暗幕のゲルニカ

著者 :
  • 新潮社
3.94
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本棚登録 : 2650
レビュー : 454
  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103317524

作品紹介・あらすじ

一枚の絵が、戦争を止める。私は信じる、絵画の力を。手に汗握るアートサスペンス! 反戦のシンボルにして20世紀を代表する絵画、ピカソの〈ゲルニカ〉。国連本部のロビーに飾られていたこの名画のタペストリーが、2003年のある日、突然姿を消した―― 誰が〈ゲルニカ〉を隠したのか? ベストセラー『楽園のカンヴァス』から4年。現代のニューヨーク、スペインと大戦前のパリが交錯する、知的スリルにあふれた長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • まさに圧巻としか言いようのない凄いスケールの話であった。原田マハさんの作品はかなり読み込んでいる方ではあるが、「楽園のカンヴァス」に匹敵する作品として私の記憶に長く留まりそうである。

    マハさんの作品は本当にどれも大好きだが、なんと言ってもキュレーターとしての自身のキャリアを生かした美術ものの壮大な話がたまらない。マハさんのおかげで、モネも、マティスも、ゴッホも、ルソーも、そして今回はあの天才パプロ・ピカソにも愛着を持ってしまうのである。

    私自身、マハさんの作品を読むまでは、正直言うと、名画を見ても、あぁ、綺麗な絵だなぁ、きっと凄い価値があるんだろうけど、自分には絵画を楽しめるような才能なんてないなと思っていました。

    しかし、マハさんの作品は極力史実に忠実でありながら、そこで会話されたであろう話やアーティストの思いを、素敵なフィクションでまとめ上げて下さるものですから、まさに彼らをリアルタイムで目撃したかのような錯覚に陥り、そして彼らを愛おしく思うようになるのです。

    そして、例えば実際に目の前で睡蓮を見た時に、ジヴェルニーでモネがどんな思いを持って描いたか、鮮明にイメージを描きながら絵画を見れるようになり、あぁ、なんて素敵な絵なんだと感じられるようになりました。

    今回はパプロ・ピカソ、、正直、奇妙な絵を描く画家、なかなか良さが分からない、というのが私の実感でしたが、このゲルニカに、ここまでの反戦の思いを込めてピカソが描いでいたとは、かなり驚きました。ナチス・ドイツに空爆されたスペイン・バスクの小都市ゲルニカ。人類史上初の無差別爆撃に対して、アーティストとして何が出来るのか憤りのなかで出した答えが、絵画を持って抗議する、それがピカソに出来る最大の反戦活動であると考え、生み出したゲルニカ。

    残念ながら今も世界のあちこちで戦争がなくなりません。きな臭い話はいつもあります。そんな時、ピカソが魂を込めて反戦のメッセージを込めたゲルニカを何度も見返したいと思います。

    MoMAのティム・ブラウンが出ていて、マハさんて粋だなぁって思いました。「楽園のカンヴァス」ファンにはたまりません^ ^

    美術ものって自分には縁遠いと思っているあなた、私も美術は3でした!笑 世界が広がりますよ。小説好きのあなたなら、きっとマハさんワールドへグイグイ引き込まれると思います。そこには確かな文章構成力、ドラマティックなストーリー展開、感動のエンディングでいつも心を虜にしてもらえるからです。まだ読んでない方、おススメします。

    ピカソの鳩のドローイングのポスターが凄く欲しくなってしまいました^_^

    • 月の栞さん
      楽園のカンヴァスを読んで完全にマハさんにハマりました。暗幕のゲルニカも面白そうですね。是非読んでみたいです。
      楽園のカンヴァスを読んで完全にマハさんにハマりました。暗幕のゲルニカも面白そうですね。是非読んでみたいです。
      2019/02/24
    • kanegon69 さん
      はい!是非ともおススメですよぉ〜^ ^
      はい!是非ともおススメですよぉ〜^ ^
      2019/02/24
    • まことさん
      kanegon69さん。
      いつもコメントありがとうございます。
      私がいうのも何ですが、2冊とも素敵な本ですので機会があれば是非手にとって...
      kanegon69さん。
      いつもコメントありがとうございます。
      私がいうのも何ですが、2冊とも素敵な本ですので機会があれば是非手にとってみてください。
      私もマハさんの本は1冊しか読んだことがないので、いつか読んでみたいと思います。
      2019/03/14
  • ピカソの名作「ゲルニカ」を題材にした作品。
    作者もそうだった、MoMA(ニューヨーク現代美術館)のキュレーターである日本人女性がヒロイン。

