- Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101449258
作品紹介・あらすじ
五月の晴れた日に、お饅頭のようなかわいらしい子猫と出会った。親猫はおらず、病院に連れて行ったところ、特別な猫であることがわかって――。花ちゃんと名付けられた子猫が、元気に走り回るようになるまでを描いた「生きる歓び」。それから十八年八カ月後、花ちゃんとの別れが語られる「ハレルヤ」。青春時代を振り返った川端康成文学賞受賞作「こことよそ」など愛おしさに満ちた傑作短編集。
感想・レビュー・書評
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小説なのかエッセイなのか
志賀直哉が好きな私にとってはとても馴染みのある書き方
そして、猫好きな私にとってはとても共感できる話
花ちゃんとの出会いと別れ
猫には神さまがついていると私も思います
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NHK理想的本棚より
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読んだのは単行本の方だが…まぁ、いいか…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
昔の保坂氏の本よりも読みやすかったような気が…前はパソコンで原稿書いていたらしいが、今では手書きに変えたんだとか…ネコメンタリーという番組でおっしゃっていましたが…それの影響もあるのかもしれませんね。→読みやすさ 社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
どこがどうと言うよりも、なんだか小説よりもエッセイみたいな内容なんですけれども、それでもイイですね! 内容よりも文章を味わうような、そんな小説かもしれないですね…。
文章の意味よりも、リズムだとかそういうものを味わってほしいみたいな…あとがきにはそんな内容が書かれていましたねぇ…
さようなら…。
ヽ(・ω・)/ズコー -
「ハレルヤ」「十三夜のコインランドリー」「こことよそ」「生きる歓び」の四篇が収録されている。
本書のあとがきには「感動したことを書く、あるいは心が激しく動いたことを書く、この本に集めた小説はすべてそういうシンプルなものです。」と書かれている。
同じ著者による『未明の闘争』でも見られたような、文法的な逸脱や論理の飛躍が本書ではより多く現れ、「融通無碍」という言葉が浮かぶ。
『未明の闘争』での逸脱や飛躍は、読者の意識を操作するための意図的なものだというようなことを保坂はどこかで書いていたと思うが、本書でのそれは、保坂がひたすら「心が激しく動いたことを書」こうとしたことから生じた副次的なものだと思う。
「こことよそ」では、保坂のかつての映画仲間の死が描かれる。映画仲間として内藤剛志や古尾谷雅人の実名が登場する。名字だけしか出てこない長崎というのは映画監督の長崎俊一、諏訪というのはおそらく俳優の諏訪太朗のことだ。諏訪と一緒に出てくるクッキーとライムというのは誰なのか。「顔を洗ったり爪を研いだりしていた」「私はクッキーやライムや追さんや諏訪たちと…ニャアニャア騒いでいた」という記述があるので映画仲間が飼っていた猫かと思うけれども、『未明の闘争』に出てくる酔っ払い2人のシーンのモデルはクッキーとライムだ、ということも書いてあってよく分からない。よく分からないので自分はあえて猫とも人とも解釈せずに読んだ。
そういえば自分が悪夢ばかりを続けて見ていた時期に、めずらしく懐かしくて温かい感じの夢を見て目が覚めたことがあって、もう内容は忘れてしまったのだけど、あれはおそらく「こことよそ」を読んだ影響だったように思う。
「生きる歓び」は「え、ここで終わるの」というところで終わる。半ば宙吊りで置き去りにされた気分にもなるが、この小説が最後に読者を置き去りにする場所は、居心地が悪くないから不思議だ。 -
「感動したことを書く、あるいは心が激しく動いたことを書く、この本に集めた小説はすべてそういうシンプルなものです」
心を揺さぶられた出来事を大切に両手で掬いとって天に向かって捧げたような作品たち。
「生きる歓び」は再録だけど、パズルのピースのようにきれいに過不足なくここに収まっている。
「ハレルヤ」病児を看病することの幸せを歌ったのは誰だったか。たとえ愛する相手が死にゆこうとしていても、その看病の途中で少しでも病状がよくなったり、食べ物をわずかでも口に出来たりしたとき。そのときに感じるのはよろこび以外の何物でもない。
動物は死に絶望したりしないからなおのこと。 -
猫が登場する穏やかな生活を描く保坂和志の小説作品の中でも殊更そのモチーフや作者自身に影響を与えてきたであろう花ちゃん、その別れを記した表題作とその他様々な人や猫やものとの別れを描いた短編2篇に加え、花ちゃんとの出会いとなった過去作『生きる歓び』の計4篇が収録。弱った花ちゃんを拾って世話して元気になり、「「生きることが歓び」なのだ。」と気付かせてくれた猫は神の如き祝福を作者や家族、そして小説の読者たちに与えてきた。その猫が神の近くへ旅立つことは悲しいことだけではなく、むしろ『ハレルヤ』と思わずにはいられない感触を我々にこれからも与えてくれるだろう。