- Amazon.co.jp ・本 (483ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101381176
作品紹介・あらすじ
ヒトラーとスターリンの悪魔の盟約から逃れるため、ポーランドを離れ神戸に辿り着いたユダヤ人少年。彼はそこでかけがえのない友を得る。時は移り現代、英国情報部員スティーブンは、アメリカ人捜査官コリンズと共に金融市場に起きている巨大な異変を探り当てた。全ては歴史に名を刻む外交官杉原千畝から始まっていた。作家手嶋龍一はここまで進化した。
感想・レビュー・書評
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スマートな作品だと思います。
杉原千畝がふりだした命のビザが紡く、人と人との縁
平行して、シカゴ市場を舞台に、不自然な金融市場の動きと、その動向を追う、UKのインテリジェントオフィサー。
世界に張り巡らされたユダヤのヒューマンネットワークの一つがスギハラ・サバイバルなのです。
目次は、以下の通りです。
プロローグ 梅の橋 2008年9月
第1章 出ポーランド記 1939年
第2章 ふたりの少年 1940年
第3章 マーケットの怪 2009年春
第4章 それぞれの夏 1971年8月15日
第5章 ピカレスクの群像 2007年初夏
第6章 小麦とテロリスト 2009年6月
第7章 セレクトセールの夏 2009年7月
第8章 ブナの森のモーゼ 2009年秋
第9章 ソフィー・リング 2009年晩秋
終章 梅の橋 2010年春
主要参考文献
著者ノート
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ポ-ランドの古都クラコフで小さな書店を構えていたユダヤ人一家が、隣国リトアニアに赴任してきた日本人外交官・杉原千畝に発行した「命のビザ」を手に入れ、シベリアから日本海を経て神戸に寄留し、約束の地アメリカへと渡った。 杉原千畝が救った流浪の民の末裔が、戦後の金融先物商品の創成に見逃せない役割を果たし、ユダヤ財閥として大輪の花を咲かせることに・・・。 前作『ウルトラ・ダラ-』の英国情報部員スティーブン・ブラッドレ-が再び登場して、金融取引を題材に貨幣経済をめぐる情報の争いが展開するインテリジェンス小説である。
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『スギハラ・サバイバル』は『ウルトラ・ダラー』に続く、手嶋龍一の続篇。全体からみるときっかけでしかないが、杉原千畝によるリトアニアあるいはポーランドのユダヤ人に対する通過ビザ発給をトリガーにした、2人のユダヤ人とその親友のつながりが物語の主軸となっている。
そして、ブラックマンデーや9.11など国家あるいは国際社会を揺るがす事件の前の株の空売り・買い占めとその影響を丹念にに調査していた調査官と、その親友であり英国諜報機関員であるスティーブンの調査から、背景が明らかになってくるというストーリー展開である。
『ウルトラ・ダラー』はインテリジェンス小説を標ぼうし、大胆なおストーリー展開ながら、その小説としての表現のイマイチさからどうも物足りないというか読みにくさがあった。一方本書『スギハラ・サバイバル』は小説としての読みやすさという表現の巧拙は格段に向上しており、小説として先ず先ずの仕上がりとなっている。スティーブンと親友の興奮したやりとりが、そのまま小説のスピード感に繋がっている。
ただし、インテリジェンスの部分はというと、スティーブンやその同僚の活躍がどちらかというと探偵が謎を読み解く的な展開がそう感じさせるのかもしれないが、なんというか解説小説のような違った物足りなさを感じてしまうのである。
きっかけでもあり、杉原千畝自身がインテリジェンスオフィサーであったことが本書の中心話題であるなら、ここがもう一段深められるととは思ったのが、シカゴ先物市場をはじめとする株価操作系に主眼が移ってしまい、それはそれで興味深いのではあるが、中途半端になってしまったのだろうか。
インテリジェンス小説はいわゆる探偵ミステリー物に比べても取り扱う範囲やバックグラウンドが幅広く、難しい領域ではあると思う。それだけに著者に期待するところも大なのである。 -
前作同様大変面白く読ませていただきました。今回は杉原千畝がある意味キーワードで金融市場での異変が始まりである意味悪者が存在しない小説で有り最期はどう解釈すればいいのか判りませんでした。ある意味世界は金融市場が大きな影響を与えている。私は余りすきでは無いですが!
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面白すぎる。杉原とユダヤ人の逃避行。そして雷児との友情。情報部員と芸妓。面白い。
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リアルな時代背景を嘘っぽさで飾りつける感じが、ウルトラダラーとともに、大好きな作品。
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白石仁昭氏の杉浦千畝を読んだ後だったので、背景が良く理解できた。昭和初期の日本や上海の雰囲気を感じた。
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前作『ウルトラダラー』は今作を読みたくて読んだので、前作を読み終えてすぐに読み出し、すぐに読み終わってしまった。
杉原千畝の命のビザによって出会うことのできた生涯の友との友情が感動的。
インテリジェンスオフィサーとしても知られるようになった杉原千畝がインテリジェンス小説に登場することはどこか誇らしい。
シリーズが続くならぜひ読みたい。