    1930年代、スペインのゲルニカが爆撃されました。
    ピカソはスペイン生まれ。義憤を感じて、大作に取り組むのです。
    当時ピカソの愛人だった写真家ドラ・マールは、制作現場の写真を撮り続けます。
    ピカソにもドラにも存在感があり、このあたりのエピソードはとても面白かったです。

    そして、2001年、9.11。
    2003年、MoMAに勤める瑤子は、戦争やテロに負けないというメッセージを改めて発信するため、ゲルニカを展覧会に出品してもらいたいと願います。
    ゲルニカはスペインの至宝として、長年貸し出しはされていないため、交渉は難航しますが。
    美術館の動きは、さすがリアルです。
    現実離れしているぐらい華やかな~有力なパトロンも、意外と実在しているのかと思ったり。

    ヒロインの行動にやや謎があり、クライマックスに向かうあたりがどうもこなれていないので、感情移入できなくなってしまいました。
    この展開、ちょっと肩に力が入っている‥?
    構成や結末で、メッセージは伝わります。

  • 最近読んだ小説の中で最も衝撃的でした。

    1937年からのパリと2001年9月11日からのニューヨークが舞台です。
    まず『暗幕のゲルニカ』というタイトルはどういう意味だろうと考えながら読み始めました。
    パリのパートでは、世界一著名な芸術家であるピカソと、写真家のドラの芸術家同士の恋愛も面白く、名前だけしか知らなかった、ピカソという人間を初めて知った気がしました。
    2001年からのニューヨークのパートでは同時多発テロでスペイン人の夫を失ったMOMAのキュレーターの八神瑤子が活躍します。
    そして、私も、三分の一程、読み進めたところで、この作品の著者は、この作品で訴えたかったことは、何なのかと考えだしました。読みながら、本の表紙のゲルニカの絵は何度も見直しました。
    緊迫したゲルニカの争奪戦を読み、絵画が、世界にこのような大きな影響を与えうるものだと初めて知りました。
    人類の至宝ともいうべき文化財が政争の具にされてしまっていることも。
    「もうやめろ、とピカソは叫んでいる。殺すな。戦争をするな。負の連鎖を断ち切れ。取り返しがつかなくなる前に」「ピカソが、私たちが、戦っている敵は、戦争そのものなんだ」
    エンターテインメントとしても、大変面白い読み物でしたが、読んでいてリアルな緊迫感がありました。


    以下、完全にネタバレですのでご注意を。

    作者はゲルニカを以下のように描写しています。
    「そこには爆撃機も、戦車も銃も描かれていない。累々たる死体も、破裂した内臓も、血の一滴も、どこにも見当たらない。それでいて、それは、人類が初めて体験した「空爆」の瞬間の再現であり、悲惨極まりない戦争の記録であり、生々しい殺戮の記憶であった。悲しみと怒りに満ちた地獄の黙示録であった」
    この作品を読んだことは、忘れたくないと思いました。

    • kanegon69 さん
      暗幕のゲルニカ事件は実際に起きた事実のようです。小説では微妙に名前を変えられていますが、コリン・パウエル国務長官が2003年2月、イラク空漠...
      暗幕のゲルニカ事件は実際に起きた事実のようです。小説では微妙に名前を変えられていますが、コリン・パウエル国務長官が2003年2月、イラク空漠前夜の国連での演説で事件は起きたんだそうです。マハさんは、その事実に衝撃を受けられたようですね。ピカソのメッセージ、マハさんのメッセージを強く感じます。
      2019/04/22
    • まことさん
      暗幕のゲルニカ事件は実際に起きた事実だったのですね!私も読みながら、これは事実なのかフィクションなのかがとても、気になりました。八神瑤子のよ...
      暗幕のゲルニカ事件は実際に起きた事実だったのですね!私も読みながら、これは事実なのかフィクションなのかがとても、気になりました。八神瑤子のような方もいらしたのでしょうかね。
      私にもこの作品のメッセージは強く感じられました。
      マハさんのアート系の作品、もっと読みたい!と思いました。
      コメント、どうもありがとうございました。
      とても嬉しかったです!
      2019/04/23
  • 絵画に疎い私にも原田マハさんの数々の作品を通して色んな画家や作品や背景や美術館などの拙い知識を素人ながらに持つことに繋がりました♪
    この本でもかのピカソ本人や纏わる人々の群像と背景、主役たる作品「ゲルニカ」の誕生と意義 さらにはゲルニカを巡って展開する息詰まるストーリーと結末。
    画家と絵画作品に関する話に今回は事件性を加味して読み物としての面白さも追った作品になっていますね。

