実りを待つ季節 (新潮文庫 み 26-6)

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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101401263

感想・レビュー・書評

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  • もう二十年近く前の本。
    たしかにその頃、書店でもよく見かけた記憶がある。

    読む前から、おしゃれ系エッセイ(インスタもブログもない時代、おしゃれで素敵なライフスタイルを発信するエッセイ)と思っていた。
    少なくとも、さくらももこ、伊藤理沙の脱力系エッセイの系列ではない、と。
    まあ、その先入観は間違ってはいなかった。

    著者が育ってきた家族、自分で築いた家族を巡るエッセイである。
    期せずして直前に読んだ南條竹則さんの『花ちゃんのサラダ』と同じ、昭和30年代の東京。
    ただし、こちらは東京郊外。
    この時代で、手料理をこだわりの食器でお客に振る舞うライフスタイルである。
    親の代からすてき系なのだ。

    ただ、親子関係に関しては、なかなか繊細に描かれていた。
    これが、単なる「おしゃれエッセイ」で片づけられないところだ。

    母恋いというのは、近代日本文学でよくある。
    しかしこれは、屈折しているが、紛れもなく『父を恋う記』だ。

    光野さんの父は、伯母のもとで育てられ、出版社の小使いとして働き始め、ようやく編集者として自立した人とのこと。
    読む限り、この世代の人として、抑圧的な父親ではないようだが、十代に入った彼女は反発ばかりする。
    自己主張の自分を持て余しながら、反抗期の常として、言われなく親につらく当たってしまう。
    気の毒なのは、大人となってからの父娘関係ができる前に、お父さんがなくなったことだ。
    さぞ、心残りなことだろう。
    きっと、両者にとって。

    父が亡くなった後、五年後くらいに、弟も病死したともある。
    彼についてはほとんど書かれない。
    この落差もとても気になる。

  • 著者の家族についてのエッセイ。
    父、母。夫、娘。
    ボーナスのわずかな残りで様々な果物を買って、家族で堪能した一夜は、なんて豊かで温かな思い出だろうと私まで胸が踊り、お父さまの最後の話は胸がつまりました。
    私もどんな別れをするのだろうか。

    そういえば、若くして亡くなったという著者の弟さんの話は書かないのでしょうか。それが不自然に感じてしまう。

  • 文章は、音読しても響いてくる気がします。青かった子どもから大人になっていく自分が、鮮やかに描かれており、ジューシーな印象でした。

  • きれいな文章に魅せられる。
    赤瀬川原平、深沢七郎をこの人から知った。

  • 私が大好きな本と言ってまず思い浮かぶのがこの本。
    随筆風だけれど、なんというジャンルに入るのかは知りませんw
    高校の時のNHK杯での課題で読んだのがきっかけなのだけれど、
    すごく読みやすいし、情景が浮かびやすい文章で書かれていて好き。

    短編のお話がたくさん入っていて、小さな玉手箱がいっぱいって感じかな。

    特に掌と紫陽花の花が特に好きです。
    紫陽花の花 から抜粋して大会には出て、もちろん好きなのだけれど、
    掌という章はいつ読んでも感情移入して泣いてしまいますね〜。


  • 気持ち悪いくらい自分の気持ちに似た文章がありました。

    学生のとき放送委員会で大会で読んだり致しました。

  • 片意地張らず、やさしく強く生きていきたいと思った。すてきな女性の本。

  • 簡単に言うと、少女時代を主としたエッセイ集。
    でも違う。エッセイと呼ぶには。切なさや懐かしさ、もどかしさ、温かさ、家族ゆえの複雑でぎっちりつまった想いが溢れ出ている。
    自分のこころも揺り起こされます。

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著者プロフィール

作家・エッセイスト。東京生まれ。小池一子氏に師事した後、女性誌編集者を経て、イタリア・ミラノに在住。帰国後、執筆活動を始める。1994年のデビュー作『おしゃれの視線』(婦人画報社)がベストセラーに。主な著書に『おしゃれのベーシック』(文春文庫)、『実りの庭』(文藝春秋)、『感じるからだ』(だいわ文庫)、『おしゃれの幸福論』(KADOKAWA)などがある。2008年より五感をひらく時空間をテーマにしたイベント『桃の庭』を主宰。

「2018年 『これからの私をつくる 29の美しいこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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