透明人間の告白 上 (新潮文庫 セ 2-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102377017

感想・レビュー・書評

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  • 思いがけない爆発に巻き込まれて、なんと透明になってしまった男。
    面白おかしく語られます。

    証券アナリストのニック・ハロウェイは、取り立てて特徴のない31歳。遊ぶ友人は多いが、親友も恋人もいないお気楽な暮らしぶりでした。
    ある日、投資のための調査と称して、マイクロ・マグネティックス社の実験的な施設へ向かいます。
    口説いている最中の美人記者アンを、郊外へ連れ出すのが目的でした。
    ところが、核に関わる施設だとして、反対のデモに学生たちが集まっていました。
    責任者のインタビューがとりたいアンは、果敢に博士に近づきますが…
    博士がデモ隊と揉めるうちに、奇怪な現象が?
    警報を訓練と勘違いして、その間一人で休んでいようと決め込んだニックは取り残され…
    意識を取り戻したニックは、自分が虚空に浮かんでいると驚愕!
    じつは爆心地が透明になっていたのでした。
    調査に来た面々の物々しい様子に、実験動物にされるのはごめんだと逃走。

    出社するわけにも行かず、どうやって生きていくか・?
    最初のうちは、電話だけで仕事。ある程度までは出来るんですよね。
    その時着ていた服や持ち物は一緒に透明になっているので、洗濯しつつ着る。
    食べたものは丸見えになるので、出来るだけ透明なものを食べる工夫をしたり。
    ニューヨークには留守宅もけっこうあるので、そこを探して入り込んだり。
    だが追っ手が迫ってくる…
    追いつ追われつ、想像力を刺激する展開。
    映画化されるのはよくわかるテンポの良さ。おかしなシーンも満載です。
    本の雑誌のオールタイムベストで、4位に選ばれていました。

  • 透明人間になったら、私たちはどうするだろうか?
    透明人間といえば、包帯男がめくり上げて虚無の空間を示す、あの古典がある。安部公房が書いた場合、それは漠然とした恐怖の対象そして市民権の剥奪者となった(厳密に言えば、目玉だけが残った「半」透明人間だが)。あるいは、三文エロ漫画のように、不知覚を武器にした、むき出しの(?)暴力体という方向性もあるだろう。

    この作品で透明人間となった人物は、ニューヨーカーだ。都市的、といえば、ずいぶん透明人間にとって都合がよさそうだが、どうもそうではないらしい。都市は人間が構築したものである。その中では、人間が認識できないものの存在が許されない。それゆえ、透明人間は顔がない通行人や隣人に脅かされる(まだ透明人間の存在が警察以外には知られていないため、「市民もまた見えない恐怖におののく。双方にとって悲劇である。」という書き方はできないが)。ハロウェイさんはあんまり透明人間ライフを楽しめていない。

    だからといって、この小説がつまらない訳ではない。さながらハリウッド映画を観ているようで面白い。実際に映画化もされているので、今度観てみたいと思う。

  • いやはや、なかなかユニークな小説です。
    一応ジャンルはSFにしておきましたが、大して科学的な記述もあるわけではなく、ひたすら透明人間の逃亡劇が書かれています。
    透明人間、誰でもが多少の憧れ(私が透明人間になったら何をしたいかは想像にお任せするとして(笑))は持つものですが、この本ではむしろ「透明人間の困惑」とも言うべきものが描かれます。盗み?出来ません。盗んだものが空中を飛ぶのでかえって目立ちます。道を歩けば人にぶつかられます。食事をすれば、胃や腸の内臓物が見えてしまいます。当然、買い物も出来ません。そういう視点がなかなか面白いのです。
    全体に見れば、冗長なところもあり、無用なエピソードを除き2/3程度まで縮めればもっと良いように思えます。しかし、その点を除けば面白い作品でした。

  • 覗きをしたり お気楽な話かと 思ったんだけれども・・・

  • 久しぶりに海外の小説で面白いと感じた小説でした。翻訳も上手く違和感を感じず話を読み切ることが出来ました。
    透明人間になってしまった主人公のお話を読むのは初めてで楽しかった。透明人間になってみたいと思ったことはありますがこの小説をよんで、透明人間として過ごすのはつらいなと感じました。

  • その特異性ゆえに誰もが一度は「もしも透明人間だったなら、あーんなことやらこぉ~んなことして」といった思考遊びの経験がおありだろうと思います。少なくとも何度私は無邪気に妄想したことか。
    けれどもコトはそれほど簡単ではなく、まず衣食住から心配しなくてはいけないようです。
    ドアの開閉一つとっても、誰かの後にくっついて行かねばならぬ不自由さ。
    食事は消化吸収するまで、それは透明人間とは別個の物体として存在するわけで、宙に浮かぶ咀嚼あるいは消化途中にあるブツを人目にさらせるわけもない。
    主人公はそういったモンダイの一つ一つに果敢に立ち向かってゆくわけです。
    そうこうする間にも執拗に迫り来る政府機関。
    これはある日突然、とある研究所の事故で透明人間になってしまった証券マンのサバイバルなお話です。

  • 主人公ニック・ハロウェイはエリート証券マンだが、ある日分子物理学博士の小さな会社の新しい発明の発表に参加し、爆発事故に遭遇し、透明人間になってしまう。一人の一般的な生活を送る普通の30代男性がある日突然透明人間になり、生活をすることになる話である。
    もちろん秘密組織から追われたり、それに反抗して逃げたり、危機一髪の場面もあるが、全体的にコメディ要素が満載となっている。
    追う側も逃げる側ももうちょっと方法がありそうなものだがとストレスを感じそうだが、登場人物のキャラでカバーしているのではないかと思う。
    とりあえず透明人間は苦労が多いということが書かれている。
    読んでいると主人公ニックに愛着がわいてくるのが不思議である。

  • 透明人間が現れた!?
    …ではなく、いかにして透明人間になり、どの様なものか、いかに生活してゆくかの話

    前半の透明人間になるまでは正直かったるい
    我慢して読み進むと後半はトイレも面倒なほど面白い♪笑えます♪

    映画化もされたけど、こちらは話が繋がらず、面白さが台無し
    列車の「あは〜ん」部分で車外のオバ様ビックリシーンはカットしないで欲しかったな〜。笑い所なのに。(そんなにエグい場面ではないよ、一瞬だし)

    やはり、本でのかったるい前半部分があって後半が活きるので…本で読んで欲しいです。長いけど

  • 何年も前に買って、忘れられていた本。
    主人公がある日、突然、文字通り運が悪くて、透明人間になってしまう。透明人間というと、人にばれずに何でもできてラッキー♪みたいなイメージがあるけど、実際になってみるときっと大変だよみたいな内容。

    透明になる前は、普通だった主人公がたくましくなっていくような気がします。だけど、中途半端な最期が残念かな?

  • とある施設の事故で、透明人間になったニック。透明だから当然自分の体が見えない。車には轢かれるし、服は着替えられないし、散々。名作「透明人間」のように簡単にはいかないのだ。
    政府から追われつつ、各地を転々とするニック。後半、すべてを受け入れてくれたアリスと出会い、恋をするーという結末。
    名作。

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