コンビニ兄弟2 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101802282

作品紹介・あらすじ

ここは忘れられない想いをささやかに受け止める場所。失恋をして居心地の悪さに高校をサボった永田詩乃は突然綺麗になった祖母と意外なところで出会う。バイト店員・廣瀬太郎は自分のことを退屈な男だと思っているのに、キラキラ美少女がその日常を乱し始める。親友と別離した村井美月は辛い現実を越えて新たな一歩を踏み出していく。大切な想いをささやかにつなぐ場所、名物店長と個性的な客たちが集う小さなコンビニの心温まる物語。

感想・レビュー・書評

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  • あなたが行きつけの『コンビニ』を選ぶ理由は何ですか?

    今や全国に57,000店もあるという『コンビニ』。都市部などでは今日の気分で行くお店を選べるくらいに、もうどこにでもあるのが『コンビニ』だと思います。もちろん、人によってそんなお店の利用頻度は異なると思います。たまに行くという人から一日三食『コンビニ』飯です!という人まで、その利用の仕方は人それぞれです。

    では、あなたはどういった理由で普段利用する『コンビニ』を決めているのでしょうか?立地、チェーン店の系列、店舗の規模等々、その『コンビニ』を選ぶ何らかの理由があるはずです。これこそ、その理由は人それぞれです。他人にどうこう言われる筋合いはありません。毎日利用する場所だからこそ、そのこだわりはそれぞれの人にあっていいはずだからです。

    さて、ここに『イケメン』店長がいるという理由でたくさんの人が集う『コンビニ』があります。九州の『門司港』にある『テンダネス門司港こがね村店』というその『コンビニ』。この作品は、そんな『コンビニ』に集う人たちを描く物語。身近に当たり前にある『コンビニ』を背景に、それぞれの主人公たちが抱える悩み苦しみを描く物語。そしてそれは、そんな『コンビニ』を描くその先に、自分も通う『コンビニ』ですれ違う見ず知らずの人たちにもそれぞれに悩み苦しむ人生があることに気づく物語です。
    
    『いってらっしゃいませ』と『帰り際、彼から微笑みと共に送られた言葉が頭から離れない』というのは、主人公の大石和歌(おおいし わか)。『門司港、行きたい…』と『何度目とも知れない呟きを零して』いると『幼馴染の鶴田牧男』に『ぱかんと頭をはたかれ』た和歌。そんな和歌に『うるせえな、さっきから』と言う牧男は『つか何で門司港なんだよ…なんであんなへき地に行きてえの』と訊きます。それに『へき地?よく知りもしないくせに…わたしは行きたいのさ、門司港に…』と返す和歌に『行けば?』と突き放す牧男。しかし、『愛するピピエンヌ号』を『田んぼに落としてしまった』たことをきっかけに『行きたくとも行けない』状況にあることを説明する和歌。『じゃあ、俺が連れてってやろうか』、『和歌が気に入ったっていう門司港、どんなところか観てみたい』という提案に乗った和歌は、牧男が『父から譲り受けた、古いシビック』に乗って出発します。そして、『超観光地じゃん。何あれ、人力車まで走ってる!』、『すごいだろー。いや、わたしの手柄じゃないんだけど』という『門司港』に到着した二人は、早速、『汗をだらだら流しながら焼きカレーを食べ』た後、『潮風号というトロッコ列車』に乗ります。『列車降りたら飲み物でも買おう。コンビニどっかにあったかな』と言う牧男に『降りたら行くところあるから』と和歌は『がっと腕を摑んで言』います。『列車を降りてから、記憶を辿ってテンダネス門司港こがね村店に向かう』ことにした和歌は『彼は、いるだろうか。絶対絶対、いてほしい。いますように!』と思いながら歩みを進めます。そして『視界にテンダネスの看板が飛び込んで』きて『頭の中でファンファーレが鳴った気がした』和歌は『駐車場を走り抜け、店に飛び込』みます。『いらっしゃいませ』と『やわらかな声がし』、『耳をやさしく撫でる声。ああ、間違いない。彼だ!』と思う和歌の横で『わ、イケメン』と呟いた牧男。『あー、やっぱこれ恋だわ』と思う和歌は『レジカウンター』へと走ると『あの!わたし大石和歌と言います!お名前、教えてください!』と話しかけます。それに、『志波、三彦。この店の店長をやっております』と答える彼。『志波さん。なんて素敵な名前。一秒でも会えるのなら、熊本と門司港の距離なんてケセラセラだ』と思う和歌。そんな『テンダネス門司港こがね村店』に集う人たちを生活感豊かに描いていく物語が始まりました。

