甘いお菓子は食べません

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 578
感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103353515

作品紹介・あらすじ

欲望に蓋をして生きていくつもりだった。けれど――。第10回R-18文学賞大賞受賞作。アルコール依存から脱することのみを目的に生きる女。「きみとはもうセックスしたくない」と夫から宣言された女。母になるか否かを考え続ける女。もっと愛したい、もっともっと愛されたい、なのに――40代を漂う彼女たちが見つけた、すべて剥がれ落ちた果ての欲望の正体とは。女の危うさと哀しみを迫力の筆致であぶり出した、連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 人生を半世紀近く生きてきたアラフォー・アラフィフ世代の女性達。
    それぞれの問題を抱える彼女達が次々に繋がる連作短篇集。

    世の中はそんなに甘くない、とつくづく思い知らされた。
    社会は、世間は、どうしてこんなにも彼女達に辛く当たるのだろう。
    なぜこんなにも生きにくいのだろう。
    結婚、性欲、子供、老い、依存症、再就職…"もう若くもない"女性の前に立ちはだかる壁は大きく厚く、途方に暮れるばかり。
    彼女達と同世代の私には塩辛過ぎて、とても身につまされた。
    特に『残欠』がとても印象深い。
    「残欠」とは書物や骨董品等の一部分が欠けたモノのこと。
    アラフォー・アラフィフ世代はこの「残欠」のように欠けていびつな不完全なモノとして世間に思われている、ということか。
    確かに世間が思うような"完成形"ではないかもしれない。
    割れて欠けた部分が痛ましく、見るにも耐えない時もあるかもしれないけれど、欠けずに残ったモノが光輝いて見える時もある。
    金継ぎ等を施せば新たな美しいモノへ生まれ変わることもできる。

    人生の甘いお菓子は食べない、と自ら決めた彼女達。
    背筋をのばし颯爽と歩く彼女達に、同世代の女として心からエールを送りたい。
    どの短編も終わり方が希望を持てるもので良かった。

    R-18文学賞大賞受賞作家さん、という田中さんの作品をもっと読んでみたい。
    女性として共感する文章も多かった。

  • ちょっと読むのがしんどかった。
    40代の女性達の姿が痛すぎるというか・・・。
    こんな話読みたくなかったよ、というのが正直なところ。

    R-18文学賞大賞を受賞した作品「べしみ」はこの賞にふさわしい(?)過激な内容でまあ納得。
    女性器に突然人面瘡が出来た主人公の話。
    この手の荒唐無稽な話苦手かも。
    リアリティのなさに共感できないんだもの。

    そのほかの5編はもうちょっとトーンダウンするけれど、どの話も普段は見せない女性の裏の部分がチクチクと書かれている。
    私が好きだったのは「残欠」。
    アルコール依存症の女性の話で読んでいて息が詰まる。
    何が彼女をここまで追い込んだのか。
    息子の母への愛憎が切なくて切なくて。
    もう読むだけでいっぱいいっぱいでした。

    田中兆子さん、苦手かもとは思いつつも次作が出たらきっと手に取るんだろうな。
    そんな魅力を持つ作家さんです。

  • 【女による女のためのR-18文学賞】大賞を受賞した『べしみ』を含む6つの短編集

    アルコール依存、セックスレス、未婚の老後etc…
    「結婚」を通して 女性の目線から語られる物語

    話の中でチラッっと出てくる人物が次の話の主人公となっている

    とにかく、主人公たちの自問自答が過ぎて なんだか途中でお腹いっぱいというか飽きちゃったというか。

    でも、アルコール依存に苦しむ女性を描いた『残欠』は読んでいて息が苦しくなりそうなほど、主人公の壊れた心と身体が痛かった。
    「我が子と同じくらい愛してしまった酒をやめてまで、生きる理由がみつからない。理由がないけれど、死なないから生きている。」 …辛い。
    「ママは悪くないよ。お酒飲んでないんだから。」と言った息子の直也の気持ちも…辛い。

    わたしが1番 好きだったのは『熊澤亜理沙、公園でへらべったくなってみました』
    「熊澤亜理沙、49歳。独身、一人暮らし、結婚歴無し、両親はすでに亡くなり、兄弟なし、彼氏無し。リストラされて無職。ある意味最悪、ある意味最強。あははー。」から始まる話。笑
    リストラされて やりたい事もない、外出しても行きたい所もない。→よし!公園の土の上に寝てみよう!(しかも うつ伏せ)

    え?笑
    強い。

    『べしみ』は、ある日 突然、女性器が奇妙なおっさんの顔になってしまった女性の話。

    え???
    怖い。

  • 第10回 R-18文学賞大賞作品…今は「女性による女性のための文学賞」ですが、第10回までは「女の性を描く文学賞」だったらしい。うん、その通りの短編集でした。 主人公以外の登場人物が、次の作品の主人公になるバトンリレー構成になってるのも面白い。 男性はこの本、手に取りにくいでしょうねぇ。そして、知られたくないような、知って欲しいような内容(笑)

  • 「べしみ」は女による女のためのR-18文学賞大賞受賞作。

    6編の短編集。40代女性の性愛にまつわる話。独身だったり、結婚間近だったり、母親だったり。

    田中兆子さんのデビュー作。女性側の話ということもあり、なかなか共感しづらい。わからないでもないが、まどろっこしさが先に立つかな。

  • 2015/12/23

    40女の甘くない短編集。結婚、セックスレス、リストラ等々息が詰まりそうなところをユーモアある「べしみ」で締めてくれて助かった。
    「恋愛も買春も何もできない四十女ってほんと困りますよお」(べしみ/240P)
    これから私も中年になるんだな..

  • アラサー〜アラフィフの女性のリアルな感じが、
    生生しくてたまらない。
    痛くもあるし、かわいくもある。
    私もその一人だからね。

    専業主婦さんみたいだけど、
    こういうこと考えて生きてってるとしたら、
    そりゃー小説でも書いた方がいいと思うわー

    短編だけど、それぞれの登場人物が同じで、少しずつつながっているので、
    別の視点からの物語、というのも、
    割と好み。

  • べしみはR18文学賞受賞時に読んでいました。わたしはこの著者のデビュー作となる一冊をずっと楽しみにしてました。
    そして出来上がったこの本、本当すごい。筆力あるなーと。
    衝撃は断然窪美澄さんのがらあるんだけど、田中さんの描くものは怖い。アラフィフ、アラフォーの女たちの必死にもがいてる様が怖い。わたしはアラサーだけどまだ女子であろうとしてしまいます。けれどこの中には甘いお菓子を食べようとしない、女子から女になった、や、なろうとてる女たちがいて、なんか怖い。どの話も読んだことありそうなのに新鮮で、なかでもやはりべしみは斬新。R18色も全然強くないので読みやすいです。面白かった。

  • 色々なタイプの40代女性の、心と身体と欲望のリアル。軽いタッチの文章で読みやすく、それでいて深く抉るような描写がぐっとくる。ほんのりと切なさが残る読後感もいい。

  • 僕はもうセックスしたくないんだ、と突然夫に言われた稼ぎ頭の妻。アルコール依存状態に戻らないために絶望的な1日1日を耐える母。突然の性的な欲望を抑えられない、女。

    様々な年齢で形を変えて女性を襲う不安、恐れを描いた作品。だけれど、最終的に作者の女性に対する温かい視線によって励まされるいい作品だった。

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