ノエル: -a story of stories- (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101355559

作品紹介・あらすじ

孤独と暴力に耐える日々のなか、級友の弥生から絵本作りに誘われた中学生の圭介。妹の誕生に複雑な思いを抱きつつ、主人公と会話するように童話の続きを書き始める小学生の莉子。妻に先立たれ、生きる意味を見失いながらボランティアで読み聞かせをする元教師の与沢。三人が紡いだ自分だけの〈物語〉は、哀しい現実を飛び越えてゆく――。最高の技巧に驚嘆必至、傑作長編ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 叙述トリックを駆使した連作短編集。
    読めそうで読めない、良い塩梅の仕掛けが光る作品。

  • 絵本作家になった圭介、妹が生まれる莉子、読み聞かせを行う与沢の話。勝手な先入観により掌で踊らされ、どんどん繋がっていく様が最早楽しい。人間の後ろ暗い部分が分かりすぎるくらい上手く表現されてて、だからこそ入り込む。正しくクリスマスのお話で絵本が開きたくなる。

  • 滑り込みで夏の読書となったクリスマスのお話(^^;
    とても良かった。最初のお話好きだなぁ。騙されてあっという間に真相がわかる叙述トリックもあり(笑)

    苦手なファンタジー要素は出てくるものの、童話の世界だと分かっているので、なんでもアリな感じではなく想像もしやすい。全然問題なかった。
    圭介の作った物語もおじいさんが作ってきた物語も優しくて好き。

    ただ、3話目の「あのね…」で話が途切れる箇所が何回かあるのがもどかしい。結局何なのか分からなかったのは、私の読解力のなさかな。
    最後に出てきた若い男女はあの2人ではないの?(他のサイトで違うこと書いてあるの見た)とか。
    とても感動する良いお話だっただけに、ちゃんと理解できなかった自分が悔しい!

  • 道尾秀介を読んだのは3作目。
    ハズレ無しである。

    練られた構成、素直な文体に加えて、基本的に救いがある物語なので、読後感が良い。
    だからと言って、ご都合主義の甘ちゃんな物語では決してない。

    この作品は、3つのショートストーリーと、エピローグで構成されているけれど、それぞれのショートストーリーの主人公たちは、お世辞にも明るい人生を歩んでいない。3人ともそれぞれの仕方で「死」のリアリティを孕んでいる。
    そして、それぞれの辛い人生と対比させるように、「物語」が劇中劇のように配置される。それは、自分で描いた絵本だったり、図書館で借りた絵本だったり、女の子を喜ばせるために考えた童話だったりするけれど、読者は主人公の気持ちを追体験するように、「物語」の間だけ落ち着いて呼吸ができるような感覚を味わうのだ。

    3つのショートストーリーは絶妙に絡まり合い、最後のエピローグで見事に合流して、着地する。
    読者が心から救われてほしいと願った優しい人たちが、まとめて救われていく。

    面白いし、心温まる。
    人にオススメしやすい本。

  • 道尾さんの本は数冊読んだことがある。私が読んだそれらはどれもホラー色がつよく嫌ミスというイメージが強い。
    どちらも得意でない私は、それゆえ道尾さんの本は敬遠しがちだ。

    そんな私と本書との出会いはまったくの偶然だった。
    図書館に立ち寄った際、返却されたばかりの本が並ぶ棚に本書がぽつんと置かれていたのだ。

    まず目についたのは「道尾」という作家名。
    「ああ、あの道尾さんの本か」と、どちらかというとマイナス思考で手に取ったのだが、表紙をみて気が変わった。
    どこか懐かしいこのイラスト。誰もが小さいころ一度は見たことがあるであろうテイストのこのイラスト。

    おや、これは?と思って裏表紙の説明を読んだ。
    ====
    哀しい現実を飛び越えてゆく――。
    最高の技巧に驚嘆必至、傑作長編ミステリー。
    =====
    この言葉で、「あれ、もしかしてこれは(私が知ってる道尾さんの)いつものと違う???」ということで急遽借りて読んでみることにした。

