トリニティ

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103259251

感想・レビュー・書評

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  • 心の蓋が取れた時、自分は何を叫ぶのかーー。


    1964年東京オリンピックの年に、とある出版社で出会った、ライターの登紀子、イラストレーターの妙子、専業主婦の鈴子。

    駆け抜けた時代の中で、三人が何を求め、何を捨て、何を得たのか。

    本作は、時代を生き抜いた女たちの人生を、丁寧に描いた作品である。


    「女は家」という当時の風習が長々と続くなか、それで守られてきたことも何かしらあるだろうと認めた上で、
    その反面、どれほどの女性の才能をただただ潰し続けてきたか、という点にも今一度 目を向けてほしい。

    世の中の風潮に歯を食いしばり、立ち向かってきた女性たちがいて、今がある。
    現代を生きる私たちが今、闘って闘って掴み取った何かが、〝未来の当たり前〟としてそこに在ることができるのならば、
    それはとても幸せなことではないだろうか。


    この作品は、多くの女性に読んでもらいたい、と思うと同時に、多くの男性の方にも是非読んで頂きたい。

    多くの人に心に焼きつけてもらいたいのだ。
    この3人の生きざまを。


    最も印象的な場面は、1968年10月21日に起きた新宿騒乱のシーン。
    まるで自分のその場にいたかのように心に残るものとなった。

    時代を生き抜き、戦い続けてくれた女性達よ、今だ。
    男性社会だった頃、女性を抑圧してきた男性達へ、この本を届けるのだ。

    私は左手に石を握りしめている。
    しかと受け継いでいる。
    投げつけたりはしない。
    右手に得たトリニティがあるから。
    ただ、差し出せばいい。

  • とても良かった。
    世代としては、自分の親世代。女性が自立して働くことが、とても大変だった時代。
    男性と肩を並べて働く女性はカッコいいとおもう。でも、それはきっと表面的なところしか見れていなくて、たくさんの葛藤が、あるんだと思う。
    私の世代はまだまだ、男が働いて、女は働いてても、家庭は守る。という感じ。男も女も、仕事をして家庭も守る、となるように、環境を変えていかないといけないですね。

  • 2021年5月30日に紹介されました!

  • 最近、女性の生きづらさを描いた作品が多くなってきた気がする。色んなことの変革期ということかな。

  • 2020.11.19 図書館

    窪美澄2作目。

    1作目に読んだ「ふがいない僕は~」がとても私好みで良かったので、
    期待して読んだ。

    戦後、出版社を中心に活躍する3人の女性それぞれの話。
    大学卒業直後から花々しいデビューを飾ったデザイナー、
    親子3代で執筆者であるお嬢様ライター、
    平凡な家庭に育つOL、、、

    それぞれの生い立ちや仕事姿勢、女性が活躍できない時代を生き抜く葛藤など、
    華々しい仕事の裏で苦悩する姿も窪美澄らしいリアリティのある、ひやりとした文章でとてもよかった。

    最初から3人の現状(老後)が分かっていたので、展開への期待が薄まったように思う。
    物語を通してずっとジメジメした雰囲気。
    序盤の純粋な頃の幼少時代も、中盤の大成功を収めている場面でも、これから転落することが分かっているからどんより。
    それが狙いだと思うが、私はプロローグはない方が良かった。

    というか、孫の話全部蛇足。
    最初と最後、どうしてつけちゃったんだろう?

    読み始めて、ありきたりではずれだと思ったけど、過去編になったとたん窪美澄!というかんじで、3人の人生は面白く読めた。
    で、また最後で現代に戻ってくそつまらなくなった。

    インタビュー中に涙が止まらないとか、登紀子さんが亡くなるところとか、俗的な泣けの押し売りがすごい。
    こんな作家だった?
    どうしようもできないリアルを淡々と描くことが作者の良さなのに、
    全てを台無しにしてた。
    冷めた。

    もったいない…

  • 男、結婚、仕事、子供のうち3つしか選べなかったら?
    というフレーズが気になり読みました。
    3人の女性がそれぞれの立場で昭和を駆け抜ける物語。
    読みごたえがありました。

  • 3人の女の人生を読んだ。

    第二次大戦前後に生を受け、高度経済成長期をイラストレーター、フリーライター、専業主婦として生きた3人。その半生どころかほぼ全生を描いている。まるまる3人分の人生を浴びるのは疲れるが、様々な感情が入り混じる心地よい疲れだ。‬

    参考文献からも明らかだが、モデルである舞台は平凡パンチであり現マガジンハウス。時代、なんて言葉で片付けてはいけないが、この時代を進歩的な女性の象徴として生き抜いた、本作のモデルとなったであろう人々の、ヒト視点で丹念に辿った歴史書と言っても良いかもしれない。‬

  • 読み終わって、早速ストーリーの元となった雑誌を調べたくなる。。それもまた面白い。

    主人公の三人のうち一人は、親の親の話から始まり死まで描かれていて、まるで伝記のよう。
    長いお話だけど、引き込まれていく。

    昭和から平成で生きた三人の女性、それぞれに人生の選択に、もがいて生きた三人のお話。

    当時は今の時代とは違うけど、
    生き方の選択肢は年々複雑化されていってるし、
    どの道を選択するかで、悩みも幸せも全然違うってことは年代違えど変わらない。

  • 殆ど前情報を入れずに読み始めたので平凡パンチやanan絡みのお話とは思わなかった。でも何だろう、時代の波というかうねりみたいなものを追体験できるような力を持った物語だと思った。

  • 50年代から活躍してきた3人の女性の活き様を中心に据え、結婚、仕事、家庭の中で女性が活躍する姿を力強く描いた作品。
    父と子と精霊、トリニティ。
    3つの大事なもの、3という数がベースに流れている感じも面白い。彼女たちが活躍してきた時代に、女性が働くこと、先端を行くことというのは、こんな感じだったのだろうかと思いながら、ついつい先を読んでしまう面白さだった。

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著者プロフィール

1965年東京生まれ。2009年『ミクマリ』で、「女による女のためのR-18文学賞大賞」を受賞。11年、受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、「本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10」第1位、「本屋大賞」第2位に選ばれる。12年『晴天の迷いクジラ』で「山田風太郎賞」を受賞。19年『トリニティ』で「織田作之助賞」、22年『夜に星を放つ』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『アニバーサリー』『よるのふくらみ』『水やりはいつも深夜だけど』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『夜空に浮かぶ欠けた月たち』『私は女になりたい』『ははのれんあい』『朔が満ちる』等がある。

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