    “誰にとっても大切な想いをささやかにつなぐ場所、北九州門司港の小さなコンビニの心温まる物語”と内容紹介にうたわれるこの作品。町田そのこさんの違った側面が見れる隠れた人気作「コンビニ兄弟」の続編となっています。町田さんというと、本屋大賞受賞作の「52ヘルツのクジラたち」やすれ違う母と娘の姿を描いた「星を掬う」など目を伏せたくなるような厳しい現実を前にした人たちを透徹した目で描いていく作品を書かれる方という印象があります。この作品はそんな印象をお持ちの方に是非読んでいただきたい、上記した二作とは一味違う町田さんのかっ飛んだ世界観で物語は描かれていきます。一方でこの作品は『門司港』を舞台としており、まるで『門司港』のガイドブック?と思えるくらいに街並みの見事な描写もなされていきます。まずは、『門司港のいいところは、歩いていける距離にさまざまなものがあることだ』と描かれていく街並みを見てみたいと思います。

    ・『「跳ね橋が上がります」とアナウンスが聞こえて周囲を見回』す主人公は、『”ブルーウィングもじ”という名の、日本最大級の跳ね橋』が『跳ね上がる』のを目にします。
    → 『上がっていた橋が再び繫がったときに、最初に橋を渡ったカップルは一生結ばれるというジンクスがあって、「恋人の聖地」とも呼ばれている』『跳ね橋』を見て主人公は付き合い始めた頃の彼のことを思い出します。

    ・『お土産屋やショップ、飲食店が立ち並んでいる』『門司港レトロ海峡プラザ』へと足を向ける主人公。『地元情報番組でもよく取り上げられている』『観光客で溢れる場所』を目にします。
    → 『どこか浮ついた雰囲気のひとたちを眺めていると、とても近くなのに遠く知らない場所を歩いているような気分』になるという主人公は『日常とは違う、非日常感』の中に『足取りが軽くな』っていきます。

    いずれも『門司港』の観光ガイドにも紹介されている有名な場所のようです。しかし、ガイドブックがあくまで場所の紹介のみであるのに対して、この作品では、そんな場所のリアルな描写にプラスして、そんな場所を訪れる登場人物たちの生き生きとした姿がそこに浮かび上がってくるのが何よりもの魅力です。私は『門司港』を訪れたことはありませんし、そもそも場所さえ不確かな状況です。しかし、前作「コンビニ兄弟」とこの続編を読んだことで、『門司港』に行ってみたくなるだけでなく、この作品を読んでから行くことは”聖地巡礼”的な楽しみ方があるようにも思いました。

    次にこの作品の構成を見てみたいと思います。この作品は〈プロローグ〉と〈エピローグ〉で挟まれた三つの短編が連作短編を構成しています。では、そんな三つの短編をご紹介しましょう。

    ・〈第一話 恋の考察をグランマと〉: 『夕飯の赤貝の刺身に』あたって二日間休んだ間に『彼氏の金沢大輔に「好きな子できたんだ」、とフラれた』のは主人公の詩乃。『幸福がこんなにも脆いとは』と思う詩乃のある日の夕食の場面。『子どもの恋愛なんてろくなもんじゃない』と晩酌しながらよく喋る父親に気のない返事を返す母親。そんな場から逃げ出した詩乃は、祖母の部屋へと赴きます。そこには『ふんわりと綿あめを載せたみたいな髪に、品の良さそうなメイク』、『服は少し派手で』、『なんと、ペディキュアまでしている!』という普段とは『別人状態』になった祖母の姿がありました。

    ・〈第二話 廣瀬太郎の憂鬱〉: 『絶対、渡しておいて!』、『君宛てってわけじゃないから、勘違いしないでよ?』と『バイト中に六人の女性から連絡先を渡され』『すこぶる機嫌が悪』くなるのは主人公の廣瀬太郎。『彼女たちがほんとうに渡したい』のが店長であることに苛つく太郎は『何様だあいつら!』と同僚の『村岡に愚痴をこぼし』ます。そんな太郎は『樹恵琉さんに、関わるな!』と『三人の男性から』『いちゃもんをつけられた』ことも不満に思います。『アイドルのように可愛らしい顔立ち』をしている『志波三彦の妹、志波樹恵琉』。そんな不満を抱きながらバイトを続ける太郎の前にある人物が現れます。

    ・〈第三話 クィーンの失脚〉: 『クラスメイトの栗原志摩には関わらないほうがいい』という噂を耳にしたのは主人公の村井美月。『いっつも変なひとと一緒にいるの。あれ、やばいよ』と教えてくれたのは『高校に入学してからできた友人、水戸江里奈』。『キモくてウケる。アニオタおつかれって感じ』と栗原のことを言う江里奈と同じグループの美月。そんな場に『三十代の女性教諭、林聡子』が入ってきて授業が始まりました。そんな中に栗原の方を見ると『何かをノートに書いている』様子。それを見つけた林が叱ると『先生、知っているのだ?昨日から始まった企画で…』と意味不明なことを語り始めた栗原。

