月の砂漠をさばさばと (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101373270

感想・レビュー・書評

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  • 日常よりも日常らしいけれど、嘘くささがない。何気なくて、家族と過ごす幸せや温もりを感じる瞬間を丁寧に書き起こしていて、疲れた時に読んで癒される本。

    お母さんとさきちゃんのほのぼのして温かい日常には、ごく稀に、スウっと風が吹き込むように、父の不在(離婚と思われる)が現れます。無理だと言われてもさきちゃんが野良猫を連れ帰ろうとする話がありますが、お母さんは猫だけでない色々なものを重ねていたのかも。
    猫を飼うのは無理だけど、お母さんはいつだってさきちゃんを想っていて、一瞬一瞬、一緒に過ごす時間を大切にしていて、それが端々に描かれています。文章であの空気感をこんなに表現できるんだ……と、びっくりするくらい、子どもの頃の自分を呼び起こしてくれました。

    家族との関係にもよると思うけど、家を出て1人で頑張っている人とかに読んでほしい。それも心がザラザラした日に。もうスマホなんて置いて、ソファとかベッドとかに体を包んでもらいながら、静かにのんびり読んで、それで次の休みになったら実家に帰って、家族となんでもないけど大切な時間を過ごしてほしい。

  • さきちゃんええ子やなぁ…
    「猫が飼いたい」はお母さんの気持ちもよくわかるからよけい泣けた…さきちゃん…
    子どもがいる日常がいつもこんな風でないのは知ってるけど、多幸感を凝縮した物語。
    いつも言ってるけど北村薫さん女性を書くのうますぎるだろう…

  • わたしもいつか子どもに巡り会えたら、
    こんなふうに接したいって思いました。

    小さくて優しいさきちゃんの心を受け取って
    さきちゃんの感性を喜ぶおかあさんがとってもステキ

    あたたかい二人の時間に
    おじゃましました

  • 9歳のさきちゃんとお母さんのささやかな日常。
    お互いに友だちみたいな関係って素敵。
    こんな風に2人の生活がずっと穏やかで幸福感に満ちたものであり続けて欲しいと願ってしまう。
    おーなり由子さんのやわらかいタッチの絵が2人の空気感にぴったりでとても癒される。

  • とても素敵なお話でした。
    さきちゃんとお母さんの二人の日々を短編にしたものです。
    お父さんはいません。死別なのか離別なのかは定かではないけれど、たぶんさきちゃんの独り言で離別なのかな?と思われます。
    親子の素敵な関係が描かれていて、とても心がほっこりしました。
    「さそりの井戸」「ふわふわの綿菓子」「連絡帳」「猫が飼いたい」が特に良かった。

  • 女の子とおかあさん、二人暮らしの日々を優しく描く、かと思いきや、少しどきっとするところもあり。やっぱり北村薫はほんとは女性なんじゃないかと思ってしまう。

  • #読了。
    さきちゃんと作家のお母さんの、ほのぼのとする二人暮らしを描く。二人のやりとりや会話からあたたかい気持ちや大切なものが何なのかを考えさせられる12の話。
    何気ない生活の中に、少しの寂しさや切なさを感じさせる場面もあるが、それも生活の1コマとして大切にしている様子が伺える。読後感はよく、あたたかな気持ちにさせられると同時に、子供の感覚や感情表現の素晴らしさを再認識する作品。

  • 現実を見がちなわたし。
    でも娘たちにはこんなワクワクがいっぱいの生活が楽しいに決まってる。
    私ならこうしちゃうなってとこも、ちゃんと向き合ってあげて一捻りもふた捻りもできるこのお母さんがとっても素敵に見えた。
    試しに寝る前のお話を1話みたいにしてみたら、娘たちの目が爛々とした! キラキラしてた。
    おーなりさんの挿絵がすごくほっこり。そして少し切ない。
    楽しい嬉しいだけじゃない、日常のいろんな感情を、それでも愛情あるフィルターで見つめる2人。これって人生において一番大事なことなんじゃないかと思う。何が起こるか、よりどう感じていくか。
    楽しく生きれば楽しい人生になる!

