- Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101390314
感想・レビュー・書評
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2009年芥川賞受賞作。あまり乗り気ではない結婚をして、あまり幸せとは言えない結婚生活を送り、さまざまな不倫も経験し、仕事もそこそこの業績を残し、そんな、日本中ありとあらゆるところに存在するであろう名も無き男の物語。なんとなく庄野潤三を連想させるような、断片的イメージの連続とするするとした不思議な手触りの文章が、方法論的なこのひとの個性かとおもいます。そしてそれは、「時間」というものに対する磯崎憲一郎の関心のあり方からして非常に合っているんじゃないかなあ。「終の住処」では、人生という時間があるっていうよりも、時間があって人生はそれをなぞっている、外界が個人のあり様を決めていく。あらゆるひとを縛る「時間」は外界であり、一方的なコミュニケーションであり、それに対峙する主人公はとてつもなく無力。その時々における個人の意思決定にはあんまり意味がなくて、思いも寄らないことを言ってしまったり、一方的な語りをひたすら浴びせられたり、会話を拒否されたり、そんなことばかり。なんかこう、現実的な力の意味で無力というよりも、ひとつの生命、個体としての無力さなのかなあ、そしてそれは淡々と、静謐に描かれている。
まあ、21歳の今ではなく10年、20年後に読んだらもっとずっと染みるんじゃないか、今読んでも掬い取りきれないんじゃないか、と。わたしはまだ全体よりも、瑣末なひとつひとつに苦しめられる年代にいるのだとおもう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
うーん、深い。
私の年齢で読むには早すぎたのかも。
短い話だから話の流れに乗れないまま終わった感じ。
でもたまにハッとさせられる文章があったりもして。
これが文学なのか、と。 -
妙にユーモアの効いた絶望感のあるお話だった。
ユーモアが効いてるので読んでる最中はスラスラと楽しくページが飛んでいくものの、読み終わったあとに「なんだったんだ、これは、、、」という絶望感。
なんとなくストーナーと似てる感じではあるけど、あっちは読後感にうっすらと希望があったけど、、、こっちは反対に絶望感。時代の問題か?
あと、中年男性ってそんなにモテるの!?自分にはそんな気配ゼロだけど!? -
感想
重なり合う複数の可能性。選択することは捨てること。ああなりたかった、こうしたかった。そんな感慨は後になって湧いてくる。袋小路へ歩いていく。 -
終の住処 3
ペナント 2
解説(蓮實重彦) 4 -
非常に支離滅裂な男の話。
内容もそれほど面白くなく、あまり評価はしない。
後半の作品も同じような感じである。 -
男の結婚生活を描いた結婚小説とも言え、ある意味サラリーマン小説でもある。しかし、そのように括ってしまうには読後にあまりに不穏な手触りが残る。時間の中に、人生の中に閉じ込められているとうことが描かれる怖さ。