    三つの短編にはそれぞれ主人公が登場します。そして、それぞれの主人公たちが家族の関係性に悩んだり、友達関係に悩んだりという物語が綴られていきます。そこには、『テンダネス門司港こがね村店』はまさに背景として登場するだけであって『イケメン』店長が最前面に登場したり、ましてや視点が移動することはありません。このあたりが、もう少し『コンビニ』自体にもフォーカスがあたった前作との大きな違いだと思います。それでいて、そんな店長を想像させる描写があちこちに登場するのもこの作品の特徴です。

    ・『うつくしい見た目や頭を麻痺させそうな変な匂いを放っている』

    ・『その声は、楽器かと思うほど低くまろやかに響いた。え、このひと声すらヤバくない?』

    ・『刺激が強すぎる』、『濃縮タイプのめんつゆを薄めず使った感じっていうか、シャネルの香水を思い切り吹き付けられた感じっていうか、とにかく強すぎるのだ』

    一体、『イケメン』店長とはどんな人物なのか?そもそも『外でファンクラブに囲まれてますねえ』と店員が冷静に語るところなど強烈極まりない状況です。これだけだと、そんな人物には近づきたくない、そう思ってもしまいます。しかし、そんな店長の本当の魅力がこんな風にも語られます。

    ・『店長がひとに好かれるのって、見た目だけじゃなくて、なんつーか、愛がすげえってのが重要』、『このひとは接する瞬間、自分の瞳の中にいるひとに対して誠実に愛を注いでいる。そのひたむきさのようなものが、ひとを惹きつけるのだ』。

    う〜ん、なるほど。こんな風に聞くと、『イケメン』店長というどこか軽いイメージが少し変化しそうです。この続編ではいずれの短編もそんな店長が最前面に描かれることなく淡々とそれぞれの主人公の物語が描かれていきます。そして、そのそれぞれの物語は、まさしく町田さんならではの読み味を感じさせる極めて真面目で誠実な世界観を前提にした物語です。設定自体が「52ヘルツのクジラたち」のように重々しくはないので、あの重さを苦手に思われる方にはこちらの物語の方が楽しめるのではないかと思いました。〈エピローグ〉でこの世界がさらに続編へと続いていくことが匂わされもするこの作品。町田さんの物語世界の魅力を再認識させていただいた作品でした。

    人気作「コンビニ兄弟」に続く続編として刊行されたこの作品では、『イケメン』店長が働く『テンダネス門司港こがね村店』という舞台を用意することで、町田さんの他の作品には見られないはっちゃけ感を味わうことができました。その一方で、

    ・『たいていの宝物は自分の手の中で初めて輝くもんなんだよ』

    ・『正しさの陰に苦しんでいるひと、傷ついているひとがいるなら、正しさを主張しなくていいこともある』

    そして、

    ・『こんなに自分に向き合おうとしてくれるひとがいることが、嬉しい』

    町田さんならではの心に深く刻まれる言葉の数々にも出会えるこの作品。リアルな『門司港』の描写に、”聖地巡礼”をしたくもなってくるこの作品。

    町田さんの魅力は、本屋大賞にランクインした重厚な作品を読むだけではわからない。改めてそう感じた、今後の続編にも期待したくなる作品でした。

  • やっっっっっと図書館の順番がまわってきました。
    おかえり、フェロ店長!会いたかったよ。(買わなくてごめんなさい)
    やっぱり私にはフェロ店長が昔のドラマ『山田太郎ものがたり』の二宮和也に思えてしまうのです。自分では全くその気はないのに、ニコッと挨拶しただけで女子たちが失神してしまうとか、「ありがとーう』と言って抱きしめようものなら男子でさえもクラクラさせてしまうとか。(たまたまTVerで観れたので久しぶりに観てみた)ただ山田太郎くんは、爽やか過ぎるので“フェロ“と呼ばれるにはまだ早いかなぁ?でも高校生であれだけ周りの人を翻弄しているのだから、そのうちフェロ店長になれるだろう‥‥。
    ‥‥と、また妄想に走ってしまいましたが(これが読書の楽しいところ)2巻もやっぱり泣けました。このコンビニに集まる人たちは本当にいい人ばかりで、その連鎖がみんなの心を溶かしてゆく。
    「気遣いとか優しさってのはひとの手に渡れば渡るほど、大切にできるんだぞ」
    昔、我が子が見知らぬ人に助けてもらった時、どうやってお礼をすればいいんだろう?と思っていたら『次に同じように困っている人がいたら、その人を助けてあげればいいんですよ』と言ってくれた人を思い出しました。
    いかにも“つづく“の感じで終わったこの2巻。3巻も楽しみにしてます!

