欺す衆生

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 82
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103395324

作品紹介・あらすじ

人はなぜ、欺き続けなければ生きていけないのか。欲望の深淵を暴く、犯罪巨編! 戦後最大かつ現代の詐欺のルーツとされる横田商事事件。その残党たる隠岐は、かつての同僚の因幡に導かれるがまま〈ビジネス〉を再興。次第に詐欺の魅力に取り憑かれていくが――。欺す者と欺される者、謀略と暴力の坩堝の果てに待ち受ける運命とは。透徹した眼差しで現代の日本を、そして人間の業と欲を徹底的に描破する。

感想・レビュー・書評

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  • これは面白い。
    最初から最後まで、ずっと面白い。

    ゆっくり読んだけれど前半の方ですでに盛り上がり面白くなってきて、まだページ数沢山あるけど、どんな展開になるの⁉︎って嬉しかった。

    しみじみと面白い。
    身近にあったら恐ろしいけど。
    一応終わったけど、まだ延々と続くんじゃなかろうかっていうくらいの感じ。
    こういうのもっと読みたい。

  • 豊田商事をベースにしたもの。詐欺の手法を用いていた横田商事、その社長が殺される。それを目撃した社員・隠岐。転職するも元同僚の因幡に誘われ詐欺のビジネスを始めることになった。最初は躊躇うものの詐欺のビジネスに取り憑かれ深みに嵌る。ヤクザや詐欺師と張り合い続け隠岐は行き抜けるのか。
    詐欺だらけで人間不信になりそうだ。程度のこそあれ、「人が人を欺し、国が国を欺し、国が人を欺す。それが世界の実相」と言われるとね。しかし、隠岐がモンスタのように変わってゆく過程、立ちはだかる敵との戦いに目が離せなかったな、最後は人の怖さを感じた。苦しみ苦しんだ中、最後は問題をスパッと切り抜け読後感良しです(隠岐はどうにかなっちゃったけどね)。物語は終わりますが隠岐も悲しい結末を迎える人なのかなと感じます。
    私の中では月村さんの中で一番の本かな。

  •  戦後最大級の詐欺集団「豊田商事」が悪徳商法に手を付け始めたのは、一九八〇年前半で現物まがい商法です。出資に対して商品を買い付けない、一九八一年三月「純金等ファミリー契約」を売り出した。

     既知かと思うが、景気の変動とともに金の相場も変動します。投資において株式とどう違うのか、要は相場が0評価にならないという点で安全性があります。

     豊田商事は、契約と共に預り証を発行し言葉巧みに高利回りを約束した。

     調べてみると相場は八十年代前半に、3645円だった。今が買い時と謳ったのだろう。因みに同年1月は、6495円だった。投資の世界に絶対は無い!これは金言です。
     かつて某証券会社が絶対の約束をしたため、株価が下落時に損失補填という禁じ手を使った。忽ち悪評が拡がり自主再建は不能で、会社更生法も適用されず倒産した。

     物語は、一九八五年豊田商事会長〇〇が、潜伏先のマンションに情報を聞きつけて多くの報道陣が集まる中、二人組の男が強行に侵入し殺害された。
     その模様の一部始終を目の当たりにしたのは、偶然なのか?主人公隠岐隆は、本社大阪・勤務先は東京にもかかわらず、上司に言われて指定先に行っただけのこと。会長の死顔を見てしまった。

     隠岐は、大学卒業後に堅実な会社勤めをしていた、そこで知り合った女性と結婚したが、妻の伯父に欺されて背負うことになった多額の借金。過酷な取り立ては、勤務先まで来たという。やむを得ず会社を退職せざるを得なかったのだ。借金返済のため、当時でさえ良からぬ噂が絶えなかった横田商事の高い固定給と歩合給は魅力的だった。

    〈善人を装って自分は人を欺しているのだ〉という自覚と、後ろめたさを封印した上でだ。

     全ては、妻子を守る責務があるからと自分に言い聞かせた。妻も黙認。その時、前述した会長死亡事件で横田商事が終焉を迎えた。
     その後、元横田商事社員という経歴を隠して小さな事務用品メーカーの営業職に就いた。バブル崩壊の不景気な時代に、文具が営業で売れるわけがない。唯一の楽しみは、会社帰りに一人で立ち寄る酒場で、一杯の安酒を飲む生活だった。ある日、例の酒場で、隠岐の背中に鋭い視線を感じた。街で男から声を掛けられ、その感は当たっていた。元横田商事の総務因幡だった。