    結果、読後感は心があたたかくなるとてもよい本だった。
    救いのある話が私は好きだから。

    とちゅう、だれもが陥る可能性のある「人間の闇、心の闇」がしっかりすぎるほど描かれていて、とくに夜中に読むにはつらい場面があるには、ある。そのへんの描写が本当にうますぎて、そこが道尾さんの道尾さんたる所以なんだろうなあ、と全力で褒めたいんだけど、やっぱりつらいものはつらい。
    「ノエル」なんて題名になってるけど、これ、やっぱり「ノワール」なのか。東野圭吾の「白夜行」ばりに、ばりばりそっち方面に行っちゃうのか! と危惧したのもつかの間、ああ、よかった。救いがあった~~~。

    こんな感じの短編が3つ。どれも童話を介して語られていく。
    そして最後にこの短編3つがすべてつながるという、私にとっての伊坂幸太郎のような構成になっている。(いや~、ここまで縦にも横にもつなげたのは、なかなか素晴らしい手腕です。道尾さんの新たな面を発見!)

    一部に子供向けの童話という手段がとられているため、その部分はひらがなが多く、ファンタジー要素が過分で、そういうものと波長が合わない方はもしかするとプロローグからして合わないかもしれない。
    でも、そうでないなら、ぜひ一度手に取ってほしいおススメの一冊だ。
    読了後あらためてプロローグを読むと、あ~~、なるほど~~~、ここで全体のパズルのピースがピタッとはまる妙技が心憎い。

    こういう出会いがあるから、図書館の「今返却されたばかりの本の棚」は侮りがたし!!!
    よい時間をいただきました。機会があれば再読したい一冊です。

    p301
    生きていても、いいことなんてないんですよ。
    かぶと虫はそういった。

    p302
    それでね、私、自分の身体に何だか急に力がわいてくるのを感じたんです。何でしょうねえ、あれは不思議なもんで、だって口に入ってきたのはただの水ですよ。飲もうと思えば、いつでも飲めたんだ。でも私は飲まなかったし、誰も私に飲めって言いもしなかった。自分が生きていくことに精一杯だったんですね、みんな。そんなとき、偶然にも口の中に水が飛び込んだ。なんだってあのとき、あんなに力がわいてきたんだろうなあ。そこんところは、いまだにわからないんですけどね。まあ、わかるかわからないかなんて、けっきょく大事じゃないんです。大事なのは、いま私がこうしていられることですよ。


    ===データベース===
    孤独と暴力に耐える日々のなか、級友の弥生から絵本作りに誘われた中学生の圭介。
    妹の誕生に複雑な思いを抱きつつ、主人公と会話するように童話の続きを書き始める小学生の莉子。
    妻に先立たれ、生きる意味を見失いながらボランティアで読み聞かせをする元教師の与沢。
    三人が紡いだ自分だけの〈物語〉は、哀しい現実を飛び越えてゆく――。
    最高の技巧に驚嘆必至、傑作長編ミステリー。

  • 同作者の龍神の雨が面白かったため当本を買ってみたが、龍神の雨の方が面白かった。ミスリードなのかもしれないが、文が分かりにくいと感じた。(それが良さならば私は苦手)。絵本の量が割と多めでそこはあまり読んでいない。結果的に元教師のおじいちゃん生きてるみたいでよかったってだけの感想。あと夏実優しい。ハッピーエンドちゃんちゃんって感じがすごいする。お母さん石鹸で死んでないのかいってなった

  • 児童文学でつながる3編の連作小説

    それぞれの話の中、不穏な空気は漂いつつも、だれも悲しくさせない結末に辿り着いてにっこり
    特に「光の箱」が好きだった(ミスリードにもちゃんと引っかかったし)

    作中に出てくる児童文学、本当に絵本になってくれたらいいのに
    蛍とカブト虫とヤモリの話とか、大人も考えさせられる絵本になりそう

    お話を自分で作ることは難しい
    でも、誰かが作ったお話の中に逃げ込む感覚は身に覚えがある
    本を読む時間、物語に潜り込む時間は孤独ではあるけど
    みんなそうやって逃げ込める場所を持ってるのかなと思うと少し安心する