    • こっとんさん
      さてさてさん、こんばんは♪
      フェロ店長に会ってきたのですね!
      コンビニ兄弟シリーズの雰囲気、いいですよねー。
      町田その子さんの作品はどれもみ...
      さてさてさん、こんばんは♪
      フェロ店長に会ってきたのですね!
      コンビニ兄弟シリーズの雰囲気、いいですよねー。
      町田その子さんの作品はどれもみんな好きですが、やっぱり私はコンビニ兄弟シリーズが一番かなぁ。
      基本的にほっこりできてニマニマできる本が大好きなんですよねー。
      眉間に皺を寄せないで読み終わった時は、あーやっぱり読書っていいなー、と思えます。
      3巻早く出て欲しいですね!
      さてさてさんは、三冊揃わないと読めないのですよね。お先に読んでおきますねw
      でも私も図書館待ちで何ヶ月もかかっちゃうことが多いので(購入しろって話)さてさてさんの方が先に読んでたりしてw
      2023/03/01
    • さてさてさん
      こっとんさん、『門司港』が良い塩梅だなあと、とても思いました。新作の「あなたはここにいなくとも」も読みましたが、こちらでも『北九州』という地...
      こっとんさん、『門司港』が良い塩梅だなあと、とても思いました。新作の「あなたはここにいなくとも」も読みましたが、こちらでも『北九州』という地名が必ず登場するんですが、あまり必然性がないです。「コンビニ兄弟」の方は『門司港』がたまらなく魅力的です。
      私もほっこりニマニマ同感です。”毒親”はちょっと食傷気味です。
      図書館の予約は待ちますよね。私も待ったあげく順番が来たのに気づかずに流れてしまったものも結構あります。なので、結局、買ってしまうという。でも、順番待っても一年はなかなかかからないですよね。恐らく町田さん、どんなに早くても三冊揃うのは来年秋くらいかなと。なので、素直に、こっとんさんのレビューを先に楽しみにしております、とまとめてさせていただきますね!
      2023/03/01
    • こっとんさん
      確かに!
      『門司港』行きたくなりますよね。
      ドラマ化してほしいです!

      よし!では私が先によみますよーw
      発売されたらまず、さてさてさんのこ...
      確かに!
      『門司港』行きたくなりますよね。
      ドラマ化してほしいです!

      よし!では私が先によみますよーw
      発売されたらまず、さてさてさんのことを思い出しますね、きっとw
      2023/03/01
  • 2023.11.5 読了 ☆9.1/10.0


    イケメン店長がいるという理由で若い女性からマダムまで、たくさんの女性ファンが集うコンビニがあります。
    本書は九州の門司港にある『テンダネス門司港こがね村店』というコンビニを舞台に、それぞれの主人公たちが抱える悩み苦しみを描く物語です。


    第一話〈恋の考察をグランマと〉
    二ヶ月ほど前から同居しているおばあちゃんの葛藤と、失恋した孫娘が祖母の言葉をきっかけに前を向く、ほっこりするお話。



    ”ひとを好きになる、っていうのはいいことよ。それは、ほんとうにいいこと。
    いくつになっても、ひとを好きになっていい。その時には、相手だけやなくて、その人を好きな自分までも好きになれたらいいと思う。相手を大事にして、同じくらい自分を大事にする。大事な相手に見合う自分でいよう、そういう「好き」に巡り会えたらきっと幸せ”



    第二話〈広瀬太郎の憂鬱〉
    自分のことを平凡でとるに足らない人間だと思っている、コンビニアルバイトの太郎の話。
    別れて何年も経つ元カノ・椿に何度も迷惑かけられて悩まされてることを憂鬱に思っていて、最低な元カノだが、一度は好きで付き合った椿を突き放さずに励ますところ、太郎カッコ良いぞ!

    そしてここでは、そんな太郎の個性と魅力を認め、優しく背中を押すツギの言葉がじんとくる(P.115〜)



    ”遠回りのもどかしさや足踏みしてた時の焦燥感。そういうもんを知らねぇと、手に入れたもののありがたみが分からなくなるってこともある。当たり前だって思うと、ちゃんとだいじにできなかったりもする。望んで手に入れたものは、すげえキラキラ輝くもんだ。
    たいていの宝物は、自分の手の中で初めて輝くもんなんだよ”



