詰めて、掘って掘って、一般人の肌感覚からすると「考えすぎでは…」と若干引くくらいに煮詰めて考えられるような人でないと、文筆家にはなれないんだろうなと思った。

  • 面白かった。18年前の酒井さんの旅に関するエッセイ。ブラックなユーモアが冴え渡ってる。たぶん私達も感じるよくない感情を酒井さんはズバッと書いている。わかる、わかると思いながらクスッと笑いながら読んだ。

  • なかなかヒネくれた考えだなぁと思いながら読み進めたが、そんな中にも核心をついたものもあって楽しく読めた。〝見上げ物〟や〝お触りサービス〟などの表現は新鮮でこういう側面もあるんだなと感心した。

  • ライブのために今まで結構いろんなとこ行って、ついでに観光もしたりするけど、今までライブじゃなくてもまた行きたいと思ったところはないな。

  • 一番しっくりしたのはまえがきだけだった。私も観光は哀しい。観光だけじゃなく出かけるだけでも「家に帰りたい」と思う。でもほとんどが悲しみというより悪口?
    相変わらず過去形でもないのに使用される「〜でした」は誰か注意しないのか?

  • 「温泉」「テーマパーク」「宿泊施設」がツボにはまり、面白く読めた。2003年(底本2000年)刊行。

  • 以前、他の著作のレビューで「この方とは美味い酒が飲めそう」とか何とか書いたような気がするのですが、ごめんなさい、やっぱり無理かも…

    日本人の観光の生態をいささか皮肉っぽく、かつ克明に描き出している秀作だと思います。思いますが、その「皮肉」がどうにも生々しくまたこまごまとしていて、どうにも肌に合わなかった感があります。

    うん、言いたい事はよく分かるのですけどね。そんなに斜に構えなくても良いのに…と終始苦笑しながら読み進めてしまいました。まあ、その「苦笑」感こそが酒井さんの文章の面白さなのかもしれませんけれど。

    あれこれ考えず、緩みきった頭で湯船に使って「温泉はいいね、リリスのうみだした文化の~」などと呆けていれば良いんじゃないですかね。それが旅ってもんです。

    しかしまあ、ここまでディズニーに喧嘩売る著名人も珍しいですよねえ(笑)。

  • 子どもの頃から、みんなで旅行に行くことにとても気乗りがしないタチでした。

    そこにあるものを観ることよりも、一緒に行く人とのおしゃべりなんかに気を使わなくてはならず、結局そこにあるものを観ることができないで帰ってくる。

    写真を撮りに行くわけでも、お土産を買いに行くでもないのに・・!と、悶々と違和感を抱いていて、そんなこと思う自分はひねくれているなぁ・・と思った・・。

    これが旅、これが楽しさ、旅っていいよね!というパッケージの中に入って、「楽しい」ような気がしているだけというか・・。実は楽しくもなんともなかったりして。

    そうした違和感をうまく書いてくれている1冊。
    ワカルワカル!!!前半はばっさり、観光についてぶった切っているところがいいんですが、後半は、酒井さんの旅にまつわるエッセイという感じ。

    ディズニー批判も展開しているから、ディズ二ー好きの人は要注意。
    でも、ディズニーが好きという人は、そこに何ら違和感も抱かないと思うし、この本にも行き着かないのではないかと思った。

    ソーシャルメディアの登場もあり、旅も自分を演出するための手段となっているな~と思う。(旅先で写真をひたすら撮る人々を観ると思う)旅している自分を評価されたい、こんな旅をしている自分って素敵的な演出としての旅。(あ、でも、私も旅行に行くとフェイスブックにアップしちゃったりするから、自分もそうかもしれない)

    そうした違和感は、人が感じていながら、そこには触れられないもの。「旅」の楽しさの中で楽しい振りをしているアナタはぜひ。

  • 「観光」に関するエッセイ。

    最初は「あるある!」と面白く読めたが、途中から酒井さんの偏見が大きくでてきて、ちょっと興ざめ。
    なので、★2つ。

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著者プロフィール

エッセイスト

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

酒井順子の作品

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