ジェーン・エア(上) (新潮文庫)

  • 新潮社
3.81
  • (83)
  • (95)
  • (119)
  • (9)
  • (2)
本棚登録 : 930
レビュー : 83
  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102098011

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 久しぶりの再読。まずは上巻。ジェーン・エアは、赤ん坊の頃に両親を亡くし、母の兄であるリード伯父の家に引き取られる。しかしこの伯父も間もなく亡くなってしまい、伯父の遺言でリード夫人はジェーンを育て続けることとなるが、彼女はなぜか激しくジェーンを憎んでおり、執拗に彼女を虐げる。三人のいとこたち、ジョン、エリザ、ジョージアナのうち、長男で年上のジョンがとにかく意地悪く暴君。幼いジェーンは暴力を振るわれ、反撃するとジェーンのほうが凶暴な子供として厳しく叱責され、幽霊が出る(とジェーンが思い込んでる)部屋に閉じ込められたりする。

    もうこのリード伯母さんが底意地悪すぎて、こういった孤児ものの悪役の中でも群を抜いて嫌な人。味方のいないこの家の中では、かろうじて子守りのベッツィだけがいくらか優しい。やがてジェーン憎さのあまり、リード伯母さんは彼女を10才でローウッドの寄宿学校に追いやる。ここの経営者ブロックルハースト氏という人物も教育者にあるまじきクソ野郎で、リード伯母がふきこんだジェーンについての悪口をすべて真に受け、全生徒の前で「この子は嘘つきだから、友達にならないように。みなさん無視しましょう」と煽動するような人物。もうムナクソ悪すぎて、お話なのにムキー!!となった(落ち着け)

    意地悪なリード一家から離れても、まだジェーンはこんな酷い目に…と思うが、ローウッドには幸いテンプル先生という素晴らしい生徒思いの先生もおり、さらにジェーンはヘレンという年上の親友を得る。ヘレンはこんな学校にいるせいか自己肯定感が低すぎるのが気になるけれど、聡明で優しい。ジェーンは、あれだけ自分を全否定してくる親族と暮らしていたのに、反骨心を失わず、自分を卑下しない精神の強さが凄い。

    ジェーンはリード家にいるよりはマシな日々を送れるようになるが、ただブロックルハースト氏が吝嗇なせいでローウッドでの食生活は最悪。そこへチブスが流行。栄養状態の悪い生徒たちはバタバタと倒れてゆく。ジェーンは幸い感染しなかったが、もともと病弱だったヘレンは持病が悪化、ジェーンがお見舞いに行って一緒のベッドで眠った晩に、ついに亡くなってしまう。ジェーンにとっては辛い経験だが、ヘレンにとってはその瞬間に友達が最後まで寄り添ってくれていたことは救いだっただろう。

    疫病の流行は多くの生徒の命を奪うが、これがきっかけでローウッドの劣悪な環境が世間に知られて批判され、学校の経営方針自体は改善されることに。ジェーンはその後、ややマシな学校生活を送り、卒業後は教師として二年間勤め、18歳になる。尊敬し、心の拠り所としていたテンプル先生が結婚退職され、ジェーンは自分もローウッドの外の世界へ出ようと決意、新聞に家庭教師の広告を出す。やがて、フェアファックス夫人という人物から連絡があり…。

    ジェーンは、ソーンフィールド邸と呼ばれる家で、アデールという少女の家庭教師となる。当主のロチェスター氏は不在だが、家政婦のフェアファックス夫人は親切だし、アデールも悪い子ではないので、穏やかな日々が続く。ある日、やっと当主のロチェスター氏が帰還。30代半ば、けしてハンサムではないが男性的で、やや皮肉屋ではあるが一応紳士。もともと次男で、折り合いの悪かった長男の急死でロチェスター家の当主となったらしい。いろいろと過去に鬱屈があることを匂わせる。