    その言葉で太郎の心は満たされていく。そして大事なことに気づく。



    ”何年も胸の内で燻らせてきた問題、目を背けてきた不満に向き合おうとする自分なんて信じられない。こんなにもあっさり、心境を変えたりするものなのか。
    しかし、そういうものなのかもしれない。誰かの優しい目、何気なくも心配りのある
    一言、そういうものが、背中を押してくれる。その柔らかな力で、ひとは変わる”



    ・第三話〈クイーンの失脚〉
    女子高生の村井美月は、中学生時代に自分でも自覚ないけれど女王様のような振る舞いをしてきた。クラスメイトの那由多を囃し立て、いじめ、それに愛想を尽かした友達が去っていく。大切な親友の梓を失うことになってしまう。そして自分が逆にいじめられる側になってしまう。

    それによって、いじめる側が過去の自分だったこと、いじめられる側はこんなにも辛いんだということ、自分が信じる正しさだけを振りかざしてひとを傷つけていたことに気づき、自分の過ちを認めて反省する物語。
    一緒に乗り越えようと言ってくれるような新たな友ができて良かったなと思った。
    栗原さんの美月にかける言葉の数々や行動は優しくて読んでいてじーんとなる…

    個人的にこの話が一番心に響きました。


    〜〜〜心に響いた言葉〜〜〜


    ”こういうのは連鎖すべきだと思うとる。気遣いとか優しさってのはひとの手に渡れば渡るほど、大切にできるんだぞ”


    ”いいこと悪いこと、気づきあって反省しあっていくのは同じ年代を生きる友達がいい。だから焦らなくていいから探せ。タイミングを見つけたら声をかけろ”


    ”反省したなら絶対に繰り返さないこと。たくさんの失敗をして、時には過ちを犯す未熟なものが子ども。必ず後悔と反省をして、二度目はないようにしなさい。ひとはそうやって、大人になるんだから。大事なひとの失敗は、一緒に乗り越えなきゃ”


    ”呆れるって、知っているつもりだったひとが使う言葉なんだ。
    知っているつもりなだけで本質をわかっていないひとが、思い込みでそのひとを見ていたひとが、その言葉を使うんだ。そんなひとだったなんて呆れちゃう、って。ほんとうにそのひとを見て、知っているひとは言わない。そんな言葉でそのひとの行動を終わらせないもんだ”


    ”正しさの陰に苦しんでいるひと、傷ついているひとがいるなら、正しさを主張しなくていいこともあると思ったんだ正しさの持つ強さとか、それをかざすときの傲慢さを知ったの。それと何より、やさしさのペットボトルをつなげる相手を考えることの方がたいせつなんだ”


    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


    自分の過ちに気づき、向き合い、それを認めて受け入れてくれる人に出会う。
    いいこと悪いことに気づきあって、反省しあっていける関係性はすごく大きい。
    そして、失敗に気づき、反省したなら繰り返さないこと。

    今の自分にすごく刺さる。

    言い訳しないで、自分の非を、過ちを、責任を認めること。
    自分の中の正しさだけを振りかざさないこと。
    やさしさのペットボトルを繋ぐこと。


    あぁ、なんてあたたかいんだろう。早く三作目も読みたい。

    • わーーーーーさん
      Manideさん、コメントありがとうございます!

      本当に刺さる言葉と物語で、三作目も早く読みたいです(^^)

      本から得られる学びを日常生...
      Manideさん、コメントありがとうございます!

      本当に刺さる言葉と物語で、三作目も早く読みたいです(^^)

      本から得られる学びを日常生活に落とし込めるのって、すごく愛おしいですよね!
      2023/11/10
    • Manideさん
      男としては、ツギを目指していかないといけないですね(笑)

      回を重ねるごとに、店長の存在が薄くなっていき、ツギの存在が濃くなってる気がします...
      男としては、ツギを目指していかないといけないですね(笑)

      回を重ねるごとに、店長の存在が薄くなっていき、ツギの存在が濃くなってる気がします。

      3話目の感想楽しみにしてます(^-^)
      2023/11/10
    • わーーーーーさん
      ツギの、あの朴訥だけど温かくて優しい男はカッコ良すぎますよね✨

      そうなんですね!楽しみです!
      ありがとうございます!
      ツギの、あの朴訥だけど温かくて優しい男はカッコ良すぎますよね✨

      そうなんですね!楽しみです!
      ありがとうございます!
      2023/11/10
  • コンビニ兄弟2巻。とっても良かった!

    前作はコミカルさにちょっと戸惑う部分もあった…が
    今作は濃いキャラ達にも馴染めていたので、すんなり入り込めていつの間にか読了

    ・第一話〈恋の考察をグランマと〉
    二ヶ月ほど前から同居しているおばあちゃんと失恋した孫娘のほっこりするお話。

    第二話〈広瀬太郎の憂鬱〉
    自分のことを平凡でとるに足らない人間だと思っている、コンビニアルバイトの太郎の憂鬱ないろいろ。
    ひとつは別れて何年も経つ元カノに何度も迷惑かけられて悩まされてる事。
    最低な元カノだが、一度は好きで付き合った女の子、椿を突き放さずに励ますところに太郎のカッコ良さを感じた!

