あつあつを召し上がれ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.56
  • (47)
  • (127)
  • (132)
  • (26)
  • (3)
本棚登録 : 1482
レビュー : 145
  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101383415

作品紹介・あらすじ

この味を忘れることは、決してないだろう――。10年以上つきあった恋人との、能登へのお別れ旅行で味わった最高の朝食。幼い頃に、今は亡き母から伝授された、おいしいおみそ汁のつくり方。何年か前に家族みんなで並んでやっとありついた、天然氷でつくった富士山みたいなかき氷……。ときにはほろ苦く、ときには甘く優しく、身も心も温めてくれる、食卓をめぐる7つの感動の物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • いやぁ~、お腹鳴る鳴る( >_<)
    僕にとって小説でも映画でも
    食べるシーンがちゃんと書けてるか書けてないかが
    その作品に入り込めるかどうかのひとつの基準です。

    食べることは生きることの基本だから
    そこをすっ飛ばしていると
    なんか一気に嘘臭く思えるし。


    寝たきりになり食事を採らなくなったバーバが
    初めて食べたいと言ったのものは富士山の形をしたかき氷だった…
    『バーバのかき氷』、

    中華街一汚い店は
    実は中華街一美味い店だった(笑)
    『親父のぶたばら飯』、

    10年付き合った彼とのお別れ旅行が切なくて妙に泣けた
    (コレは20代では泣けんかったやろな~)
    『さよなら松茸』、

    亡き母の意思を受け継ぎ、
    父親のために毎日味噌汁を作ってきた娘が嫁ぐ日
    『こーちゃんのおみそ汁』、

    母と娘で作る、亡き父が好きだったきりたんぽ鍋
    『季節はずれのきりたんぽ』、

    など、 本書はタイトルから連想するように
    食にまつわる出会いと別れが描かれた7つの短編集です。

    中でも『親父のぶたばら飯』の
    見た目は薄汚れた店構えだけど、
    料理は絶品って話にニヤリ(笑)

    僕が長年暮らしていた大阪にも
    そんな店がありました。
    昭和の香り漂う古びた暖簾に少し傾いた店構え。
    (いや比喩じゃなくてホンマに傾いてます!)

    店の中には
    「コレ、いつの時代から置いとるねんっっ(笑)!!」
    っと思わずツッコんでしまいたくなる、
    手垢と醤油のシミの付いた「どろろ」「気まぐれオレンジロード」「ドカベン」「マカロニほうれん草」「パタリロ」「ナイン」「陽当たり良好」「ツルモク独身寮」など、
    なんとも懐かしき漫画がズラ~リ。

    そして壁にはバブル期へタイムスリップしたかのような
    鈴木保奈美が水着でビールジョッキを持った色褪せたポスター(苦笑)
    ↑現石橋貴明夫人。知らない良い子は
    おうちの人に聞いてみよーっ♪

    その上、店の中を店主の子供が
    タッタカタ~っと勢いよく走り回り、
    挙げ句の果てには僕の大好物、
    鶏の唐揚げの載ったお皿に
    店主の子供の投げた赤いゴムボールが
    見事にカップインする始末(汗)( ̄○ ̄;)

    オシャレでもなんでもない
    そんな『三丁目の夕日食堂』が僕はなぜか好きでした。
    (漫画「三丁目の夕日」に出てきそうな昭和な中華店だから勝手に命名)


    まずここの焼飯が
    奇跡的にウンマイっっ!!!
    (黄金焼飯とまた勝手に命名!)

    ホッペが落っこちる
    美味さとはまさにこのことです!

