二〇三〇年東北自治区

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103175056

感想・レビュー・書評

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  • タイトルとオビの紹介文から、大好きな近未来小説だと判断してお買い上げ。

    単行本オビより引用
    『10ページも読み進めないうちに体が震えてきた。とてつもないことを半村さんはしている。東京の多民族雑居化が進み、東京はすでに政治と経済の中心都市の機能を失った。代わりに誕生したのが東北自治区と呼ばれる日本人だけの暮らす地域だ。青森、岩手、秋田、宮城、山形の五県がそれに含まれ、日本政府から離れた、いわゆる独立国家を形成している。国境は堅く守られ、言わば理想国家を具現しているのだ。いかになんでも、と思うだろうが、半村さんの筆は微に入り細に亘り、そこまでに至る道程を伝える。有り得る想像だな、と私は何度も頷いてしまった。今の状況が進めば、そうなるのが自然である。もはやこれは小説を超えて都市論、あるいは国家論にまで発展している(高橋克彦氏)』

    モチーフとしては比較的メジャーな東京崩壊後の世界という設定。
    とはいえ、不老不死のための最先端なクローンビジネスで世界中の富裕層を人質にとる手法、誰が味方で誰が敵なのか分からない謎が謎を呼ぶ展開など、中盤までは非常に読ませてもらいました。

    が、肝心のラストが個人的にはちょっと残念。もう少し丹念に結末まで書き尽くして欲しかった。具体的には、最後にもう一度東北に戻って…という展開があればよかったのですが、構想が非常にスケールの大きいものだっただけに、そこだけが悔やまれます。

    でも寒い冬の午後、こたつでウトウトしながらののんびり読書にはちょうどよかったかも。

  • 半村 良の晩年の作…… 惜しいなぁ.実に惜しい.世界設定,人物設定,ヴィジョン共に申し分ないのだが致命的に竜頭蛇尾である.ヴォリュームは300頁あるから,それなりに長篇なのだが,さぁクライマックスが始まるぞと思ったところで急に話が矮小になってしまう悲しさよ.いくら浅草に愛着があると言っても,日本分断という壮大な設定で,話のヤマを浅草に持って来るのはないよなぁ.

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著者プロフィール

1933年東京都生まれ。都立高校卒業後、紙問屋の店員、板前見習、バーテンダーなど様々な職業を経験した後、広告代理店に勤務。62年「SFマガジン」第2回SFコンテストに「収穫」が入選。71年初の単行本『およね平吉時穴道行』刊行。73年『産霊山秘録』で泉鏡花文学賞、75年「雨やどり」で直木賞、88年『岬一郎の抵抗』で日本SF大賞受賞。『石の血脈』『戦国自衛隊』『妖星伝』など著書多数。2002年逝去。

「2023年 『半村良“21世紀”セレクション1 不可触領域/軍靴の響き 【陰謀と政治】編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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