    • あいさん
      kyocooさん、ありがとうございます!
      応援してもらって心強いです୧⃛(๑⃙⃘◡̈๑⃙⃘)୨⃛
      そうですよ〜今しかない愛おしい時間を大...
      kyocooさん、ありがとうございます!
      応援してもらって心強いです୧⃛(๑⃙⃘◡̈๑⃙⃘)୨⃛
      そうですよ〜今しかない愛おしい時間を大切に過ごしてください。

      「十角館の殺人」はおすすめです。
      いつか機会があればぜひ(*≧艸≦)

      「風が強く吹いている」は箱根駅伝の話なので12月頃に読むとじわじわきますよ〜

      「君はいい子」早速携帯に登録しました。
      中脇初枝さんは絵本も書かれているかな?
      聞いたことあります(^-^)/
      また、ベストワンを話しましょうね♪
      2016/04/15
    • kyocooさん
      ありがとうございます♩

      なるほど!「風が強く吹いている」は12月ですね!いとこがよく出場してたので、よりリアルに読めそうです◡̈

      ...
      ありがとうございます♩

      なるほど!「風が強く吹いている」は12月ですね!いとこがよく出場してたので、よりリアルに読めそうです◡̈

      今、彩瀬まるさんの「神様のケーキを頬ばるまで」が手元にあり、これから読もうかどうしようか迷ってるとこですw
      初めての作家さんです!
      2016/04/16
    • あいさん
      こんにちは(^-^)/

      彩瀬まるさんの作品読む人多いですよね〜♪
      感想楽しみに待っています。
      私は「桜の下で待ってる」を読みまし...
      こんにちは(^-^)/

      彩瀬まるさんの作品読む人多いですよね〜♪
      感想楽しみに待っています。
      私は「桜の下で待ってる」を読みました(⁎˃ᴗ˂⁎)
      ほんわかしたお話でした。

      「クライマーズハイ」私はドラマで見た事があります。
      「クライマーズハイ」が好きなら「64」もバッチリですね(^o^)v
      私も楽しんで読むぞ〜
      2016/04/17
  • 2人暮らしのさきちゃんとお母さん。
    お母さんは物書きの仕事をしているので、普段は家にいます。
    寝る前には布団の中で、できたてのお母さんのお話を聞くことができるという、羨ましい環境!!
    そんな、さきちゃんとお母さんの日常のやり取りが、ほのぼのとしていて、なんともいいのです。
    でも、2人暮らしゆえの、ちょっと切ない話しも。
    子どもも、こんな風に大人に、親にさえも気を使って生きている…ということを思い出しました。

    読み返して気づいたのですが、文庫版の解説を梨木香歩さんが書かれていました。
    解説の言葉も、いいのです。
    「日常は意識して守護されなければならない。例えばこういう物語で、幸福の在処を再確認する。そういう時代に、私たちは生きている。」
    そうなのです。
    丁寧に暮らすことを意識していないと、日常はどんどん楽な方へ、愛情をかけるところから遠いところへ流れていってしまう気がします。
    だからこそ、さきちゃんのお母さんのように、ユーモアあふれる暖かい愛情を子どもに注げる母親でありたいものです。

  • とても優しい小説である。
    だけどそれだけではない、悲しい家族の事情や丁寧に生活することの尊さが感じられた。

    ふわっとした生活ではなく、地に足のついた生活をしていることが読んでいて伝わってきた。
    日々は同じことの繰り返しではない、たった一度きりのものである。当たり前のことだけど、普段とくべつに意識はしない。わたしには子どもがいないから、それを感じる機会が少ないのかもしれないけれど。

    親と子どもの関係は、難しいと思う。
    良好な関係を築くことも、何をもって良好とお互いが感じるかも、一概には云えない。
    親が子どもに教えられることには限りがあるし、子どももいつか、親が何でも知っているわけではないことや、真実だけを伝えてくれるわけではないことに気づく。
    さきちゃんはきっと、まだ、お母さんの話に素直に受けとめることができる年齢だし、お母さんもさきちゃんをそうやって育ててきた、現時点での結果が、この物語のふたりなのだ。
    ずっとこのままでいてほしい、と願いたくなるような。
    だけどさきちゃんは成長するし、お母さんだって老いる。さきちゃんはいつか家を巣立っていくだろうし、お母さんもどうなるかはわからない。

    地に足がついたふたりだからこそ、その先のふたりについても考えずにはいられなくなる。
    優しいだけではない小説だった。

    梨木香歩さんの解説もとてもよかったです。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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