    アデールは、ロチェスター氏がフランスで遊んでいた頃に夢中になったオペラダンサーの娘。当時彼がパトロンのようになっていたが、相手はイケメンと二股、彼を金づるとしか思っていないことが発覚して別れたが、のちに生まれたアデールを彼女はロチェスターの子供だと言い張る。母亡きあと、孤児になったアデールを、ロチェスター氏は気まぐれに引き取り、ここで養育することにしたが、本当に自分の娘だとは思っていない。

    さてそんなロチェスター氏は、最初はジェーンを皮肉にあしらうが、次第に彼女の率直さに好感を抱き、彼女を話し相手とするようになる。ジェーンも、話すと意外と楽しいロチェスター氏を憎からず思うように。ある晩、ジェーンが不穏な気配に目を覚ますと、ロチェスター氏の部屋から煙が出ている。水をかけなんとか消し止め、ロチェスター氏からは感謝されるが、犯人と思しきグレイス・プールという女中を彼は庇い、ジェーンにも口止めする。

    さてこのグレイス・プール、ジェーンがこの邸にやってきた当初から、たまにしか姿を見せない謎の女中。邸は主人不在のことが多いため、少人数の使用人しかいないのだが、このグレイス・プールはなぜか特別扱いされており、めったに姿を見せない上、夜中にお酒を飲んで不気味な笑い声を響かせるなど奇行が多い。今回も主人の部屋に火をつけたのにお咎めなしであることにジェーンは不審を抱く。この邸には秘密があるようだ…と思いつつ、それよりもジェーンはこの事件でロチェスター氏との距離が近づき、はっきりと彼への恋心の芽生えを自覚するようになる。

    だがロチェスター氏はふいに出掛けてしまい、しばらく戻らない。上流階級のことゆえ、他家とのおつきあいがあるらしい。やがてまたふいに彼は帰宅の連絡を寄越し、今度は大勢の客人を連れてくる。その中の一人であるミス・イングラムが、どうやらロチェスター氏の花嫁候補。美人でピアノと歌が上手く、彼女のほうでもロチェスター氏の財産が気に入っている様子。しかし性格の悪い高慢なお嬢さんで、アデールを子猿呼ばわりしたり、ジェーンにもあからさまに見下した態度を取る。

    彼女に対するジェーンの人間観察は辛辣。基本的にジェーンの人間観察眼は鋭いのだけどその分厳しく、彼女の幼い頃リード夫人が、いつも他人を盗み見ている等と彼女を批判したのは、こういう部分かな、とちょっと思う(苦笑)幼いアデールに対してのジェーンの評価もわりと容赦なくて、誰に対しても、だから嫌うとか意地悪するとかじゃないのだけど、とにかく点数が辛いの。ジェーンのキャラクターの特異さはこの部分だろうなあ。感情よりも理性が勝つし、男性並みに女性も自立したいという当時の女性にしては珍しいくらい独立心に富んでいる。誰にも頼れない彼女の生い立ちがそうさせたのでしょう。

    そんな冷静なジェーンなので、ロチェスター氏への恋心と同時に、自分と彼の身分の違いも自覚している。絵の得意なジェーンは、まずみすぼらしい家庭教師の自分の自画像を描き、それから一番良い紙にミス・イングラムの肖像画を描いてみる。それを並べてみて、自分を戒めるという、すごい感情コントロール方法を編み出す。ジェーン…そこまでしなくても…(でもここまでくるとちょっと面白い)

    客人たちとロチェスター氏は毎日華やかに遊ぶ日々を続けていたが、ある日一人の訪問者が現れる。彼はリチャード・メースンと名乗り、彼の名を聞いてロチェスター氏は青ざめる。そしてある真夜中、彼の悲鳴で目を覚ましたジェーンは、騒動に気づいた他の客を部屋に帰らせたあとロチェスター氏に手助けを求められる。メースンは怪我をして血だらけになっており、ロチェスター氏は医者を呼びに行く間彼に付いているようジェーンに頼む。どうやらこの事件もグレイス・プールの仕業らしいが、やはりロチェスター氏は彼女を解雇する気配もなく、翌朝グレイス・プールは普通に召使たちの噂話に加わっている。ジェーン彼女への疑惑を深める。

