- Amazon.co.jp ・本 (163ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103195092
感想・レビュー・書評
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市場の音、ざわつきもご馳走である。活気あるファーマーズマーケットや魚市場では食材の新鮮さが伝わってくるし、冬の凍てつく空気にあっても、市場のアチコチからかかる話し声に安心感と暖かみを感じたりもする。
ガイドブックに載っていないような小さな町の小ぶりな市場も魅力的である。ファーマーズマーケットそのもので、近隣の農家が持ち寄った品々には、お土産用途の物などはもちろん入っておらず、日用品の占める割合が高い。まさしくその国の様子やご当地の暮らしぶりが手に取るようにわかる。
食材なども高級品ではなく、日常的に食べられているものが、種類多く並べられているのも、地方の市場の魅力となる。ここでは旬のものや好まれているものが一目瞭然であるのが楽しい。
● 田舎町の市場と観光地化された市場
● 市場の魅力を記した本
● パリのマルシェで大活躍した魔法の言葉
● 各国のファーマーズマーケットの魅力
小説家・堀田善衛さんがエッセイでスペインの市場について、「料理にはどこか野蛮な味が残っていなければならないであろう」と綴(つづ)っていた。そして、「遺憾ながら私の筆は酒食の叙述に向かない」などと書きながらも、素敵なスペイン魚市場の記述が咲き乱れていた。
野蛮な味の文章はこう続く。
“丸形の座布団ほどもある大きなパンを切り、これを火であぶり、オリーブ油を塗ってトマトを擦りつけ、ニンニクの汁をたらした、パン・アンブ・トマテなる野趣にみちたものがいい。”
田沼武能さんの写真とともにこんな描写が満載の堀田さんによる『カタルーニア讃歌』(新潮社)は、とてもお勧めの随筆集である。
かように旅先での市場巡りは、楽しく、どの国でも舌も胃袋も満たされる。
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https://jtaniguchi.com/farmers-market-markt-marche-souk/詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
単行本: 163ページ
出版社: 新潮社 (1984/08)