    ・第三話〈クイーンの失脚〉
    女子高生の村井美月は、以前に自分でも自覚ないけれど女王様のような振る舞いをしてきた。
    そのために友達を失うことになってしまう。
    美月が自分の過ちを認めて反省する。
    一緒に乗り越えようと言ってくれるような新たな友ができて良かったなと思った。
    栗原さんの美月にかける言葉の数々や行動は優しくて読んでいてじーんとなる…

    やっぱりいいなぁ、町田そのこさんの作品…。
    次も気になる終わり方になっている。
    3巻も早く読みたい。

    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      しじみさ〜ん、(◕ᴗ◕✿)コンチャ☆w
      お馴染みのキャラにあえるのと、またまた濃いキャラが登場してきたのとでドキドキでした(笑)

      1巻では...
      しじみさ〜ん、(◕ᴗ◕✿)コンチャ☆w
      お馴染みのキャラにあえるのと、またまた濃いキャラが登場してきたのとでドキドキでした(笑)

      1巻では嫌な子だった美月ちゃんだったけど、子供って未熟さがあるのは仕方ないし、反省もしっかりできたお話があって良かったですね。
      栗原さんみたいな天然系で、からかいの対象になってしまう子は浮いてしまいがちな場所が学校なんだけれど、これから二人で仲良く学校生活できたらいいな、と思いましたよ。
      実は栗原さんの内面は優しくて大人っぽい子だったんでちょっと感動しました♡
      2巻も、良かったですねっ(*^^*)ᴠ
      2023/10/16
    • Manideさん
      チーニャさん、こんにちは〜

      コンビニ兄弟一気読みですね、面白いですよね〜
      3巻も楽しみですね(^^)

      門司港に行きたくなりますよね。
      こ...
      チーニャさん、こんにちは〜

      コンビニ兄弟一気読みですね、面白いですよね〜
      3巻も楽しみですね(^^)

      門司港に行きたくなりますよね。
      この本読んで、門司港調べたんですが、ほんと、行ってみたい土地になりました。
      福岡出身の友人に、ちょっと、それると怖い土地だよ、なんて言われたことあったので、ちょっとドキドキですが…(笑)
      2023/10/23
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      Manideさ〜ん、こんばんは♪
      お疲れ様です( ^^) _旦~~
      3巻、楽しみです☆
      門司港、行ったことなくて…素敵な感じして、私も行って...
      Manideさ〜ん、こんばんは♪
      お疲れ様です( ^^) _旦~~
      3巻、楽しみです☆
      門司港、行ったことなくて…素敵な感じして、私も行ってみたいんですよ。でもちょっとそれると怖い土地なんですね、気をつけようと思います!
      (ナンテ…いつ行けるようになるか、わからないんですけどね…笑)
      2023/10/23
  • いや、すんごい面白かった!
    記念すべき「★5じゃ足りない」100冊目はこの作品となりました

    う〜ん、いいねいいね〜
    一生懸命に生きる若者たちの恋や友情の物語が3篇

    どれもとっても良かった!

    若者たちが悩み苦しみながら、周りに思いもかけない「味方」を見つけ、その人たちに助けられながら、自分というものを見つめ直して前に進んでいく物語
    おじさんこういうの弱いのよ〜

    これって新潮文庫NEXってレーベルなんだけど、自分ラノベだとばっかり思ってたらそうじゃないみたいなんよね

    新潮社自身が言うには「読者を物語に引き込むキャラクターをキーワードに据え、ライトノベルではなく、小説の質にこだわってきた新潮文庫を拡張するシリーズ」ってことでラノベを卒業した若い世代に向けたレーベルらしく、正直いやラノベやんとも思うけど

    でもまさしく新潮社さんが言ってることを体現した一冊でした
    ほんと高校生から大学生くらいの子たちに読んでほしい一冊やわ

    ほんで、わいはすぐに3を読む
    すぐ読む

    • みんみんさん
      気楽に読めてグッときてキャラ濃いです‹‹\(´ω` )/››
      気楽に読めてグッときてキャラ濃いです‹‹\(´ω` )/››
      2023/10/15
    • ひまわりめろんさん
      一Qさん

      いや、このシリーズすごいよ!
      めっちゃ厚さ薄いのにすっごい濃い
      薄くて濃いのにぎゅうぎゅう感がない
      町田そのこさんザーサイか!間...
      一Qさん

