- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101802107
作品紹介・あらすじ
僕の死を君に見届けてほしい。新山遥には、死の近づいている人がわかる。十歳で交通事故に遭い、両親と妹を失ったころからだ。なぜこんな力が自分にあるのか、なんのためにこの力を使えばいいのかはわからない。けれど見て見ぬふりのできない彼は、死の近い人々に声をかけ寄り添う。やがて、二十四歳になった遥は、我が子の誕生を待っていたが……。愛する人を想う気持ちに涙があふれて止まらない、運命の物語。
感想・レビュー・書評
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主人公新山遥は、病気で亡くなる方の死の近づきが見える。彼は、その能力の意味を考え続ける。
作中の表現をお借りすると、
10歳 命の不条理に振り回されながら、生を全うした人
14歳 己の過ちを重い罪と受け止め、罰の軽さに苦しむ人
17歳 愛しい人の死を前に新たな愛しさを芽生えさせる人
20歳 生まれ持った性に悩み道に迷ってもがく人
24歳 生死の間を揺蕩いながら生まれた新しい命
そんな死を迎えようとしている人達に、死期が近い事を伝えて、寄り添ってきた。そして、その能力に意味が無くても良いことに気付く。
辻村さんの「ツナグ」は、感銘を受ける素敵な小説ですが、同調するかというと、悩ましいところがあって、自分の死後はそのまま終わりで良いかなとか、誰かに会いたいかというと、知らぬが仏(まさに仏)という事もあるなあ。と思ったりする。この小説は、死の前の一時を後悔なく過ごすサポートに現実的な優しさが感じられて好きだなーと思ってしまったのよ。
2022 新潮文庫100冊のラストだったんですけど、市内の図書館に(かなりの数ある)1冊の蔵書も無くて、どんな小説よ、大丈夫ですかね、と心配でしたが、良いストーリーでした。
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交通事故で死にかけた主人公が、人が死ぬ数日前に『海』が見える能力を手にしてから始まる物語。
死が近づいている人達と関わることで自分と向き合っていく主人公の姿が描かれています。
この小説には著者の死生観も現れており、勉強になりました。 -
人を愛するということについて描かれている短編集。
なぜ人は死ぬ間際に人との繋がりを求めるのだろうか。愛する人、親しい人。改めて自分の人生は自分だけのものではないと感じさせる作品であった。
人が人を想うことはとても尊いことだと思う。 -
❇︎
人の死が見える能力を持つ少年、新山遥は、
死期が近づいた人へ命の終わりを告げる。
死神と罵られても遥は死を伝えることを辞めず、
出会った人たちの死と向き合う。
残りの時間を悔いがないように送るために。
やりたいこと、会いたい人、話したい人と
最後に話せるように。
能力を持つ意味を考えて、悩みながら
命と向き合う一人の少年の物語。
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第一幕 14歳、『いつも二人で』
第二幕 17歳、『バンド・ワゴン』
第三幕 20歳、『ブロークバック・マウンテン』
第四幕 24歳、『STAND BY ME ドラえもん』
第五幕 10歳、『椿三十郎』
エンドロール
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主人公の遙は人の死が見える。そのフレーズに引き寄せられるように購入した。
10歳の時に交通事故に遭い、家族を失ったことによりチカラが芽生えた遙。遙はそのチカラと向き合うために「死神」呼ばわりされても自分を貫いている。そんな姿に感動した。私なら絶対できないと思う。そして一章の出来事が二章の遙へ、二章の出来事が3章の遙へ繋がっていることも感動した。
また途中途中で出てくる映画のフレーズは毎回楽しみだった。特にドラえもんの映画の台詞。
「最初の贈り物は、君が生まれてきてくれた事だ」
私たちは生まれてくる時、既に誰かの贈り物となって命を授かる。だから一生懸命生きて、後悔しない毎日をただ送ればいい。いつ死ぬか分からないこの世界で、気負わず過ごせばいい。そんな事も感じることができた。
私もいつ死ぬかわからないこの生を毎分毎病、振り絞って生きていきたい。 -
章ごとに主人公が末期の癌患者、乳癌の母がいる女子高生、同性愛者、我が子と出会い向き合い成長していく物語です。特に私は1章の映画好きの末期癌患者とのやり取りに涙を流しました。
その癌患者の「優しくて弱い人がいつも人を傷つける。俺もそうだ。」という言葉が胸に刺さりました。主人公は人の命が終わりそうな時に、その人の心臓に波の模様が見えます。つまり、死期がわかると言うことです。死と聞くと悲しい話だと思われるかもしれませんが、この小説は死が近い人が死と向き合い、残された人はその人の死を受け入れ、前向きに進んでいく話です。もちろんその過程で己との葛藤、死への恐怖、残された人の無念なども書かれているので涙が止まりませんでした。
心が優しくなれる、命の大切さを学べる素敵な小説だと思います。 -
日々、死を感じることなく
なんとなく過ごしてるからこそ
今生きてることを考えさせられる本でした。
能力の意味。生きている意味。
私は最後なんとなく、しっくりきました。
尊く生きていきたい。 -
連作短編のような感じで読みやすかったのですが、一幕(章)ごとに選ばれた映画とストーリーがあまり結びつきませんでした。歳を重ねるごとに様々な生き方をする人たちと出逢う主人公の遥をみて、命や死について深く考えさせられた気がします。遥の能力が、ただ「死」が見えるだけの能力じゃないと分かったとき、あぁそういうことだったのか、とすっきりしました。感動はしたけれど泣くまではいきませんでした。
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とても読みやすい1冊だ。死の近づいている他人がわかる主人公。他人の死が見える、という類の話だと、設定や能力の使い方も違うが「フォルトゥナの瞳」という映画を思い出した。いつ亡くなるか分からず一生を終える恐怖、もうすぐ死ぬとわかっている人を助けられない恐怖。いつか終えるこの命の最後はどちらが幸せになれるのだろうか。
そのうち新潮文庫さんから何か送られてくるかも^^
そのうち新潮文庫さんから何か送られてくるかも^^