サービスの達人たち (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101362519

作品紹介・あらすじ

人が求めるサービスがあれば、そこには必ずプロフェッショナルがいる。ロールスロイスを売りさばく辣腕営業マンから、接客の真髄をみせる伝説のゲイバーのママ、そして、あのオードリー・ヘップバーンをも虜にした靴磨きまで、技を極めた達人たち。名もなき"職人"である彼らの姿を追いながら、本物のサービスとは何か、サービスの極意とは何か、に迫った九つのノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 読む前に想像していたよりいい本だった。いわゆるビジネス系の安手の自己啓発本みたいなものかなと思っていたんだけど、各人の生い立ちなども紹介しながらその人ならではのサービスのありようを紹介している。
    いってみれば、彼らは(……そう、彼らはであって彼女にあたる人は本書にはいない。おかまはいるけど)その道一筋の人たちであり、そういうのってけっこう男性的な感じがする。なぜなら、男はいろんなことをいっぺんにやるのがあまり得意でなく、一つことを突き詰めていくほうが向いている気がするから。
    彼らにしてみれば功名心とかスキルとかいう意識でやっているのでなく、ただただやっている……というかそういうふうにしか生きられないのではないかしらん。だから効率的なスキルを紹介するばかりの安手な自己啓発本とは一線を画しているのかと。

  • 古き良き昭和の時代に活躍した人の生き様を描いたルポ。
    解説にもあるように、社会の裏側をあぶり出すルポはあるけれど、
    善良な人に焦点をあてたこの本はとても魅力的です。

    儲けるためとか出世のためではなく、
    そうせずにはいられないからする。
    サービスの真骨頂ですね…。

    サービス業を、仕事、義務としてではなく、
    その人の生き様として、そう行動する。
    素敵な生き様がたくさん詰まっています。

    好きな章は、
    ロールスロイスを売り続ける男
    ヘップバーンも虜にした靴磨き
    です。

    前者は、高級車を売る仕事をしているからといって、自分もお金持ちになったような気にならず、一線を引いてお仕事をすること。
    若いお客様も、長い目で見て接客されていること。
    言葉遣いは丁寧に、身だしなみはきれいに。
    家族を大切に…
    とても気品のある方なんだろうなと伝わってきます。

    後者は、靴を愛し、丁寧に丁寧に、磨き上げ、多くのお客様を魅了されているシューシャインサービス。
    だけど、靴を受け取りにこないお客様には、少し厳しい見解を持ち合わせていて、
    それも靴に対する確固たる信念ゆえ。

    自分のセオリーを持って、生きる人の生き様が、こんなに美しいものだなんて。
    見習って、私も生きたい、と気を引き締められる本です。

  • サービス業の人達の、どれだけ自分の仕事に
    誇りを持っているか、が分かる内容。

    ここまで仕事に打ち込めるか、と言われたら
    どうなのだろうか、と自問自答します。
    すべて、自分の仕事に打ち込んで、何かに気づいて
    貪欲に前に進んでいる気がします。

  • おもてなし系の仕事のテクニック的な紹介かと思ったら、あまり見聞きすることのできない職種における伝説のプロフェッショナルとも言える人々の回顧録的なもの。いまだ現役の方もいるが、引退された方も含め昭和の時代からの生き方、働き方は刺激的。

  • 形としては残らないが、人の心に残るサービスの職人たち9人の物語。

    ふらりと販売店に入って来、場違いな雰囲気の20代前半の若者にも
    「客」として接するロールスロイスの営業員。今はほぼ絶滅したと言って
    もいい大型キャバレーのナンバーワン・ホステス。東京大空襲で焼け野
    原となった東京で、阪神淡路大震災の被災地で、必死に電報を届けよう
    とする配達人たち。

    物作りでこそないが、彼等・彼女等には「職人」の心が生きている。

    本書で取り上げられている東京都千代田区神田の天ぷら屋の2代目の
    エピソードがいい。

    父の店に弟子入りした2代目は婚約を期に、父から鍋前の花台を受け

    継ぐ。ある日、昼食の天ぷら定食を食べいた常連客が血行を変えて

    突進して来た。

    「今日のかき揚げ、誰が揚げたんだ」

    自分であると、2代目は蚊の鳴くような声で答える。すると常連客は

    泣き出した。

    「そうか、よかった。もう大丈夫だ。ずいぶん長い間、まずい天ぷらを

    食わされたけど、やっと一人前になった」

    客が店を育てた時代があったんだねぇ。ぐっと来るものがあったぞ。

    気持ちが温かくなる1冊である。

  • 281

  • サービスのノウハウ的なものが書いてあるかなと思ったんですけど、サービス系のすごい人たちの話でした。

    かっこいいです。


    なんてゆうか、僕がこんなとこで彼らの批評をするのは申し訳ないくらいかっこいいです。

  • 仕事を義務として考えたり、ここからここまでと限定的に決めたり、今日はあと何時間かなと時間的に見たりするような人には到達できない境地がここにはある。いつも最高とは何かと考えに考え抜き工夫に次ぐ工夫を重ねミリ単位の調整を続けることができなければあっという間に淘汰される世界だ。こうした日々の努力の先にナンバーワン、オンリーワンというタイトルが用意されているのかもしれない。

  • ゲイバーのママ、電報配達員、風呂屋の三助、伝説の興行師、靴磨き等々の達人たちから学ぶサービスの極意。しかし選択がマニアックすぎ、その職業自体を描くのにエネルギーを割きすぎた事で、本来のテーマである「サービスの極意」が霞んでしまった。これ筆者の失敗でしょう。

  • サービスの達人たちは、その人生も魅力的でした。達人たちのサービスを描いたこの本からは、それぞれの町、それぞれの時代の空気が色濃く漂ってきます。「東京っ子が通う『並天丼』の魅力」「チーフブレンダ―の技と素顔」「命懸けで届けた被災地への電報」「ヘップバーンも虜にした靴磨き」が特に気に入っています。

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著者プロフィール

野地秩嘉(のじ・つねよし)
ノンフィクション作家
1957年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、出版社勤務を経て現職。人物ルポルタージュ、ビジネス、食、芸能、海外文化など幅広い分野で執筆。著書は『サービスの達人たち』『イベリコ豚を買いに』『トヨタ物語』『スバル―ヒコーキ野郎が作ったクルマ』『高倉健インタヴューズ』『日本一のまかないレシピ』『キャンティ物語』『一流たちの修業時代』『ヨーロッパ美食旅行』『ヤンキー社長』『新TOKYOオリンピック・パラリンピック物語』『京味物語』など多数。『TOKYOオリンピック物語』でミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。

「2022年 『伊藤忠 財閥系を超えた最強商人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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