  • 個人的に好きな作家、原田マハさんのアート系小説。
    文庫まで待つ予定だったが、結局待ちきれずに購入、読了…

    伝家の宝刀・アート系作品だったので期待し過ぎてしまったかも。
    十分面白いのだけれど…ちょっと自分の中での期待値が上がり過ぎていたので、若干の不完全燃焼感があった。
    どちらかというと「楽園のカンヴァス」の完成度が高過ぎるような気もする。

    過去・ドラマール、現代・瑤子の2パートが交互に展開されながら、少しずつ繋がっていくストーリー。
    「ペンは剣よりも強し」的な「芸術による反戦」がメインテーマの作品。

    個人的にはドラマールのピカソへの「思い」が最も印象に残った。
    こんなにも情熱的に誰かを愛したことなんてあるのか?と、気付けば自問自答をしている自分がいた。
    恥ずかしながら、自分はこれ程熱い感情を持ったことはないのかもしれないなぁ…

    ちなみに、「楽園のカンヴァス」から引き続きティム・ブラウンも地味に登場。
    前作ファンであれば、きっと思わずニヤリ…(笑)

    <印象に残った言葉>
    ・私たちには〈ゲルニカ〉をニューヨークで展示する権利があります。(P221、ルース)

    ・わかっていた。ー最初から。ピカソの愛を永遠に得られる女などこの世には存在しない。オルガ・コクローヴァも、マリー=テレーズも、そして自分も…たとえほんのひとときであっても、あの心の奥底までを見透かすような視線を一身に浴びて、その筆でカンヴァスの中に封じ込めてほしいと願ったのだ。たとえ、それがどんなに醜い姿であろうとも。「泣く女」として、永遠に残されることになろうとも。この七年間、その思いを胸に生きてきた。そして、ピカソとともにあったことを、一度たりとも後悔したことはない。(P308)

    ・ドラは、迷わずに「鳩」の絵を選んだ。戦争を想起する陰鬱な静止画でもなく、泣きじゃくる女の肖像画でもなく、飛び立とうとする白い鳩が描かれた一枚を。(P334)

    ・会場の誰もが息をのんだ。バサリ、と音を立てて、スクリーンの中で、黒い長方形が床の上に落とされた。暗幕の下から現れたのは、タペストリーではなく、壮大な一枚の絵。〈ゲルニカ〉だった。(P357)

    <内容(「BOOK」データベースより)>
    反戦のシンボルにして20世紀を代表する絵画、ピカソの“ゲルニカ”。国連本部のロビーに飾られていたこの名画のタペストリーが、2003年のある日、忽然と姿を消した…。大戦前夜のパリと現代のNY、スペインが交錯する、華麗でスリリングな美術小説。

  • 「芸術は、飾りではない。敵に立ち向かうための武器なのだ」(パブロ・ピカソ)

    今世紀最大の芸術作品のひとつであるピカソの大作「ゲルニカ」。

    第二次世界大戦の直前の時代。そして、2001年9月11日、ニューヨークで発生した同時多発テロ。

    戦争ほど、残酷なものはない。
    しかし、半世紀を越えて、人類は戦争という宿命に踊らされていた。

    その人類の宿業とも言うべき戦争に、絵筆一本で立ち向かった、20世紀の巨匠ピカソ。時代を超えて彼を慕い、その魂を受け継ぐ人々の物語。

    主人公・MoMA(ニューヨーク近代美術館)のキュレーターの瑤子は、苦難を乗り越えたどり着いたクライマックスで語りかける。
    「『ピカソの戦争』展。戦争とテロが生み出した第二次大戦下の非常時に、ピカソは絵筆一本で闘いました。絵筆が銃よりも、大砲よりも、空爆よりもずっと強いことを、作品を通して証明したのです」

    ここ数日、電車に乗るのが楽しみだった。
    ピカソに会える。瑶子に会える。バルトに、ドラに、そして楽園のカンヴァスのティムに会えるのだから。

    心の奥深いところに何かが残る快作。
    今のところ、今年のベスト本。

  • ピカソの「ゲルニカ」をめぐる物語。

    ピカソが「ゲルニカ」を描いた20世紀と
    その「ゲルニカ」をMoMAに再度展示したいと
    企画するキュレーター瑤子を中心とする21世紀が
    交互に絡み合い、物語が進みます。

    私は断然20世紀のパートの方が好きです。
    ピカソの愛人、ドラが格好いいんです。
    ピカソのことを全く知らないのですが、
    この時代にこんな自立したパートナー的愛人が
    隣でピカソを支えていたなんて・・・。

    MoMAが舞台に出てきますし
    「楽園のカンヴァス」のティム(トムも!)も出てきて
    続編?っていう雰囲気も持っている気がします。

    「ゲルニカ」という作品自体が
    大きな意味合いのある作品だからか
    マハさんからあふれ出るピカソ愛と
    私のピカソ作品への興味の度合がかみ合わないからか
    ちょっと入り込めない部分がありました。

    でも、ラストの展開は、そうきたかと!!