    メニューがこの焼飯だけなら、
    もっと繁盛したんやろうなぁ~って
    いつも思ってました(苦笑)(^_^;)
    (何故ならそれ以外のラーメンや焼きそばや酢豚や八宝菜はおそろしくマズいのです…)

    でも客に媚びてない店主の姿勢と、
    (写真撮らせてもらえんかったし)
    この焼き飯の美味さのギャップに何故かハマってしまって、
    ことあるごとに通いつめてました。
    (とんねるずでお馴染みの
    いわゆる『きたなシュラン』ですね笑)

    子供たちが店ん中を走り回るのを
    昭和の漫画片手に
    ボーッと眺めてるのも心地いいし(笑)、
    高い位置に備え付けられた
    あくまでも店主が見たい番組を流しているだけのテレビも
    父親が威厳があった時代の昭和な風景の一つを思い出させてくれるし、
    (まぁ、殆どが阪神タイガースの野球中継で、常連客たちはみな、それぞれが監督となり、テレビの中の選手たちを采配し、檄を飛ばします笑)

    『痛っ!コラ、
    どこボール当てとんねんっ!!(`ε´)』

    ってワンパク過ぎる子供たちに苦笑しながらも
    うどんの中にそばが1本混じってるだけで
    その日1日幸せ気分が持続する安上がりな僕だから、
    なんやかんや文句言いながらも
    何でもない日常に幸せを感じてたような気がします(笑)


    僕たちの身体は、僕たちが食べたもので作られていて
    何を食べるかで、細胞の質や性格が決められる。
    人間を形成しているのは食であり、
    食べ方で人生が変わるし、
    食事とはその人の生き方そのものなんだと
    僕は思うのです。

    記憶のかけらみたいなものを共有するのが、共に生きたってことだとしたら、
    自分が選びとった大好きな人と食事をした思い出は
    ほかのどんな記憶より愛しく懐かしく、
    自分を形づくる核となって
    いつまでも輝き続けるのだと思います。

    しかし、食べることを共有できる人がいるということは
    なんという幸せなことだろう。

    濃厚な肉汁が口の中で炸裂する熱々のしゅうまい。
    細切りにしたハムや野菜が入ったトロトロのふかひれスープ、
    煮込んだ豚バラに艶々と光る葛あんと小松菜を散りばめた豚バラ飯。
    サクッという音と共に、
    ふくよかな香りが囗の中いっぱいに広がる松茸のフライ。
    舌の上でトロける能登牛のすき焼き。
    人参、玉ねぎ、大根、ジャガイモがほろほろになるまで煮込まれたポトフ。

    本書に登場する沢山の料理と共に
    僕自身の食の記憶を共にした人たちの笑顔を思い出しながらの
    楽しい読書でした。

    どちらかといえば、悲しい話が多いけれど
    だからこそ人は食べるのです。

    悲しみよさようならって。



     

  • 食べ物をめぐる短編7本。
    人生の節目に味わった印象的な食べ物とは。

    同棲して10年の恋人と、予約しておいた旅行が、お別れ旅行になってしまった。
    奥能登の旅館で食べる最高の食事。

    ぼけてきた祖母が、何も口にしなくなった。
    必死で看病する母。
    孫は、祖母が思い出したらしいカキ氷を求めに走る。

    結婚前の娘が作るお味噌汁。
    早く亡くなった母が、まだ幼い娘に教え込んだ味噌汁の味とは。泣かされます。

    夫のショー造さんと、いつものパーラーへ食事に行く老婦人。
    店やメニューが何か変わったと思いつつ、懐かしむ思い出は‥

    豚のポルクを愛人にしている男。
    ある絶望からパリへ、最後の晩餐を味わいに出かける。
    え、愛豚を最後に食べる話か?と思ったら‥
    醜くて美しい男の愛人の話。

    きりたんぽにはうるさかった亡き父のため、母と娘は二人できりたんぽを作ることにしたのだが、その味が‥?

    生きることは、食べること。
    泣きながらでも、生きるには食べるしかない。
    ふとしたことで深まる、切ない味わい。
    香りが立ちのぼるような描写が、とても美味しそう。
    ちょっとタイトルの印象と内容には、ずれがありますが。
    具体的に出てくる食べ物も印象的ですが、ひとつひとつ作品の味わいが違うのが、何とも面白かったです。

  • *この味を忘れることは、決してないだろう――。10年以上つきあった恋人との、能登へのお別れ旅行で味わった最高の朝食。幼い頃に、今は亡き母から伝授された、おいしいおみそ汁のつくり方。何年か前に家族みんなで並んでやっとありついた、天然氷でつくった富士山みたいなかき氷……。ときにはほろ苦く、ときには甘く優しく、身も心も温めてくれる、食卓をめぐる7つの感動の物語*

