港町食堂

著者 :
  • 新潮社
3.24
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本棚登録 : 294
感想 : 72
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103003519

感想・レビュー・書評

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  • 島に行くにはフェリー、名うての作家なのにあまり丁重な扱いされていない、そこがいい。素性を明かさないから現地の人もフラットに歓待。おもしろかった。奥田さんのスナックのママ描写も好き。

  • これはおもしろかった。港町に船で入る、という設定で旅エッセイを書く仕事を与えられた奥田氏。編集長、編集者、カメラマン、奥田氏の4人で行く港町。行く先々での食事、温泉、そしてスナックのママたちとの語らいで地元事情やママたちの人生をも感じ取る。

    高地・土佐清水、五島列島、宮城・牡鹿半島、韓国・釜山、敦賀・佐渡、稚内・礼文の6か所。牡鹿半島を訪れた後に、めでたくも直木賞受賞となった。が、船室は初回が1等だったほかは、2段ベットが2列の2等。直木賞をとっても俺をあくまでも「仲間」だとして扱おうとしている、この平等精神をわたしは高く評価したい、ほっほっほ。・・こんな感じのブラックで明るい感じの描写で全編埋まる。食べ物も精力的に地元名物を食べまくり、それがとても美味しそうなのだ。

    敦賀のスナックでは「電気関係の人?」と聞かれたが、県外から来る人はほとんどが電力会社の技術者か工事関係者とのこと。牡鹿半島では女川原発を見る。原発については意見保留。と書いている。訪れたのは2004年、その後の震災を思う。

    礼文島では、吹雪で船が欠航し39歳で孫がいるというスナックのママの次男?の剣道大会を見に行っている。「罪の轍」(2019)では犯罪の主人公は礼文出身で、その母親はスナックのママという設定。この礼文の旅も頭の隅に残っていたのか。

    礼文で任務を終えた奥田氏。旅とは多くの場合、旅人の側に感傷が深い。地元の人には地元の人の日常があり、旅人の出る幕はない。黙って訪れ、何も残さず静かに去ってゆいく。それが旅する者の礼儀だと。


    初出
    「旅」2004.5月号~2005.4月号

    2005.11.20 発行 2005.12.15第2刷 図書館

  • 「港町を探索して、紀行文を書いて欲しい。港には、毎回、船で入りたい」と、編集長に切り出され、「へぇー面白そうですね」と、表面上、素っ気なく答えたのが、いつのまにか了承したことになって、気がついたら、日程が組まれていた。
    「いい人は家にいる」が座右の銘の作者が、船で、高知・土佐清水、五島列島、宮城・牝鹿半島、韓国・釜山、敦賀・新潟佐渡、稚内・礼文島と、《そりゃあ、太りますぜ、ダンナー。》《太ってきましょう、今回も。》《ダイエットは帰ってから》と言うくらいに、食べに食べる旅のエッセイ。
    軽くかーるく読める内容。

  • 新潮社の『旅』という雑誌、船で港町を訪れるという企画で、全国各地の港町を訪れた紀行文

    高知・土佐清水、五島列島、宮城・牡鹿半島、韓国釜山、佐渡島、稚内・礼文

    いやはや私が勝手に「オリンピックの身代金」や「罪の轍」、我が家シリーズなどの作品から思い描いていた渋いナイスガイの奥田さんのイメージがどんどん崩れ去る

    いいんですか?
    奥田さん、そんなに素をさらけ出してと言いたくなる

    でも、おもしろかった
    奥田さんに興味のない人には、何だこれ!
    好き勝手に、出版社の金で食べ、飲み歩いているだけじゃないかと言われるだろう

    現に、ブクログの評価も両極端に分かれている

    ただ、奥田英朗ファンには、奥田さんの素顔を見ることができてよかった

    高知港から土佐清水港へ向かう船上、
    ぐるりと水平線に囲まれた、三百度近い大パノラマ
    最高のブルースカイ
    生きてきて、目に映ったNo.1の景色ではないだろうかと大興奮!

    誰も見ていないことをいいことに、海の上のステージで、頭の中で次から次へと溢れ出る音楽をバックに、指を鳴らしステップを踏み、ジャンプをし、両手を広げクルクル回り、駆け回る奥田英朗

    その姿を編集長は、しっかり見ていたというおまけ付き
    思わず吹き出してしまう

    こんなことをするんだと知ることができただけでも、この本を読んでよかった
    出来得ることなれば、奥田さんをこんなふうに駆り立てた光景を見たかったけど・・・

    訪れた港町で知り合った人々の底抜けに明るい人柄が、自然と奥田さんの素顔をさらけ出させてしまったのだろう

    季節外れに訪れた礼文の一生忘れない気がすると感じたスナックのシングルマザーたちと過ごした夜、いつか小説にしたいと奥田さん
    小説にしてください、その切なくて楽しい思い出を
    待っています

  • 目的地へ向かう船旅ではない。船で港町へ向かった、という文章を書くための旅。
    出版社の人たちとだらだら馴れ合いながら、各地の名物を美味しく味わう。スナックにも繰り出す。最終的にはパチンコへ向かってしまう。

    なぜ船旅をする必要があるのか。
    写真はほとんど載っていないのに毎回カメラマンが同行する必要があるのか。
    何もわからないまま、おじさんが食べたい物を食べて、酒を飲み、文句を言ったりする旅行記。
    ワオ!を連発する奥田さんがかわいい。

  • かなり久しぶりに再読。このあたりのエッセイから奥田英朗の良い奥さんになれると思うのにと思うようになってたんだっけと懐かしい。どこも行きたくなるけど,五島列島は死ぬまでにぜったい行こうと思う。
    久しく新しい本を読んでいない気が。何か出してくれないかな。

  • 読書途中

  • 人生のバイブル的な本。
    困った出来事やしんどい思い出こそ、後で笑い話になるんだなーと思える。そんでもって、楽しい出来事や美味しいものを食べた思い出は、マジで最高な自慢話になるっていう。素敵おじさまエッセイ。

  • 奥田英朗のエッセイ、4冊目(かな?)。他のはどれも面白かったのだが、これはものすごくつまらなかった。基本的に出不精だそうだが、今回の紀行文、とにかくだらだらとただなんとなく目的もなく、編集者に連れまわされてあちこち行ってみました、という内容で、しかもタイトルからすると訪問地のグルメも紹介するのかと思いきや、言葉短く何も伝えるつもりがないとしかいいようがない、文字通り味も素っ気もない食レポ。ただ、「美味でした」だけってさすがにどうよ、と。
    直木賞を取って多忙作家の仲間入りをし、作家活動に消耗する身心を癒すための旅、という感じだが、それにしても、こんな内容でも読者が気に入って読んでくれると思っているとしたら、にわか人気に少し調子に乗ってしまった態度だろうという気がして、ちょっといただけない。
    ひさびさに時間を無駄にしたと思えた本。

  • 島に行くべし

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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