      いや、このシリーズすごいよ!
      めっちゃ厚さ薄いのにすっごい濃い
      薄くて濃いのにぎゅうぎゅう感がない
      町田そのこさんザーサイか!間違えた天才か!っていう
      2023/10/15
    • 1Q84O1さん
      ザーサイ案外好きです(。・・。)
      それはさておき、ひま師匠もみんみんさんもオススメみたいですね♪
      チェックしておきます^_^
      ザーサイ案外好きです(。・・。)
      それはさておき、ひま師匠もみんみんさんもオススメみたいですね♪
      チェックしておきます^_^
      2023/10/15
  • ◇◆━━━━━━━━━━━━
    1.あらすじ 
    ━━━━━━━━━━━━◆
    前作に引き続き、門司港のテンダネスに関わる人たちのお話です。前作もそうですが、コンビニ兄弟がメインになるわけではなく、2人は脇役的な立ち位置でした。

    1作目の登場人物が多く、順番に読まないと面白くないだろうという感じでした。

    今作も、笑いあり、涙ありで、心にジワジワと響いてくるお話でした。
    最後には、ツギに関係する人がちょこっとだけ登場して、次回作があること必須です。楽しみですね。


    ◇◆━━━━━━━━━━━━
    2.感想
    ━━━━━━━━━━━━◆
    前作の読後感がとてもよく、この世界観に入っていきたいという想いがあって、読みはじめました。
    今作もよかったです!!
    登場人物がステキ ^_^

    目の前のお客さまに真摯に向き合う店長のように、私も目の前の物事や、人たちに対して、ちゃんと向き合っていかないといけないと、強く感じました。
    自分の仕事や生活に対しての在り方を考えさせてくれる作品でした。

    「早く知っておいたら早くしあわせになれたのに気付けていないことって、多いんだろうな…」とか、「きちんと悩み迷うべきだ」という言葉が出てきます。こういう言葉がとても心に響きます。

    関東の人間なので、北九州は全然わからないんですが、門司港(もじこう)に行ってみたくなります。
    ちょっとずれると怖い土地でもあるようですが…


    ◇◆━━━━━━━━━━━━
    3.主な登場人物 
    ━━━━━━━━━━━━◆
    志波三彦 店長

    第一話 恋の考察をグランマと
    永田詩乃
    永田孝雄 父
    永田由美 母
    永田満江 祖母

    桧垣梓 ひがき、クラスメイト、前作に続き登場、スイーツ好き

    第二話 廣瀬太郎の憂鬱
    廣瀬太郎 店員、バイト
    村岡 店員
    高木 店員

    つぎ 三彦兄 前作に続き登場
    志波樹恵琉 三彦妹 前作に続き登場
    椿茂子 廣瀬の元カノ

    第三話 クイーンの失脚
    村井美月 前作に続き登場
    栗原志摩
    水戸江理菜

  • 人のやさしさと温かみがあるこの物語がやっぱり好きだと思った。

    本作はコンビニ兄弟の続編である短編小説。
    短編だけど、前作の登場人物が出てきて、ストーリーに繋がりがあるのがうれしかった。
    特に、梓と美月の成長を描くストーリーは前作に続いてすばらしく、勇気をもらえた。

    コンビニ兄弟シリーズの続きを読みたいし、町田そのこさんの他の作品も読んでみたい。


  • 立山に向かう道沿いに立山サンダーバードとゆう家族経営のコンビニがあるんですけど、そこに匹敵するくらい個性的なテンダネス門司港店、今回は地図まで載ってたのでストリートビューで探してしまいました老松公園の西南あたりの道沿いを漏れなく探たのですが・・・
    プロローグ担当の福岡女、前回フグの毒より強烈な店長のフェロモンにあたってフラフラと再来店。積極的に店長と距離を詰めにかかり大石和歌って名乗り店長の名前を聞きだすことに成功するが爽やかな笑顔に見つめられ興奮のあまり鼻血がでそうになり玉砕し退散する。のっけからコミカルにはじまりライトノベルっぽいタイトルの3話からなる本篇が始まります。
    中でも推して良かったのは3話目の話。前作で幼馴染梓にキツく当たった美月が高校デビューして今度は逆の立場になってハブられる話。内容はすごく濃厚で目頭が熱くなってきました。美月の友達になろうと健気で一生懸命な志摩ちゃんに魅せられました。あっでも2作目も太郎がフラれた元カノにエールを贈るところとかカッコよかったな。
    エピローグでは、志波家の秘蔵っ子樹恵瑠の意味ありげな言葉に3巻も興味津々が止まらない。
    今回、パート主婦の光莉さんの出番が少なかったのが残念でした。

    • かなさん
      しじみさん、遅い時間ですがこんばんは!
      私はフェロモン店長も
      あとこの作品の舞台、門司港がたまらなく好きです(*´▽`*)
      3作目が出...
      しじみさん、遅い時間ですがこんばんは!
      私はフェロモン店長も
      あとこの作品の舞台、門司港がたまらなく好きです(*´▽`*)
      3作目が出ているんですよねぇ~
      まだ、私がよく利用する図書館には入ってないのですが
      早く読みたいですね♪
      2023/09/12
    • つくねさん
      かなさーーーん、おはようございます!!

