量子革命: アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突 (新潮文庫)
- 新潮社 (2017年1月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (717ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102200810
作品紹介・あらすじ
1900年、放射線の不可思議な現象を説明するため、M・プランクは「量子」という概念を考案した。その後、天才物理学者たちはこれを武器に19世紀のニュートン力学を覆し、新しい世界像を次々と提示し続ける。量子力学の解釈をめぐるアインシュタインとボーアの論争を軸に、ハイゼンベルク、ド・ブロイ、シュレーディンガーなどの人間ドラマも交え物理学百年の流れを追った白熱の科学ノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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重厚なミステリー、ヒューマンドラマ。
そりゃあ具体的な理論はわかりませんが数学を極力排除した説明やここの人物像に当てた量子力学の通史であり、へっぽこ文系の自分ものめり込んでしまった。量子力学のことも多少なりとも理解が深まった気にもなれるし、そのアンビバレントな魅力の一端を垣間見れた気がする。
ここまでくるとより具体的な量子力学を学びたいと意気込んで手に取った入門書に挫折している私なのです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アインシュタインvsボーアを軸にした量子論史。この対決が凄まじく、また面白い。
SFで飽きるほど見た猫だのテレポートだの宇宙の分裂だのが、どういう流れから産まれたのか分かるのも楽しい。
が、やはり文章から量子論をイメージするのは難しすぎる。訳者は量子論解説本の決定版のように褒めるが、とてもついていけない。「波」と言われて私が想像するものと、量子論でいう「波」は似ているようで全く違う。そんなイメージのズレが至る所に現れるのだから、当然量子論の全体像は群盲像を撫でるが如くである。
私のような盲が理解に近づくには、象を撫で倒すしかないらしい… -
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とびきりの天才が人類の知の沿岸を広げてきたことに改めて敬意を感じながら、それらの天才たちも同じ人間として日々の苦労や戦争のような外的な苦しみに耐えながら知の探究を続けていたという姿に励まされもする。
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当時の偉大な物理学者たちですら、解釈に戸惑い、納得感がないまま、それでももがいて先へ進もうとしていたのであれば、凡人の自分が学生時代に量子力学で挫折したのもやむをえまい
と、自分を慰める。
地球が丸いことや自転公転でぐるんぐるん回っていることを理解や納得どころかイメージすらできなかったであろう大昔の人の気持ちがわかるというか。証拠や証明を持ち合わせなくとも、地球が丸いことや回ってることは子供の頃からイメージできて納得し確信しているのに、量子の世界には手触り感を持てなかったところに自分の知性の限界を感じるというか。
もしもタイムマシンが使えるのなら。
昔の大学入学前の自分に本書を届けて「量子力学を学ぶ際にはとりあえず、解釈とか納得感とか気にせず、とりあえずひたすら数式で勝負して先に進め。解釈とか納得なんてその後だ、もしくは、そんなのはどうでもいいことなのだ」とアドバイスしてやりたい。
本書の本筋ではないが、ナチスによるユダヤ系科学者への迫害に関する記述も興味深い。優秀な科学者をドイツが自ら手放してゆく馬鹿馬鹿しさ。戦後、反共政策を進めたアメリカも同じだ。
政治や差別排外思想が科学や学問に口を挟むと碌なことにならない、という当たり前のことなのに、残念ながらいまだに残存しており、現代の日本にも通ずる教訓だろう。 -
なんか司馬遼太郎の小説みたい。量子力学のいろんな公式や解釈についても、それぞれの成り立ちと軋轢の歴史があったんだなということがよくわかる。そんな簡単に思いついて、簡単に受け入れられてきたわけではない。アインシュタインは量子力学の革新的な考え方についていけなかった”老害”みたいに語られることが多いが、この本を読むとアインシュタインの言っていることの方がまっとうに聞こえることが多い。ハイゼンベルクだってボーアだって老害化しているし、一周回ってアインシュタインが再評価されるようなところも出てきていることを考えると、歴史(特に百年もたっていないような最近)にあまり安直に判断できないということがよくわかる。
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理論よりも人の物語になっていて面白かった。高校物理だった人はぜひ。
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[出典]
「世界は「関係」でできている」 カルロ・ロヴェッリ
脚注 [20] -
量子力学は抽象度の高さや古典物理との違いから学生時代に正しく理解できず、どうしてこんな理論体系ができたのか疑問で仕方がなかったが、この本を読んでその一端を知ることができた。
当時の一流の物理学者たちの中でもなかなか受け入れられず、解釈の異なる事象を少しずつ解いていく過程は科学誌としてとても読み応えがあった。
また量子力学について学びたくなるような本