    メースンは医者と共に密かにソーン・フィールドを去り、相変わらずジェーンはミス・イングラムに嫉妬の日々が続くが、そこへ、リード伯母からの使者がやってくる。実はリード家ではかつてジェーンを苛めていた問題児の長男ジョンの放蕩でトラブルが相次ぎ、さらにそのジョンが急死(自殺の可能性)、ショックで卒中を起こしたリード伯母が、ジェーンに会いたがっているという。ジェーンはロチェスター氏に休暇を願い出、リード家に赴く。

    瀕死の伯母は、そんな状態になってもまだ意地悪。ジェーンの従姉妹たちは姉妹仲が悪く、ろくに母親の心配もしていない。すっかり大人になったジェーンは、伯母の仕打ちを許そうと思っているが、伯母のほうではジェーンを憎み続け、自分の過ちを認めることは敗北だと思っているらしい。だがついに、ジェーンの父方の親戚からジェーンに遺産を譲りたいと連絡が来たのに、ジェーンはローウッドで死んだと嘘をついたことだけは打ち明けてから亡くなる。上巻はここまで。最後までリード伯母さんが意地悪なままなのが、容赦ないなあという印象。

    ジェーンとロチェスター氏の間の恋は、遠回りすぎて現代の読者にはなかなかピンと来ない。というか、あんまりロチェスター氏の魅力が伝わって来ないので、恋愛面におけるジェーンの気持ちに共感できない。映画なんかだと結局なんやかんやで美男美女にされちゃうから(原作ではそうではない)、そんなもんかなあと思うのだけど。小説だと、あまり男性に免疫のないジェーンが、とりあえず身近にいる、複雑な内面と孤独を抱えていそうなタイプの男性に惹かれてしまっただけのように思う。しっかりしてるけどまだ18歳だもんね、みたいな。問答無用で激情に巻き込まれてしまう「嵐が丘」とのそこが一番の違いかも。

  • 何気なく手にして数ページ読むうちに引き込まれた。強く冷静なジェーンに憧れる。謎めいた出来事が後半への興味を強くさせる。面白い!

  • 孤児となり、教育施設ローウッドで育ったジェーン・エア。
    貴族の家に家庭教師として雇われ、
    当主のロチェスターと結婚することに。
    式当日、当主には狂人の妻がいることが発覚して・・・

    現代の昼ドラの原作にもなりそうな内容ではあるが、
    本をまともに読み始めた頃から好きな作品。

    (上下巻)

    • 九月猫さん
      natsuzoさん、こんばんは♪

      リフォロー、ありがとうございます。九月猫と申します。

      『ジェーン・エア』、わたしも大好きな作品...
      natsuzoさん、こんばんは♪

      リフォロー、ありがとうございます。九月猫と申します。

      『ジェーン・エア』、わたしも大好きな作品です。
      中学校のときに、とてもお世話になった国語の先生からいただいた、
      想い出の本でもあります。

      そんなに大好きな作品で、何度も映画化されているのに、
      未だ映像化されたものはどれも観たことがありません。
      natsuzoさんは、ご覧になられたでしょうか。

      >現代の昼ドラの原作にもなりそう
      確かに!!
      海外小説を無理やり昼ドラにしたりしていますものね。
      これは見てみたいかも、です(* ̄∇ ̄*)

      これから、ちょこちょこ遊びに来させていただきますね。
      どうぞよろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ
      2013/04/26
  • 高校に入ってすぐのときに読んだ本。
    最初は難しい本かなと思ったけれど読み進める内にどんどん物語に引き込まれました。
    静かに強くたくましく生きるジェーンに感動します。
    これからイギリス文学を読もうかなと考えている人にぜひお勧めします。

