著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103197232

感想・レビュー・書評

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  • 豊富な語彙にひねりも効いた絶妙の比喩、音感とリズムの良い文体に唸らされながらも、それらが作り出す架空のリアリティに引き込まれて夢中で読んでしまう。
    各編の読後にはどっと疲れてしばし呆然となるほど面白い。
    短編集だが一話毎の重みがすごくて続けては読めず一日一話のペースで読みました。
    いやー面白かったー

  • 期待して購入しましたが、読むのが苦痛でした。

  • 7つの短編集。
    どれも想像の上をいく不気味さで面白かった。
    「食書」「耳もぐり」が特に良い。
    他に「喪色記」「柔らかなところへ帰る」「農場」「髪禍」「裸婦と裸夫」

  • 最初の短編は面白かったのですが、後半の話は何を伝えたいのかがよく分からず、「一体今何を読ませられてるんだろう、、」という気になってました。
    最後まで読む気が起きず断念してしまいました。

  • 禍々しいの禍と書いて「わざわい」と読むのだそうだが、まさにそういったタイプの短編ばかり、こじらせた夢野久作、江戸川乱歩、無限紳士怪奇篇って感じ。

    大っ嫌いなタイプの気色悪い性癖系ホラー短編集。なのにムッサおもろかった。グロテスクなことを書いているのに倒錯していく展開に納得している自分、実はそこが一番怖いのかも。

    個人的には太った女の人に惹かれていく話が一番好き(これ普通にポルノ映画にできると思う。Xビデオとかでかなり人気の動画になるはず)だが、それ以外のどの作品にも捨て作品なし。全て平等に堂々と力強く倒錯しています。

    正しい異常性癖とはこういう世界を指すのだと…知らんけど、ほんまはまってもうても知らんけど。

  • どの短編も絶妙に気持ち悪いんだけど物語に引き込まれて読み進めてしまう。
    しかし短編だと少し物足りない。『残月記』のような中編が個人的にはちょうど良い。

  • これは私の備忘録なので、ネタバレ、あらすじ、迷わず書きます。

    並行しながら書いていたらうっかりデータを飛ばしてしまった。
    面倒だが再チャレンジ。
    表紙の文字、てっきりGで構成されていると思ったら髪とか耳とか手とかで出来ていた。

    食書
    ショッピングモールの本屋の横にある多目的トイレに入った主人公は、便器に座って本のページを食べる女を見てしまう。
    女から 一枚食べたらもう引き返せないからね と言われたが、好奇心から一冊の本を破り取って食べる。すると食べた物語の世界に入ってしまうのだった。
    主人公は次々と蔵書を食べ続け、ついに本以外の固形物を食べなくなる。
    ある日、エレベーターに乗ると最初に食べた 魔女 という本の登場人物が話しかけてきた。本の世界が現実を侵食してきたのである。主人公がエレベーターから飛び出すと、そこはまだ現実であった。息を切らせて膝をついた主人公に、小学生が大丈夫かと話しかけてくる。
    「大人になるとな、地球につまづくようになるんだ」と答えるが、小学生は「へえ…人生じゃなくて?」と言うのだった。それは主人公自身がつぶやいたのかもしれなかった。

    耳もぐり
    恋人の百合子が失踪し、彼女のアパートを訪ねた主人公の光太は、隣人の男から話を聞く。
    隣人は昔、男が電車の中で眠っている女の耳に指を入れたかと思うと、耳の中に吸い込まれていくのを見た。
    隣人は耳の中に入った男、鈴木からその技術を学ぶ。
    それは耳もぐり というもので、指を入り鍵という形に組み、人の耳に差し入れるとその人物の中に入ることができ、入っている間はその人物を思うままに動かせるようになるのだった。出る時には出鍵 という指の形を組んで出る。しかし入っている間に意識がその人物と溶け合ってしまうので長く潜ることはできない。
    また、自分で自分に潜ることも、誰かに潜っているときの体で別の人物に潜ることも危険だと学ぶ。
    隣人の男は鈴木が寝ている時に、彼の指が入り鍵の形を組んでいることに気づき、鈴木自身の耳にそれを差し入れる。鈴木は、自身の耳に吸い込まれて消滅した。
    隣人は誰かの体に入ったままで別の人物にもぐることを続け、たくさんの人と溶け合ってきた。そして百合子もその中にいる。今、隣人は百合子の意識を持ちながら恋人の光太に潜り、百合子は光太に溶けていくのであった。

    喪色記
    なにかが後ろから迫ってきているという「ざわめき」という感覚を体験し続けてきた主人公。彼は「滅びの夢」と名付けた夢を見るのだった。その夢は「灰色の獣」が現れ、色が奪われていく世界だった。色を奪われた世界は灰色になり、灰化してしまう。唯一逃げる方法は「眼人(まなびと)」の力により夢幻石に入り、別の世界に行くことだ。主人公は夢の中では力の弱い眼人だったが、幼馴染のマナという少女一人なら逃がせるのではないかと考えていた。
    ある日、主人公の目から煙が出たと思うと、それはマナの姿になった。主人公はマナを連れ帰り、一緒に暮らすうちに記憶があやふやになっていく。マナは「真奈」となり、目から現れたという記憶と大学時代にバイト先で知り合ったという両方の記憶があるのだった。
    二人は年をとり、息子と娘、孫も生まれるが、世界が灰色になり始める。息子や娘の連絡先が消え、彼らの家の痕跡もなくなり、顔も思い出せない。やがて、マナも灰色になり始める。マナの希望で主人公はまだ色の残る海へ行くが、そこにも灰色の獣が押し寄せてきて、二人は灰化してしまうのだった。
    時間が経ち、灰化したマナの中から、色をもった少女が這い出してくる。少女が主人公の灰をかきだすと中には少年が。二人は灰色の世界の灰色の海の上に、唯一、色を持つ小舟を見つけると、それに乗り込んで大海原に漕ぎだしていくのだった。