     隠岐は、何を選択しどう動くのか?良心はどうか?家族を守ることができたのか?息詰まる攻防と窮状対策に余念が無いが、著者はてんこ盛りの筆力で物語の本質を突いてきた。

     読了したとき、本当にこれでよかったのかと思った事と、自分は人を欺していないかと問いかけてみた。信頼できると思っていた関係者に、欺かれているかもしれない。
     読書は楽しい。

  •  いやぁ、面白かった!ラストは私の思い描いていたものとは全く違うものが用意されていた。

     借金を背負い、悪徳な会社と知りつつも、給料に惹かれて入社した隠岐。上司の命令で会長のマンションに行った隠岐は会長が殺されるのを目の当たりにする。
     その後、会社は倒産。過去を捨て、なんとか文房具メーカーで細々と生活するが、ある日、自分のことを知る因幡という男にスカウトされる。因幡は忘れたい過去の亡霊だった。
     因幡と出会い、隠岐はモンスターと化していく。自らをビジネスマンと嘯き、詐欺でどんどん会社を膨らませていく因幡と隠岐。
     やがて恨みを買い、命を狙われることになった因幡はかつての精彩を失い、どんどん狂っていく。そんな因幡に対して隠岐の下した決断は。
     そして、裏の世界で繋がっていたヤクザの蒲生も権力と欲の狭間で揺れ動き、ここでも隠岐は決断を迫られる。

     いやぁ、面白かった!何度でも言っちゃいます。本当に面白かった。初めは小心者の一会社員だった隠岐がモンスターになっていく様。また、次から次へと降り掛かる壁。そして、なんと言ってもそれぞれに魅力的だった仲間たちがおかしくなっていく姿。それに対しての隠岐のとった行動。
     間違いなくこうした結末が待っているんだろうなと思っていたら、それを上回る衝撃の結末が待ち受けていました。

     できれば続編が読みたいですね。今度は結花を主人公として。

    • goya626さん
      うーむ、読みたいような、読むのがこわいような・・・
      うーむ、読みたいような、読むのがこわいような・・・
      2020/03/05
    • ひとしさん
      こんばんは!
      全然怖くないですよ(笑)
      是非読んでみてください♫
      こんばんは!
      全然怖くないですよ(笑)
      是非読んでみてください♫
      2020/03/05
  • 昭和最大の詐欺事件を起こした、横田商事。
    その生き残りである隠岐と因幡は、あらたな〈ビジネス〉に着手する。

    おもしろかった。

    詐欺師にやくざと、登場人物は犯罪者ばかり。

    それでも、どこまで手を染めるのか。
    越えられないボーダーラインがそれぞれにあり、〈ビジネスマン〉としての矜持がある。

    特に隠岐は、人をだまし、死に追いやってもなお、家族を大切にしたい、横田商事とおなじことはしない、という矛盾する気持ちをかかえ続ける。

    それぞれの葛藤と成長ぶりがおもしろく、悪人だとわかっていながら、完全に憎みきれないものがある。

    豊田商事事件をモデルにした、クライムノベル。

  • 面白い!!
    最初は人間らしい感情を持っていた隠岐が、詐欺を繰り返す度に悪くなっていく。。
    最後の終わり方もよかった。
    久しぶりに夢中になって読んだ一冊。

  • 嘘の山は修羅の味。

    (以下抜粋)
    ○家族のために働けば働くほど、家の中から自分の居場所が失われていく。(P.150)
    ○潮時というやつかな。このところ和牛もいいかげん頭打ちだったし(P.233)

  • これはヤバイ。☆6つあげても良いほど圧倒的だった。横田菌の繁殖力が凄まじい。ある1人の平社員が化け物たちに取り込まれ利用されると思いきや、自分の気持ちとは裏腹に騙しの能力を開花させ、逆に化け物たちを飲み込むほどの妖怪に変化していく様が最初から最後まで描かれて緊張が途切れることがなかった。新たな月村ワールドが誕生したと思う。

  • すっごく面白い。読みたくて読みたくて仕事もそぞろに。こんな世界が本当にあるんだとしたら、怖い!近寄りたくない。でも続きがきになる。最初の方の土地買った人達どうなったかな?

  • 豊田商事事件の残党を源流とする平成詐欺大河ドラマ的小説。大河ドラマ的なら諸行無常・盛者必衰的な起承転結になりそうだが、ピカレスク小説の雰囲気も残し、後味がそんなに悪くもない。主人公の長女に結婚詐欺をする唐津を逆に封じ込める手口が圧巻で爽快さも感じる。詐欺師たちの行動原理がよく描かれていて非常に面白かった。

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著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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