  • 一番好きな本って聞かれたら…迷うけどブロンテのこの本が出てくるなぁ〜〜♪感想は書ききれないほど。想いが溢れてくる作品です。

  • これまで読んだ本の登場人物の中でダントツに強いと思う女性が二人居る。そのうちの一人がジェーンエアだ。ジェーンは控えめな女性だが、ものすごく強い不屈の精神と、誘惑に決して負けない強い芯の通ったまっすぐな正しい心がある。こんな女性、そうそう居るものだろうか…。

    ジェーンは早くして両親を失い、非常に辛く厳しい幼少時代を送っていた。だがいつだって彼女は自分の意思を曲げる事無く、まっすぐに生きてきた。やがてそんな彼女が惹かれていく男性が現れた。家庭教師をしている家の主人のロチェスターだった。ロチェスターの表現や表情、ジェーンのあふれてくる愛や、近づいて行く二人・・・普通にかなりドキドキしてしまう。実にロマンチック。そんな素敵な雰囲気を一気に覆す出来事がおき、露になる恐ろしい秘密・・・、このシーンは実に衝撃的だった。ジェーンの気持ちを思い、胸が締め付けられる。彼女の持つ心の強さはすばらしい。

    紆余曲折の人生でありながらも、ジェーン・エアの繊細で強い心には驚くばかりだ。普通の女性なら、途中でくじけてしまいそうな苦難ばかりだが、それを必死で乗り越えてきたからこその強さがあり、強い自分を保つことができたから、得られたものがあるのだろう。読みながらジェーンに感情移入し、読み終えたあとは、ジェーンのように強い心でありたいと自分も思う。何度読んでも、良い名作は良い名作だと思う。

  • 主人公ジェーン・エアの友人ヘレン・バーンズの存在がとても強く印象に残っている。
    『辛いことがあってもそれを避けることができないのなら耐えることが義務、忍耐をしなければいけないのがあなたの運命。』
    『憎しみにうち勝つ最上のものは暴力ではない、傷を癒やす最良のものは復讐ではない。』
    現代に生きるわたしの心にもなにか響くものがある言葉たち。

    後半、ジェーンが主であるロチェスターに恋をした時にもこのヘレンの言葉を思い出す。
    「あなたは人間の愛を、あまり重要に考えすぎているわ。あまりにも一途すぎるわ。はげしすぎるわ。」

  • 感想は下巻に。

  • コレクターズ版世界文学全集、訳は同じ方。装丁が素敵。
    ながーらくなんとなく知ってるだけでしたが、いや、こんなに魅力的なお屋敷小説だったなんて。
    初めのうちのイギリス中上流、女学校の暮らしぶりもそうですが、家庭教師目線の小説は読んだことなかったので。
    いや、そもそもあまり名作って読んだことないので、全てが新鮮。こんな面白いなら、小学生のうちに読んでおけばよかったです。
    なんでだろ、訳が良いのか、結構超えちゃってるとこもあり。
    後半は彼がうざかったですが、大団円でよかった。

  • 二十歳くらいの時に大好きだった小説です。
    最近海外モノがマイブームなので再読してみました。

    昔の印象では、不器用で控えめな女の子が自らの力で運命を切り開いていく、という印象でしたが今回読んでみて驚きました。
    ジェーンが少女時代からあんなに主張が強く強情で負けん気が強い子だったとは・・・
    (芯が強く集中力が高く情熱的という言い方もありますけどね。)

    とにかく、昔と随分印象が違うので読むのが楽しみ。
    これは私の心が純粋だったから?それとも訳者が違うのかしら?

全83件中 1 - 10件を表示

C・ブロンテの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
遠藤 周作
エミリー・ブロン...
三島由紀夫
マーガレット・ミ...
マーガレット・ミ...
マーガレット・ミ...
ウィリアム・ゴー...
有効な右矢印 無効な右矢印

ジェーン・エア(上) (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×