    いつもながら、その作品をこの目で見てみたいと
    思わせるストーリーがたまらない一冊です。

    個人的には日本の画家や絵師の話か
    アジアの画家の話も
    マハさんのストーリーで読んでみたいです。
     
    次はどんな作品がクローズアップされるのか。
    楽しみに待ちたいと思います。

  • 美術作品には関心が薄いので美術館に行っても強烈にメッセージが伝わって来たことがない。
    ピカソは気持ち悪さを秘めた奇抜な絵を描く画家という程度の認識しか持っていなかった。
    <ゲルニカ>に関しては作品自体を知らなかった。
    だが、この本を読む前と後では、<ゲルニカ>から受ける印象とピカソに対する感情が全く違っている。
    音楽でも体制への批判や反戦のメッセージを込めた作品があり、その曲が生み出された背景を知っているか否かで聴く耳が変わる。
    本書はフィクションとノンフィクションを融合してできた作品であり、美術がよくわからない自分には作品の解説書より役に立ったに違いない。
    ナチス将校の「この絵を描いたのはお前か?」に返すピカソの一言がたまらない。
    本書からは、戦争やテロのない世界になって欲しいという気持ちがひしひしと伝わってきた。

  • ピカソの"ゲルニカ"
    誰もが知るこの作品を中心に、1937年ゲルニカ誕生前後のエピソードと、2003年にMoMAで開かれた”架空の”展覧会をめぐるエピソードが並行して展開される。
    両方を通して、この小説そのものがゲルニカがもつテーマ/反戦を再発信している。

    20世紀編は ピカソの愛人でありゲルニカの制作過程を撮影したことで有名な実在の人物、ドラ・マールの視点から描く。
    それだけも十分に立体感があって読み応えがある。

    そのゲルニカを21世紀のNYで展示し、戦争やテロといった暴力に屈しないというピカソのメッセージを再発信したい、という MoMAキュレーターの奮闘記は もちろんフィクション。(実際にはゲルニカはマドリッドに帰還してからかの地から動いたことはない。)
    だが、さまざまの場でアートがどのような意図で扱われるかとか、美術館運営の現実などを踏まえており存在感がある。
    主役は NY育ちの日本人女性だが(なんで?w)ロックフェラーの姫、スペイン貴族のプリンスのパワーとスタイルが華やか。理想のパトロン像なんでしょうね。

    一級のアート作品を題材にすることで、かけ離れた時間や空間をつなぐ”楽園のカンバス”で見せた原田氏の手法が生き生きとしている。

    初出は小説新潮2013.7-2015.5
    そのせいか、語りなおしが多く、もうちょっと編集してもよかったのでは?という気もした。

  • 2016年上半期直木賞候補作品。
    ピカソが「ゲルニカ」を描いた時代背景、そしてその後の「ゲルニカ」の経緯。反戦シンボルとして飾られている国連本部の「ゲルニカ」タペストリーが、暗幕で覆われた。9.11で夫を失った日本人キュレーターが、MoMAの展覧会「ピカソと戦争」を企画するが。。。
    実在の人物や史実を軸にしていて、勉強になった。芸術作品は誰のものなのか?芸術は決して飾りではなく、戦争やテロリズムや暴力と闘う武器ともなりえるのだと考えさせられた。年末~年始と、読むのに時間がかかってしまったのが残念。

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著者プロフィール

原田マハ(はらだ まは)
1962年東京都生まれ。小6から高校卒業まで岡山で育つ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部美術史学専修卒業。馬里邑美術館、伊藤忠商事株式会社、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館での勤務を経て、2002年よりフリーのキュレーターとなる。2005年小説化デビュー作の『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞、『キネマの神様』で第8回酒飲み書店員大賞をそれぞれ受賞。2013年には『ジヴェルニーの食卓』で第149回直木賞候補、2016年『暗幕のゲルニカ』で第155回直木賞候補となる。2017年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞受賞。2019年『美しき愚かものたちのタブロー』で第161回直木賞候補に。

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