    物語好きを包み込むみたいな優しいお話だった

  • 4周してる、ふと読みたくなるときがある。ずっと手放さない本になると、なんとなく思う

  • 物語に対する考え方は好きです。でもちょっと作者の描き方はあまり好みではないです。

  • 「道尾秀介」の長篇作品『ノエル―a story of stories―』を読みました。

    2月の始めに読んだ『鬼の跫音』以来、12冊連続で「道尾秀介」作品です、、、

    書棚にあった「道尾秀介」作品の在庫も、本作品が最後の一冊… 寂しいですが、暫しの間はガマンですね。

    -----story-------------
    現実に立ち竦み、自分だけの〈物語〉を紡ぐ三人の男女。
    極上の技が輝く長編ミステリー。

    孤独と暴力に耐える日々のなか、級友の弥生から絵本作りに誘われた中学生の「圭介」。
    妹の誕生に複雑な思いを抱きつつ、主人公と会話するように童話の続きを書き始める小学生の「莉子」。
    妻に先立たれ、生きる意味を見失いながらボランティアで読み聞かせをする元教師の「与沢」。
    三人が紡いだ自分だけの〈物語〉は、哀しい現実を飛び越えてゆく――。
    最高の技巧に驚嘆必至、傑作長編ミステリー。
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    別々に思えた三つの作品が、実はつながりのある物語だったんだ… という構成のチェーン・ストーリーです。

     ■光の箱
     ■暗がりの子供
     ■物語の夕暮れ
     ■四つのエピローグ
     ■解説 谷原章介

    『光の箱』は、童話作家の「圭介」とイラストレーターの「弥生」が、中学生時代に虐めから逃れるために自分たちだけの世界を築こうとするが、同級生の「夏美」の登場により二人の間に大きな溝ができてしまう物語、、、

    でも、この作品… 「マサキ」と「正木」と「昌樹」や、同じクリスマスシーズンの雨の夜のホテルでの出来事等で、うまーくミスリードされる仕掛けがあって、頭の中で描いていた暗い結末とは、全く異なる明るい未来が感じられる展開が待っており、愉しく読めました。


    『暗がりの子供』は、母親に子どもが宿り複雑な感情を抱いているときに、大好きな祖母が倒れて入院し、その際の父と母の祖母の扱いに関する会話にショックを感じてしまった小学生の「莉子」が、童話の続きを自ら綴り始め、母親への黒い思いを募らせる物語、、、

    この作品は時間軸がわかりにくくなっていて、それでうまーくミスリードさせられました… 妹となるはずの命を殺めてしまったかと錯覚してしまうような展開でしたが、こちらも頭の中で描いていた暗い結末とは、全く異なる明るい未来が感じられる展開でしたね。


    『物語の夕暮れ』は、最愛の妻を喪い自ら人生に終止符をうとうとする元教師「与沢」が、昔、暮らしていた家に童話作家が住んでいることを偶然、雑誌で知り、祭りの囃子を電話口で聞かせてほしいと依頼し、その音を聞きながら、死のうとする物語、、、

    このエピソードの結果は、次の『四つのエピローグ』で明らかになります。


    『四つのエピローグ』は、読者に隠されていた事実が明らかになり、三つの物語がひとつの環としてつながっていく物語、、、

    「与沢」の自殺は、「莉子」の妹「真子」の機転により未遂に終わり、「与沢」が電話した家には、夫婦となった「圭介」と「弥生」が住んでおり、しかも、「与沢」は「圭介」が小学校時代の担任の先生… この4人は、今後も良い関係を築いていけたんじゃないかと思います。


    それぞれの切ない人生を想いながら、じーんとしちゃう作品でしたね… 挿話として使われている童話もなかなかのもの、、、

    それはそれで出版されてもイイんじゃないかと思いました… 現実を生きるために、物語って大切なんですね。

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著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

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