      舞台の世界観に浸るべく聖地巡礼したくなりますね
      2作目ともなると登場人物も把握できてきたので...
      かなさーーーん、おはようございます!!

      舞台の世界観に浸るべく聖地巡礼したくなりますね
      2作目ともなると登場人物も把握できてきたので
      3作目読み始めてるとこなんです。
       推しはツギに光莉さんなので無茶ワクワクです。
      2023/09/12
  • 2もあったかかった〜!
    ありのままの自分を認めてもらえるのって嬉しいんだよね。
    「オレは、いまのままで大丈夫なんだ。」
    ちょっとしたきっかけで考え方を変えられる。
    前を向けるようになっていく人たちに元気をもらった。

    それにしてもエピローグ!
    なになに、この終わり方!笑
    テレビアニメか何かみたい。

    3巻へ・・・続く!!!
    って感じ?
    楽しみ〜!

    • かなさん
      ムク助さん、初めまして。
      本当にこの作品、夢中で読んで引き込まれてしまいました!
      この作品から感じるあったかさ…言葉になりませんね(^^...
      ムク助さん、初めまして。
      本当にこの作品、夢中で読んで引き込まれてしまいました!
      この作品から感じるあったかさ…言葉になりませんね(^^)
      3巻も早く読めるといいですね!

      このたびは、いいねとフォローをありがとうございます。
      こちらからもフォローさせていただますので、
      今後どうぞよろしくお願いします。
      2022/09/11
    • ムク助さん
      かなさん
      コメントありがとうございます!
      かなさんのレビュー、たくさんいいねしてしまいました^_^

      町田そのこさん、いいですよね!
      3巻も...
      かなさん
      コメントありがとうございます!
      かなさんのレビュー、たくさんいいねしてしまいました^_^

      町田そのこさん、いいですよね!
      3巻も楽しみです。
      今後ともよろしくお願いします。
      2022/09/16
  • 今回も、フェロ店長のいるコンビニを舞台にあたたかくて優しくなれる話だった。
    どの話にも、ちょっと素敵な言葉が出てきていた。

    第一話では、祖母が失恋したけど、クラスの中で毅然とした態度で頑張ってきた孫に対して言う言葉、『自分の大事な部分は自分で守り通さなきゃいけないってこと、ひとは分からなくなるもんさ。誰かに蹂躙されても仕方ないと諦めてしまう人だっている。あたしもそうさ。自分の大事な部分を守るのは我儘じゃないのかと、いい妻じゃないんじゃないかとか、そういう馬鹿なことを考えて安く扱わせてしまったことがあるんよ。いまでも後悔しとることもある。でも、詩乃はその年で、守る術を知っとる。偉いねえ』

    第二話では、やりたいことが見つからないという太郎や樹恵琉へのツギの言葉、『遠回りのもどかしさや足踏みしてたときの焦燥感。そういうもんを知らねえと、手に入れたもののありがたみが分からなくなるってこともある。当たり前だと思うと、ちゃんと大事にできなかったりもする。望んで望んで手に入れたものは、すげえキラキラ輝くもんだ』

    第三話では、「自分のことを知ればきっと呆れてしまう」と言う美月への志摩の言葉、『呆れるって、知ってるつもりだったひとが使う言葉なんだって。知ってるつもりなだけで本質を分かってないひとが、思い込みでそのひとを見ていたひとが、その言葉を使うんだって。そんな人だったなんて呆れちゃう、って。本当にそのひとを見て、知っているひとは言わない。そんな言葉でそのひとの行動を終わらせないもんだって』

    ちょっとグッとくる。

    エピローグを読んで、次が楽しみです

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著者プロフィール

町田そのこ
一九八〇年生まれ。福岡県在住。
「カメルーンの青い魚」で、第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。二〇一七年に同作を含む『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。他の著作に「コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―」シリーズ(新潮社)、『うつくしが丘の不幸の家』(東京創元社)などがある。本作で二〇二一年本屋大賞を受賞。
近著に『星を掬う』(中央公論新社)、『宙ごはん』 (小学館)、『あなたはここにいなくとも』(新潮社)。

「2023年 『52ヘルツのクジラたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

町田そのこの作品

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