    どのお話も、お料理と登場人物との絡みが素晴らしい。一方が一方を引き立て、補い、合わさって絶妙な味になる。いつまでも優しい味が舌の上に残っているような短編集。

  • 食事を食べるということは、生活の大きな部分を
    占めている行為だと思います。

    その分だけ食べるもののお話やエッセイは、私たちに
    強く訴えかけたり、ああ、わかるわと共感させる力を
    持っているのではないかしら。

    文章で読むお料理たちは、時にどういうわけか
    現実に食べる食事より美味しかったりして、
    焦ったり楽しくなったりします。

    悲しい時、うれしい時、何かを受け入れる時
    ひとはただ理性だけでそう出来るわけでもなく。

    美味しい食べ物と一緒に、思い出や、近しい誰かの
    気配があったればこそ、人生をやっていけるのかも
    しれません。

    どんな気持ちも生きているから感じるもの。
    お料理を食べることで

    「まだあなたは生きているよ。この気持ちもね。」

    と、私たちは励まされ、無自覚のうちに
    歩みを進めさせてもらっているのかもしれません。

    そういえば、長い付き合いになった恋人…で
    一緒に暮らした二人目の人は、食べることが好きで
    彼と機嫌よく美味しいものを食べるのが大好きで。

    あ、本には関係ない。そうですね。でも。

    食べることと、心のなかの雫みたいな、大事な
    でも些細な想い出は、いつもつながってると教わった
    気がします。

    どの作品の言葉遣いも荒れた言葉がなく、ひといき
    つかせてくれて。

    小川糸さん、他のお作も読んでみたいな。

    田辺聖子さんとか今江祥智さん、
    あと…よしもとばななさんとかも
    読んでこられたのかしら。
    もしかしたら永井荷風とかも。

    親父のぶたばら飯からいとしのハートコロリット
    まで、どれも大好きです。薄いご本だけど大満足!

  • ぶたばら飯、、食べたい!!
    本当、『美味しい』の感覚がにてるって人生ではけっこう大事よね。
    やっぱり食べることって生きることだから。
    誰かの思い出の味になりたいな。

  • 小川糸さんの本は、いつも食と丁寧に向き合いたいと思わせてくれる。

  • 小川糸さん、初読み。食べ物にまつわる柔らかい短編7本。ほんわかした物語とちょっぴり不思議なポルクの晩餐のようなお話もあり、楽しめた。
    印象に残ったのは季節はずれののきりたんぽ。そういう展開でメッセージを伝えるのかと。亡くなった人を悼む気持ちは、そのままでいることだけではなく、変わっていくことも必要だという思いがこみ上げてくる。

  • 生きることは食べること
    味の記憶
    食と人との切り離せない思い出

    どれもおいしそう

  • ちょうどいい塩梅のストーリーと、食べ物の描写で読みやすかった。ぶたばら飯食べたい!

  • 小川糸さんの食卓をめぐる7つの物語。なかでも『こーちゃんのお味噌汁』が良かった。明日嫁に行く娘が父親と囲む最後の食卓。とてもあたたかい話に涙腺が緩みました。

全145件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

小川 糸(おがわ いと)
1973年生まれ、山形県出身の小説家であり、作詞家・翻訳家でもある。作詞家の際の名義は、春嵐(しゅんらん)を使用。
2007年に初の絵本を上梓し、さらに翌2008年に小説『食堂かたつむり』を発表。同作は第1回ポプラ社小説大賞に応募し、最終選考にも残らなかった作品だったが、目に留めた編集者によって刊行され、ベストセラーとなり映画化された。同作は、2011年7月、イタリアの文学賞である、バンカレッラ賞料理部門賞も受賞している。
2017年、『ツバキ文具店』が「本屋大賞2017」で第4位にノミネート。ドラマ化もされた。続編『キラキラ共和国』も発行、代表的シリーズかつヒット作となっている。
その他代表作として、テレビドラマ化された『つるかめ助産院~南の島から~』。

小川糸の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ロビン・スローン
有川 浩
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印

あつあつを召し上がれ (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする