となりのセレブたち

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 402
感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103133643

作品紹介・あらすじ

「金持ちですが、何か?」身近な小金持ちの悲喜交々を笑い飛ばす痛快短編集。親の介護にペットの世話、面倒はすべてお金で解決。自己中心的でも他力本願。そして根拠のない楽観主義……私たちの周りの、いわゆる「セレブ」な人たちを、ユーモアと皮肉たっぷりに描く全五篇。大人の恋愛あり、近未来SFあり、官能サスペンスあり、さらにはカーチェイスまで。欲望のままに突き進む現代人の解体新書。

感想・レビュー・書評

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  • 皮肉のきいた5話からなる短編集。
    前半2話は経済的に裕福な人々の悲喜こもごも、後半3話は近未来的な話になっていて、どの話も結末に「なるほど」となった。

    「トマトマジック」
    セレブな主婦たちの食事会。
    ホストは刺繍教室の講師をする主婦で、集まった女性たちを心の中で値踏みしている。
    トマトの代わりに使ったドライトマトを食べた事で彼女たちに思いがけない出来事がー。

     シニカルで皮肉のきいた結末。あれだけ心の中で女性たちをバカにしていた主人公が一番俗っぽいというのが何とも笑える。

    「蒼猫のいる家」
    主人公は猫嫌いのキャリアウーマンの主婦。
    家族は彼女が猫嫌いなのを知っていて猫を飼い始める。家に自分の居場所がなくなったと感じた彼女は不倫をするがー。

     不思議な結末のようだけど、何となく分かる。犬より猫の方が愛情に関して純粋かもしれないな・・・と思った。自分の世話をしてくれる人、自分に利益のある人よりも自分の感性で人を選ぶ。私は特に犬も猫も好きじゃないけど、何故か犬に吠えられ、猫には相当人見知りの猫にも好かれる。何となくその様と重なった。

    「ヒーラー」
    「吹き流し」という深海魚が世の中で流行する。
    女性たちはその粘液で美しくなり、男たちはその魚で性処理をする。
    やがて、それは世の中の仕組みに大きく影響を与えるまでとなりー。

     こんな魚、本当にいそうだな・・・と思う。シニカルながらコミカルな話。

    「人格再編」
    高齢化社会において、老人たちの人格を人格者に再編するという取り組みが始まる近未来の話。

     これを読んで「時計じかけのオレンジ」を思いだした。世の中のためになるものでも、その人らしさが無くなるというのはどうなのか。ああいう人間や年取って老醜をさらすという事も意味がある事か・・・と思わされる話。

    「クラウディア」
    借金取りに山中に捨てられた男性。
    土に埋められた彼のもとを付き合っていた女性の飼い犬であるアフガンハウンドのクラウディアが追ってきて救う。やがて、男性と犬は山小屋にたどり着き、不思議な関係性の生活が始まる。

     この話は別の話とはまた毛色が違う。犬が最初は主人公に服従していたのが、野生の本能が呼び覚まされ、だんだん主従関係が変ってしまう。
    そのまま話が続くのかと思いきや、また別の展開になり、ドタバタ劇的な話だった。

    文章は面白くないが、話の筋と結末は面白い。
    様々な人間を生臭く、ちょっと斜め目線で描いている。

  • 趣の違う作品が収録されている短編集。篠田さんのイメージとは違う作品もいくつかあって新鮮だった。気取ったセレブたちが危ない食べ物を食べて本当の願望に気づいてしまう「トマトマジック」。仕事に打ち込みすぎて家庭に居場所がない主婦が安らぎを感じた年下の男との関係の終わりが悲しい「蒼猫のいる家」、わがままな親の介護には意味があると気づかせてくれた「人格再編」が印象に残った

  • *どこが優雅?だれがゴージャス?マダムのお茶会、犬のヒモになったオトコ、回春ペット―何でもありのセレブ生活。となりの小金持ちたちの喜悲交々を笑い飛ばす、痛快短編小説集! *

    ブラックでシニカルで不気味なのに、なぜか振り切った一抹の爽快感が心地いい、読み応えのある1冊。そこはかとなく漂う人間のいやらしさにぞわぞわします。とにかく巧い、の一言。ただ…なぜこの題名??内容に全く合っていません。本の紹介文も。そこだけが残念で☆ひとつ減です。

  • なんとなく少しグロテスクな印象の短編集。
    セレブの話ばっかりでもない。SFっぽい作品もある。

    特に「吹き流し」と「アフガンハウンド」の話がちょっと怖い。でも怖いもの見たさで読み進めてしまった。やっぱり怖い。

  • 短編5作品

    「トマトマジック」
    彼女たちの本当の欲望
    「蒼猫のいる家」
    ネコが大嫌いだった主婦が最後に一緒にいるものは…
    「ヒーラー」
    癒される事で弛緩していく世界、満足した人間の行末は?
    「人格再編」
    世代交代は自然の摂理
    「クラウディア」
    犬と人の上下関係

    細切れに読むなら良いと思いますが、全編なんだか人の欲が…うーん、、って感じです。

  • おもしろかった!
    短編集であり、その中の「人格再編」は少し未来のことが描かれているのだが、今の呆れた世の中の事情を適切な表現で表し共感する事ばかり。
    そして本来あるべき理想的な死のあり方が描かれ気持ちよく読めた。
    最後の「クラウディア」ははらはらしながら読み続け最後はすがすがしい終わり方だった。

  • セレブな人たちを描いた短編集。
    ということだが、「セレブ」をイメージする話は最初の話「トマトマジック」のみで、全編通じてブラックな短編集。
    なかなか強烈だった。
    猫嫌いのキャリアウーマンを描いた「蒼猫のいる家」、ひんやりしたような淡々とした読後感、一番良かった。

    評価があまり良くないのは、タイトルから連想する内容と異なるからと思う。
    本書自体はとても面白かった。

    トマトマジック / 蒼猫のいる家 / ヒーラー / 人格再編 / クラウディア

  • かなりブラックな5つのストーリーからなる短編集。
    セレブ感のある話は、最初の一つだけだったかなと。
    猫嫌いの、自分家に疎外感を感じていた働く主婦の話「蒼猫のいる家」
    借金取りに追われて山に紛れ込み、そこで彼女の飼っていた犬と暮らすことになった「クラウディア」が面白かった。

    どの話も、どこか不気味で、嫌な感じが漂います。
    著者の作品は初ですが、どれもこんな感じなのかな?

  • Amazonで見た本の内容紹介には、
    『「金持ちですが、何か?」身近な小金持ちの悲喜交々を笑い飛ばす痛快短編集』・・・と。
    (なぜ編集者はこの本にこんなミスマッチなタイトルと紹介文を
    つけてしまったのかしら?!)
    タイトルの是非はともかく5つの短編はとても面白く読めました。
    そこに登場してくるのは、
    ・食べると本心をさらけ出してしまう不思議な植物。
    ・人間を破滅に追い込む謎の深海生物。
    ・性格の悪くなった老人に施される、人格矯正手術。。。
    などなど、どのお話もちょっと不気味でかなりシニカル。
    『セレブを笑い飛ばす痛快なお話』だと思って読まなければ
    バラエティに富んだ面白い本だと思われます♪

  • 短編集。
    『トマトマジック』よく確認してから調理しないとね。しかし、素晴らしい夢がみられるのか。自分ならどんな夢かな?
    『蒼猫のいる家』猫が嫌いなのを家族は知っているはずなのに娘の誕生日プレゼントで家に猫がやってくる。これじゃ、家の中に居場所がない。猫を使って家族にいいように追い出されたような気分になっていたのに、心のなかを見透かしていたのは猫だった。猫に対する考えが変わるかも。
    『ヒーラー』お肌プリプリ、気分も良くなる。それが、不気味な生物の粘液であっても、それ以上に魅力的に思えて試してみそう。生物と一緒に入浴するのはお断りしたいけれど。
    『人格再編』元の人物に戻るならまだしも、他人のいいところを埋め込むなんてね。できすぎ、やり過ぎは禁物。
    実現可能な技術で自分の腕を自慢できるとなると人間って極端なことをやってしまうものかもしれないけれど。
    『クラウディア』犬は、ここまで理合できる動物なのだろうか。順位は認識しているのだと思うけれど、このような環境下に置かれるとそりゃ自分がトップだわな。犬に助けられたとなったら、犬の言いなりになるか…なるな、それしか生き延びられそうにないもの。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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