    柔らかなところへ帰る
    「お隣、よろしいですか?」路線バスの中、30代くらいの樽のように太った女が隣に座った。主人公は狸寝入りをするその女に愛撫され、席から立ちあがったものの、それ以来、あの女のことが頭から離れなくなる。
    数か月後、バスで太った女に「お隣、よろしいですか?」といわれるが、その女はあの時の女にそっくりなのに明らかに40代ほどなのだった。もちろん愛撫もない。主人公は失望する。数日後、電車で太った女に「お隣、よろしいですか?」といわれる。この女も同じ顔をしていたが、20代にしか見えなかった。
    その後、主人公の前に17人の同じ顔をした太った女が現れるが、どの女も最初の女ではなかった。主人公は夢とうつつがあいまいになっていき、妻からも心配される。
    ある日タクシーにのったとたん、「お隣、よろしいですか?」探し続けたあの女であった。
    主人公は女の自宅へ行く。屋敷にはまったく同じ顔をした全裸の女たちが彼を待っていた。
    「わたしの一族の女たちです」「わたしたち、みんなであなたを選んだんですよ」
    主人公は女たちとまぐわいながら、屋敷の奥に進んでいく。最奥にはやはり同じ顔をした、5メートルはありそうな大きな女がいた。主人公は言葉を忘れ、すべての源である大女の股の中に頭を差し込み、その奥へと入っていくのだった。

    農場
    ホームレスとなった輝生は、「農場」で働くことになる。寝ている間に連れていかれたそこでは、バイオ関連企業からの依頼で「ハナバエ」という実験的な作物を植えつけて収穫しているという。どうみても人間の鼻にしか見えない「ハナバエ」だが、土に植えると老若男女が育つ。それらは倉庫の中の監房に入れられ、言葉や表情を取り戻すとどこかに出荷されていくのだった。
    農場に大崎という男が現れる。大崎はかつてここで働いていたが、ハナバエになって戻ってきたのだった。農場の古株である権田は喜ぶが、11月になると、大崎は弱り、肌色がくすんでくる。また、出荷されたハナバエも次々に農場へ戻ってくる。権田と輝生は、大崎をはじめとするハナバエたちの鼻をそぐ。大崎は後輩たちが鼻をそぐための「練習台」となっているのだった。
    やがて、権田が死に、鼻をそがれる。大崎の役目を継いだのだ。それから40年。輝生が農場に来てから44年がたっていた。輝生は権田の鼻を見ながら、自分の鼻を自らそぎ落とすのだった。

    髪禍

    サヤカは10万円の報酬金を目当てに、“惟髪かんながら天道会”と名乗る宗教団体が執りおこなう「髪譲りの儀」にサクラとして参加する。この宗教は「大髪人」が世界を救うというものであり、教祖は90歳を超える老婆であるが、黒く美しく5メートルはありそうな豊かな髪をしていた。
    そして「髪譲りの儀」がはじまり、後継者として手足もなく無毛の美しい女が運ばれてくる。やがて、美しい女は教祖の髪を吸い込みはじめ、手足のあるところから髪が生えてきてねじれ、翼が生え、まるで巨大な蜘蛛のようなおどろおどろしい姿になっていく。
    サヤカや周囲のサクラたちは逃げようとしたが逃げられず、髪が逆立ち、次々に化け物のような後継者に吸い込まれていった。
    目を覚ましたサヤカの背からは髪でできた翼が生える。サヤカは喜びに包まれながら、大髪人のために仲間とともに羽ばたいていくのだった。

    裸婦と裸夫
    『現代の裸婦展』のために電車に乗った圭介。読書をする眼鏡女子に見とれていると、全裸の男が現れる。この男に触れられた者が服を脱ぎだす。また、全裸になった者に触られた者も。この症状「ヌーデミック」が世界中に広がる。圭介と数人がビルの屋上に逃げるが、ついに取り囲まれる。裸の人間たちの皮膚は破れ、中から人間のものではない白い肉が覗いていた。中にはあの眼鏡女子もいた。彼女は盛り上がっていく水平線をみながら「新しい世界がくる」というのだった。
    全裸になった圭介は、眼鏡女子と人間の名残の皮膚をはがしあう。
    やってきた大波にのみこまれ、世界は海に沈んだ。しかし多くの裸者は生き残った。
    3か月後、『現代の裸婦展』が開催されていた美術館の中を泳ぎ回る裸婦と裸夫の姿があった。ここからまた、文明を生み出すのだ。

    食書、現実になったら楽しそうかな、とも思ったが、一生ホラーは読めなくなりそうだ。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50339813

  • 「食書」★★★
    「耳もぐり」★★★★
    「喪色記」★★
    「柔らかなところへ帰る」★★★★
    「農場」★★★
    「髪禍」★★★
    「裸婦と裸夫」★★★

  • 一番好きなのは耳もぐりの話かな?
    ホラーの怖いというよりどれも歪な世界過ぎて私の理解が追いつかない
    ちょっと読みづらさはあったけど、どうゆう事なんだろうと読み込んでしまいました

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著者プロフィール

1974年生まれ、宮城県出身。小説家、ファンタジー作家。関西大学法学部政治学科卒業。2009年『増大派に告ぐ』で、第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、作家デビューした。2013年『本にだって雄と雌があります』で、第3回「Twitter文学賞国内部門」の第1位を獲得した。

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