- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103355526
作品紹介・あらすじ
生きるために強く根を張ろう。どんな場所でも花を咲かせることができる、と信じて――。衝動的に会社を辞めた真芽は、入院した一人暮らしの祖母・ハルの代わりに、かつて自分も住んでいた家の庭の様子を見にいく。だが花々が咲き誇ったはずの庭は、荒れ果てていた。ハルの不可解な言動と向き合いながら、真芽は庭の手入れを始める。認知症患者をめぐる家族と、枯れた庭。一筋縄ではいかない両者の、再生の物語。
感想・レビュー・書評
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季節とともに生きている。草花はそれを実感できるものの一つですね。
草木の色だったり、花の匂いだったり。あまり意識していなくても感じることができるのは、今ここで生きているということ。
共生なんておこがましいけど、愛でる余裕を持ちたいものです。
ある家族の、それぞれが不安を抱えながら、もうすぐむかえるであろう節目の予感。そんなお話しでした。
まめ子のような優しい人は、優しい人を惹きつける力があるよね。
長年生きてきて、思い出に残る草花は何だろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『やがて訪れる春のために』はらだみずき
主人公の真芽(まめ)も幼い頃暮らしていた線路近くの古民家に、今は一人で住むハルおばあちゃんが、認知症になる。綺麗に色とりどりのお花が咲いていた庭がすっかり荒れ果てているのを見て、真芽は昔の姿を取り戻そうと庭のお世話を始める。
花が大好きなので、色々な花の名前が出てきて、それがどんな花か調べながら読むのが楽しかったです。せっかくの表紙の絵に、「汚損あり」のシール…。しかもわざわざ表示するほどの大した汚れじゃなかった。ちょっと残念な気持ちになりました。
庭と共に汚れて朽ち果てた家を掃除して、真芽はそこに住み、あちこちを観察すると、ハルおばあちゃんが、しばらくの間、ずっと孫一家がまた戻ってくるのを待っていたこと、庭に植えられた果物の数々は、真芽の将来の夢のために用意してくれていたことなどがわかってきて、おばあちゃんの寂しさや優しさに心を打たれます。
私の祖母も、一時期一人で住んでました。私たち孫もよく顔を出していたものの、一人でいた時間はどんなふうに過ごしていたんだろう?不安や孤独はどれくらいあったのだろう?と思いを馳せました。
そして、子供が巣立ち、私自身が一人になった時、どんな生活が待っているんだろうとも…
手仕事を丁寧にこなし、自然なものを最大限に使って生きる。こういった光景を描く本は沢山ありますが、その舞台が、ハルおばあちゃんが大切にしていた場所で、たくさんの想いが詰まっているというところが良かったです。
本文より…
多くのものを望めはしないが、たとえば道端のアスファルトの隙間に咲く花のように、与えられた場所で、あるものを生かし、ないものは求めず、生きるために深くには張ろう。幸せという花は、どんな場所にでも咲かせることができる、と信じて。
真芽には、こんなに素敵なおばあちゃんがいるということ自体が、既に何より幸福で幸運だと思います。とっても羨ましくなるお話でした。 -
何度も涙が出そうになった。
幼少期のまめこの為に祖母が用意してくれた庭。
様々な植物が描かれていて、読んでいるだけで色鮮やかに想像できる。
その一方で認知症の祖母の弱っていく描写が切なくもある作品。
おおきなことではなく、できることをやればいい。
なんのためにとか、そんなことはこだわらなくてもいい。
むずかしく考える必要はない。
自分がやりたいことを、自分のやり方で、できる範囲でやればいいのだ。
まめこの変化に感動するラストだった。
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楽しみだね。
今日、まめ子は、自分の夢の種をまいた。
きっとその種は土に根を張り、目を出し、大きく育っていくだろうよ。
そのための準備を、ハルばあも今からしておこうかね -
やがて訪れる春のために、このタイトル通り。
積み重ねてきた記憶が消えて行ってしまっても、いつか戻れる日まで。
認知症の祖父を想い、読了。 -
読了して最初に感じたこと。
タイトルの「春」は、主人公の祖母である「ハル」にもかかっていたのね!ということ。
登場人物が、真芽(マメ)や友人のエンドウくん、ナスビーと植物に関連している名前で面白いなと思った。植物についてを語るときだけ、イキイキする遠藤くんが僕は好きだ。
植物について少しでも知れて面白かった。園芸植物には一年草、多年草、宿根草があること、キリンソウは30センチくらいにしかならず、今では希少であること…
印象に残る言葉が二つあった。
●真芽がハルに将来の夢を語った時、
ハルが発した言葉
「夢を言ったことで、それ自体が種まきになる」
●真芽がカフェを開業するにあたって、自分自身に言い聞かせる言葉
「今の自分にできることを、可能な範囲で、自分のやり方でやればいい」
物語の内容や雰囲気は、
伊吹有喜さんの「雲に紡ぐ」や
梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」
に似てると思った。
これらの作品が好きな人は、はらだみずきさんの本作も楽しめると思う。
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主人公の優しさと強さを感じました。
祖母のホントの想いを探りながら、一生懸命考え体を動かす姿。
すごいですね。 -
読んだ後の気持ちが良い。
未来に希望が持てる感じ。
人が集まるから、何かしようって気持ちが持てる。それが、人を癒したい、楽しませたいって自然に思えること。
そのために、自分にできることはなんやろうって考えることやん、人生において大事なことって。
当たり前すぎるけど、再認識。